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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第01章 : 恥ずか死お姉ちゃんとポンコツ魔王の転生録
9/173

#009 : 魔王軍 in 人体発火勇者──世界を焦がすのは羞恥心。


前回までのあらすじ

→ でっかいバカが、ちっこいバカのバリアを殴ったらバリア割れたとこ。


◇◇◇


【現在地】パンジャ大陸南東部・常闇のダンジョン最深部(魔王の間)

【視点】サクラ

【状況】異世界生活3日目。スパー開始。魔王のバリアをワンパンした瞬間。


◇◇◇



\\パリィィィィィン!!!//


まるでガラス細工のように、バリアが粉々に砕け散った。


【スローモーション開始】


 光の破片が宙に舞う。


 キラキラと輝きながら ── ゆっくりと落ちていく。


 バリアの向こうで、エスト様の目が点になる。


挿絵(By みてみん)


[タグ]#世界征服は無理そう #筋肉は裏切らない


 ヤバい!と気付いたエスト様!


『ひっ』と声を絞り出す。


 そして、必死の形相で逃げようとするが……


 そのまま勢いの止まらない拳が──


 ゴツン!!


エスト『アゴッ☆』


 エスト様のアゴに、クリーンヒット。

 

 涙、鼻水、ヨダレがゆっくりと空に舞う。


 ── そして、ゆっくりと倒れる。


【スローモーション終了】


サクラ「……」


私は砕けたバリアの残滓を見下ろす。


(静寂)


私は拳とエスト様を交互に見つめた。


サクラ「えーっと……」


(…………)


(……やっちまった……?)


サクラ「どうしよう……」


──この時はまだ誰も知らなかった。


この出来事が、“魔王の致命的なウィークポイント”を世界に知らしめる第一歩になるとは──


◇◇◇


私は気絶したエスト様を見下ろしていた。


……うん、寝顔は天使。ヨダレ量は災害。


──この時の私、未来でそのヨダレに助けられるとは思ってなかった。


……こんな簡単に気絶するほどのポンコツ魔王が、“世界征服”なんて……ムリ。


でも……言い出したのは妹だ。

だったらもう、やるしかないじゃん。


守るのも征服するのも、まとめてやったるわ。


家族ってさ?姉ってさ?そういうもんでしょ?


(うーん……家族……ね……)


(頼られて、必要とされて、大切にされて……)


(私を呼ぶ声……あったかくて、悪くない。)


(うん……悪くない。)


(……)


サクラ「……姉?姉妹?……私が?暴力と逆ギレでできてる私が?」


── その時である。


《ぺったん ぺったん ずんどこどーん♪》(*レベルアップのテレレレッテッテッテー♪のリズム)


サクラ「わわッ!びっくりしたぁ……頭に直接聞こえてる?」


脳内にレベルアップ(?)のファンファーレが鳴り響く。


サクラ「ずんどこどーん♪じゃねぇええ!!何がレベルアップだよ!どこが上がったんだよ!?」(胸をガード)


【サクラのレベルが100に上がりました】


サクラ「…………ッは?」


サクラ「レベル100?……は?最終回?」


(静寂)


サクラ「いや、ちょっと待て待て待て待て待てー!」


サクラ「え?私だけバグってんの?ねぇ?」


《天の声:理由はサクラだからだ。どうだ?納得だろ?》


サクラ「なんだよその理由!?」


《天の声:お前に理屈を求める時点で敗北だ。》


サクラ「は?急にどうしたの?褒めないで!?」(混乱中)


《天の声:褒めてねーよ》


── そして、再び頭の中に響く声。


《天の声:ついでに魔王を倒したので勇者認定する。常識だな。世界の理だ。》


【称号「勇者」を取得しました。】


(ん?)


サクラ「は?ついで?今度は勇者?」


\\ ぺぺぺぺぺー⤴︎ぺったん♪ // ※効果音


サクラ「なんで効果音変わってんだよ!?」(怒)


================

【ステータスウィンドウ】

名前:サクラ

種族:鬼

レベル:100


▼称号:


- 勇者(成長補正【極】) ☆NEW

- ぺったん鬼女【呪い】

 → 全ステータス20%ダウン(笑)

- 世界一タフな性格


▼スキル:


- 怪力(Lv100)

- 暴食(Lv1)☆NEW(偏食から進化)

================


──かくして、勇者サクラがここに誕生した。


私は首を傾げる。


サクラ「えーっと……」


サクラ「魔王を倒したから勇者……なのかな……?」


サクラ「うん……まぁそうか……なるほど。わかるけどわからん。」


サクラ「……で、これから魔王と勇者が世界を征服するの?」


サクラ「勇者ってさ、普通”世界を救う”もんじゃないの?」


サクラ「私?“世界ぶっ壊す”側なんですけど??」


(拳を見つめる)


