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魔王がポンコツだから私がやる。これ、私の黒歴史。見るな。【10万PV大感謝!】  作者: さくらんぼん
第07章 : カエデとツバキ──全世界が“理解”を諦めた日。
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#088 : Fカップクエスト(?)☆草王との遭遇


前回までのあらすじ

→ スク水でスクイズしろと言われた。


◇◇◇


こんにちは!カエデです!


今日はとっても嬉しい日なんです!


だって…


おっソロ「よかったね!冒険者になれて!ほーらこれ!お祝いのパンだよ!」

冒険者登録祝いをしてくれたおっソロさん!優しい!


カエデ「わぁ!ありがとうございます!」


冒険者になれた報告にパン屋に帰ると、おっソロさんが大喜びしてくれました!


おっソロ「冒険者はいろんな物資を持ち帰ってくるよね!素材とか薬草とか!うちのパンにも使えるし、買い取るからねー頼んだよー!あはは!」


カエデ「はい!!」


私はおっソロさんに恩返しするんです!ふんす!


おっソロ「でも、行くならちゃんと無理のないクエストにしなよ!あはは!」


カエデ「はい!」


私はおっソロさんお手製のパンをもらって、明日に備えて早めに眠りにつきました。


◇◇◇


翌朝。


ギルドに到着すると、受付カウンターに初日とは違う、メガネをかけた女性が立っていました。彼女はニコニコとしています。


受付嬢メガネ「あら、新人さん?何かお探しですか?」


カエデ「あの…クエスト…を見に来たんです。私、初めてなので…」


受付嬢メガネ「はいはい!クエストボードはこちらです。お名前は?」


「カエデと言います。よろしくお願いします。」


受付嬢メガネ「カエデさんですね。私はシルビアと言います。初めてでしたら、こちらの紙に書かれた【 F 】ランクのクエストがおすすめですよ。」


カエデ「なるほど……私のこの胸を見て言ってますね!?」


受付嬢メガネ「……ん?」


シルビアさんは優しく微笑みながら、茶色の紙が貼られた壁を指さしました。


カエデ「ありがとうございます!では……ええっと……」


クエストボードをじっくり見ていると、ある依頼が目に留まりました。


【緊急依頼:魔法の森の謎解明】

【内容:最近、魔法の森から奇妙な光が目撃されています。調査をお願いします】

【報酬:50万リフル】

【ランク:D】


カエデ「わぁ……光の謎……なんだか素敵なクエストですね!」


受付嬢メガネ「え?カエデさん、それはDランクの……」


カエデ「この光の正体を突き止めるのは…まるでファンタジー映画みたい!私にぴったり!」


シルビアさんの表情が曇りました。


受付嬢メガネ「カエデさん、すみません。あなたはまだFランクの冒険者です。Dランクのクエストは命の危険があります。」


カエデ「でも……光の謎を解明するなんて、きっと素敵な冒険になるはず……」


受付嬢メガネ「いいえ、だめです。まずはこちらの【草原の薬草採取】からスタートしましょう。」


【草原の薬草採取】

【内容:町の薬屋さんのための薬草を集めてください】

【報酬:3000リフル】

【ランク:F】


カエデ「……薬草採取……!」(そうか。さっきのはDカップじゃないと受けれないのか……)


受付嬢メガネ「はい、とても大切な仕事ですよ。町の人々の健康を支える、立派なクエストです!」


カエデ「私が F カップだからですね!?」


受付嬢メガネ「うるせーよお前。早くいけよ。」…ばさっ!


シルビアさんが依頼書を投げつけてきました。


この冒険者ギルドの受付の人は急に怒るんだよなぁ……怖い。


◇◇◇


町の東にある草原。


カエデ「えっと……《湿性薬草》を10束!」


風がさらさらと心地よく吹き抜けていきます。

緑の絨毯のように広がる草原には、色とりどりの草花が咲いています。


カエデ「えっと……赤い花びらに紫の茎の薬草を10束…」


私は薬屋さんからもらった薬草の絵を手に、草原を歩き回っていました。


カエデ「あ、これかな?……これ遭難してる時に食べてたヤツだ!苦みの後に死ぬほどの辛いヤツ!」


赤い花びらの植物を見つけ、薬屋さんの絵と見比べます。


カエデ「うん、合ってる!これを10束集めればいいんだね。」


私は慎重に薬草を摘み始めました。


サクラとツバキがいたら、きっと笑うだろうな…「カエデが草摘みっていかにもだねー」なんて。


カエデ「ふふっ。でも、私って意外と几帳面なんだよ。」


薬草を丁寧に束ねながら、私は独り言を呟きました。


カエデ「むしらせてもらいます……すみません……でも役に立ちますから……」


と、きっちり“ごめん”を添えて、草をむしっていた。


──その時だった。

風が止んだ ──。


草が──震えた。


カエデ「……え?」


振り返ると、草が一本、また一本と、逆立つように持ち上がり── まるで集合体のように形を成していく。


そして現れたのは──


???「よくぞ来た、“草と語る者”よ」


カエデ「……な、なになになになに……だ!誰ぇえええええ!?!?」


現れたのは、全身が葉とツタで構成された植物の巨人。

でも顔立ちはやたら整っていて、草の香りがやさしい。


草王「我は《草王》。草界の監視者にして、草たちの代弁者」


カエデ「そんな役職あるんですか!?」


草王「そなたは勇者。悪いが少し試させてもらっていた。草を摘むたびに“ごめん”と言った。その慈愛の心。まさに勇者であった。それゆえ……力を授けよう」


【アルティメットスキル:スピリットコール : 草 】

【称号:草生える者】

【獲得条件:草王との契約】──達成。


カエデ「アルティメットスキル!?」


草王「今、そなたは草である。風と共に在れ、グラス・カエデよ

 ……そして、忘れるな。

 その力は“アルティメットスキル”

 勇者にしか扱えぬ、精霊契約の証。


 本来、精霊はことわりと共に在るが、

 そなたは草と意思疎通を成した。

 無自覚とはいえ、それは勇者の素質ゆえ。


 そなたは今後も数々の精霊と契約を交わしていくことであろう。


 ──だが、気をつけるがよい。

 契約を重ねるたびに、そなたの周囲は奇妙な力で満ちてゆく。

 得られるスキルが……実用的とは限らぬゆえにな。」


草王が消えながら語った。


草王「──正式名称、《精霊顕現・第零式 : 草(スピリットコール:草)》」


風が舞い、草王は姿を消した。


カエデ「ありがとう草王さん!」




草王「── それから」また草王が出てきた。


草王「洗った草はなるべく早めに食せ。栄養が逃げるゆえ」


カエデ(また来た)


また風が舞い、草王は消えた。




草王「── あ!そうだ!」また草王が出てきた。


草王「食後には必ずストレッチをするのだ。便秘に効く」


カエデ(……あ……また来た)


三度目の風が舞い、草王は消えた。



草王「── あとさ?」また草王が出てきた。


草王「雑草にも名はある。摘むときは呼んでやるのだ」


カエデ(……もう帰って欲しいな……)


再び風が舞い、草王は消えた。



草王「── そうそう!あのさ!」また草王が出てきた。


草王「夜露は飲むな。お腹を壊す」


カエデ(……ほんとに早く帰って欲しいな……)


ようやく風が最後に吹き抜け、草王は今度こそ消えた。



◇◇◇


……気がつくと私は一人、草むらに立っていた。


カエデ「……草王さん……ありがとう……私、がんばる……!」



(つづく)

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