サクラ「勇者になっちゃいました!ついでみたいです!てへぺろ★」


サクラ「って魔王に言うの?いや絶対めんどくさくなる未来見えた……」


私は拳を握り力を込めてみた。

身体の中から力が溢れる感覚があった。

壁を殴ったらどうなるか、怖いくらいに予感できる。


(やべぇ……マジで強くなってる……。)


── そんな時だった。


\\ ドガァァァァァンッ!!! //


壁が砕け、現れたのは──【ベヒーモス】。

筋肉と怒気の塊、異世界の生態系トップ。


サクラ「うわああああ!?ビックリしたぁ!?」


(ベヒーモスと目が合う)


サクラ「こんにちは……」(脳が処理を放棄)


(……)


サクラ「って、でっか!?」


サクラ「え!?なに!?どうすんの!?」


私は後ずさりながら震え声で叫んだ。


挿絵(By みてみん)

[タグ]#虹色は混乱 #ヨダレがフラグの量 #理不尽な世界


《天の声:戦え。死ぬぞ。》


サクラ「戦う?アレと!?無理でしょ!?」


サクラ「令和のOLにいきなりラスボスクラスぶつけるなぁぁぁ!!」


ベヒーモスが咆哮し、突進してくる。

その巨体が床を揺らす。


サクラ「やだやだやだ!!」


──ズルッ。


ベヒーモス「ブフォッ!?」


ズシーン!!!


気絶していたエスト様のヨダレに足を取られ、豪快に転倒するベヒーモス。


サクラ「え!?転んだ!?」


地鳴りの中で、私は腰を抜かした。


ベヒーモス「……。」(怒)


(えーっと……)


サクラ「怒ってる!!やばい!!どうしよう!!」


《天の声:スキル《怪力》を使え。》


サクラ「怪力!?」


サクラ「いやいやいや、私ジムの入会金も払えなかったOLだよ!?」


サクラ「筋トレ三日でリタイア勢だよ!?使えって何!?どうやんの!?」


《天の声:仕方ない。今回だけ助けてやる。》



【──強制発動:スキル《怪力》──】Lv100 発動!!



《天の声:それからお前が死んだ時を思い出せ》


サクラ「やめろ……あの夜は封印したんだ……!」


(映像:深夜の住宅街、ファイティングポーズ)


サクラ「うわあああ! あれ思い出すと心臓止まるって!」



【──強制発動:スキル《怪力》── 恥ずか死を思い出したモード】発動!!!



《天の声:恥ずかしかった記憶がサクラの筋肉を呼び覚ます。サクラの攻撃力が1000%アップする。理由?募集中だ。》


サクラ「理由募集中!?未完成のまま実装すんなぁぁぁ!!」


身体の奥からグンッと力がみなぎってきた。


サクラ「え、ちょっ、待っ……力が溢れて──!?」


──さらに。


(ボッ!)


サクラ「……え?」


前髪の先が、燃えた。

オレンジ色の炎が、ゆらりと髪を包み込む。


(……火?)


サクラ「まってまってまって!? 燃えてる!? 私の髪!?!?!」


《天の声:……おい、燃えてるぞ!? お前、燃えてるぞ!?》


サクラ「なんで!?!?!?」


《天の声:おいおい!怪力にそんな効果ないはずだぞ!?》


サクラ「私の身体で初見リアクションすんなぁぁ!!」


《天の声:えっ、理屈どこいった!?!?》


サクラ「お前が理屈の代表だろぉぉぉ!!」


(メラメラメラァッ!)


《天の声:あ、でも……綺麗だな……》


サクラ「感動すんな!!!」


《天の声:熱くないのか?》


サクラ「そういえば熱くない……」


《天の声:マジか……正直、引いてる……》


サクラ「たすけて!?」


《天の声:スキル怪力は感情を力に変える。悲しければ弱くなる。世界一タフな性格のお前しか使いこなせん。燃えるとは知らんかった。》


サクラ「そんな情緒不安定な燃料いやあああ!!」


《天の声:だが、使いこなせれば最強だ。燃えるみたいだし、他にも効果あるかもな》


サクラ「かもなじゃねぇえええ!!雑に実装すんな!!」


(ボォォォォォォン!! *火力⤴︎⤴︎)


サクラ「……わ、わあああ!? 燃えてる燃えてる燃えてるううう!!!」


《天の声:怒ったからか?》


ベヒーモス「グルルル……ッ!?」

巨大な影が再び立ち上がる。


サクラ「くるなぁぁぁああ!! 恥ずかしいのに集中できないんだって!!!」


《天の声:まぁいいか。そのまま燃えろ。感情を力に変えろ。》


ベヒーモス「グルルル……!」

ベヒーモスが接近してくる。


サクラ「くんなぁぁぁ!! 今、髪型がファイヤーなんだよぉぉ!!」


ベヒーモスがダッシュ!!


サクラ「な、殴るよ!?殴っちゃうよ!?」


ベヒーモスがいよいよ目の前に!!


サクラ「も!もももももう知らんッ!右ストレートだぁ!!」

私は叫びながら目を瞑り、全力で右手でパンチ!


ドガァァァァァァン!!


ズドォォォォォン!!!


拳が振り抜かれ、轟音と衝撃波。


ベヒーモスの巨体は壁を突き破り、遥か彼方へと吹っ飛んでいく。


ベヒーモス「ギャオオオオオ!!」


遠ざかる咆哮と共に、ベヒーモスは逃げ去った。

天井から瓦礫が降り注ぐ。


サクラ「……え?」


サクラ「逃げた?……逃げた!?」


サクラ「……勝った……?」


《天の声:とりあえず勝利か》


サクラ「……私、燃えてるんですけどぉぉぉ!!」


《天の声:多分スキル解除すれば消える。多分な。》


サクラ「雑ゥゥゥ!!!」


(スキル解除)


ボワッ。


サクラ「……」


サクラ「……燃え尽きた……って、髪どうなってんの?」


鏡代わりの瓦礫に映る自分の姿──モッサリ。


ふわっふわの、漆黒の……


サクラ「アフロゥゥゥ!?!?!?」


(アフロを触る)


サクラ「女子力も……燃えたじゃん……」


《天の声:上手いこと言うな。感心した。》


サクラ「っさい!!」


(BGM:ずんどこどーん♪)


◇◇◇


《天の声:それよりお前、魔王軍なのに勇者になったな。どうすんだ?》


サクラ「知らん!!」


《天の声:バレたらヤバいぞ》


サクラ「……そういえば」


(考え込む)


サクラ「……私、魔王軍なのに勇者……?」


サクラ「エスト様にバレたらどうしよう……」


(間)


サクラ「……いや、待てよ」


私はムダ様の言葉を思い出した。


サクラ「ムダ様は言った。『敵か味方か? どっちでもいい。殴れる奴は全員敵だ。』ってね。」


《天の声:ムダ様、狂ってるな。》


サクラ「つまり、エスト様は私を殴れない!私がお姉ちゃんだから!」


サクラ「私もエスト様を殴れない!だから味方!」


(うんうんと頷く)


サクラ「私は魔王軍!立場より拳!」(キリッ)


《天の声:お前も大概だな。》


サクラ「……とりあえず寝る」



──こうして、“人体発火勇者アフロ・サクラ”が誕生した。

この日、世界はひとつの事実を知る。


恥は燃える。髪も燃える。だが、心は立ち上がる。


*アフロは昼寝したら治った。



(つづく)



※次回!勇者になってしまったサクラに危機が!?


◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】 :0.1%(爆上がりに見えてまだ微増)

【支配地域】:常闇のダンジョン最奥(本人基準)

【主な進捗】:レベル1から100へ爆上がり。

       ついでに勇者になってしまった。

【特記事項】:

・称号「勇者」獲得。スキル構成はネタ寄り

・暴走はまだ序章

・ベヒーモスを一撃で撃破

・魔王のアゴが豆腐(NEW)

・人体発火(原因:恥)を確認。副作用としてアフロ化

・恥の臨界突破による新スキル挙動を観測

・アフロは昼寝で自己修復(再現性あり)


◇◇◇



──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──


『敵か味方か? どっちでもいい。殴れる奴は全員敵だ。』


解説:

殴れる奴は全員敵。

殴れない奴は味方。

それだけだ。

ちなみに俺は試合で味方を殴ったことがある。

理由? 殴れたから。

後で謝った。

「ごめん、敵だと思った」って。

許してもらえなかった。

以上だ。立場より拳だ。腹減ったな。

挿絵(By みてみん)


ここまで読んでくれてありがとうございます!

バリアは割れ、アゴは飛び、サクラは勇者になりました(ついでに)。


レベル1から一気に100へ爆上がり。

でも称号は「ぺったん鬼女」のまま。

世界最強の勇者(デバフ付き)誕生です。


さらにベヒーモスまで登場!

──そして一撃で吹っ飛ばす鬼パワー。

これ、もう異世界無双じゃなくて異世界事故。


次回はサクラが勇者兼魔王軍として正式に活動開始!

暴走はまだまだ序章……地獄のレベル上げはここからだ☆


◇◇◇


感想・ブクマで作者のメンタルもレベルアップします。

サクラが次回どんなバカをやらかすか、ぜひ見届けてね☆

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― 新着の感想 ―
魔王様の弱点、顎どころか全身なのでは…… バリア割られる挿絵のエストちゃんかわいい!
レベルアップ&勇者認定おめでとうございます。でも、なんでなんでしょう。二度見したんですが、あんまり強くなった感じがしないのはなんでなんでしょう(笑)相変わらず効果音はぺったんを煽るし(笑)今回もとても…
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