↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【14万PV突破】魔王がポンコツだから私がやる。──バグってる異世界をぶん殴る女たち  作者: さくらんぼん
第14章 : 【カエデ&ツバキ】中二と天然と信者の、世界ぶっ壊し珍道中
PR
85/172

#085|楓椿009:世界は征服を望む。しかし私は望んでない。

 ──数日後。旅の途中。


「うおおおぉおおおッ!!

 ホーリィィィィィィィ……ビィィィィィィィム♡!!」


 私の絶叫とともに、左目から極太の閃光が迸る。


 ビーーーーーーーーーー♡


 森の中に潜んでいたモンスターは、

 光の奔流に呑まれた瞬間──塵も残さず”抹消”された。


  †


 ──音もなく、風が逆流した。


 地面には焦げ跡すらなく──

 ただ、十字架(クロス)の形に空間が抉り取られていた。


 空を飛んでいた鳥が、一目散に逃げていく。


 私は呆然と立ち尽くした。


 倒した。うん。倒した。それは良い。

 それは、良いんだけど。


 ……跡形もない。完全に、何もない。


 ビームが強力すぎる。手が震えていた。

 これが私の力? これが”私”?


 音も匂いも、すべて消えた。

 静かすぎて、逆に心臓の音だけがうるさい。


「な、なんという……聖なる消滅……!

 この地は後世、奇跡の地として語り継がれるでしょう……

 ツバキ様が残した、清浄なる浄化の証として……!」


 ローザが膝をつき、祈るように呟いた。


 だが私には、その賛美の声が──

 なぜか、恐怖に聞こえた。


「いや……なんなの……この力……!?」


 私の声が裏返った。

 自分でも驚くほど、怯えていた。


「わー!すごいぃー!!

 ほんとに跡形もなくなったねー!」


 カエデがピョンと近づき、

 †の残光を手でパタパタしながら無邪気に言う。


「ねぇツバキ、今のもう一回できる?

 うどん温めたいんだけど」


 カエデはどんぶりを片手に、そう言い放った。


「私のビームを『電子レンジ』扱いすなッ!!」


 私は頭を抱えた。


「くっ……我が内なる魔力が暴走を──否、これも必然か。

 世界が我に浄化を望んだのだ……!」

(※中二病モードで復帰)


 実際のところ、力のコントロールがまだできていない。

 ちょっと威嚇のつもりで放ったビームが、

 毎回フルパワーで発射されてしまうのだ。


「ツバキ、もう少し手加減した方が……」


「この身に宿りし浄化の光、制御など叶うものかよ!」


(……手加減って言われても、勝手に出るんだもん!)


 *


 休憩に入り、草の上に腰を下ろした私は、

 何気にステータスウィンドウを開いた。


 \\ ズギュウウウン!!! //


「音ぉぉぉッ!!??」


「演出がド派手すぎてログ読む前に圧がすごいよッ!!」


 カエデも悲鳴を上げた。

 当然の反応だ。何この効果音。毎回驚く。


=====

【ステータスウィンドウ(※抜粋)】

名前:ツバキ

レベル:13

称号:聖女(仮) → ゴッド・ツバキ(信者により命名)

信者数:10,114人

世界征服率:5 % (カメリア教立ち上げボーナス、ログインボーナス込み)

演説力 : 3 (パンの話ができる)

カリスマ : 990 (信者「よくわかんないけど好きです!!!」)


▼スキル一覧

・ホーリービーム♡(両目・口・耳・ツムジ /鼻は保留中/お尻は女子だから制限中(*優しさ))

・中二病語録 (パッシブ)

・空中浮遊 (制御不能)

・心の叫び(大)【アクティブ】

∟発動時、感情の高まりにより魔力増幅(※強すぎると暴走)


▼征服フェーズ進行状況

 次の征服フェーズ到達まで:あと 9,886 人

 次フェーズ報酬:演説力+5 / カリスマ+10

=====


「……ビームが鼻から出る可能性、まだ消えてないし……!

 なんならまだ、変なとこから出すの検討されてるし!?」


「いいなぁ……」


 カエデが羨ましそうに呟いた。

 何が「いいなぁ」なの、真剣に聞かせて?


「……って! 信者数が一万人超えてるし!?

 世界征服率5%!?」


 心臓がバクバクと音を立てる。

 いつの間に? 私、何をしたっけ?

 パンの話をして、ちょっとビームを撃っただけなのに。


 ……数字の重みが、じわじわと現実味を帯びてくる。


(……待って。5%ってことは……)


 背筋が凍った。


(あと二十回これをやれば……世界が終わるってこと……?)


 指先が冷たくなる。

 ただの数字遊びだと思っていたものが、

 急に「終わりのカウントダウン」に見えてきた。


「おめでとうございます、ツバキ様ぁ!!」


 おめでたいことなの、これ?

 ローザの嬉しそうな顔が、逆に私を困惑させる。


「いや、世界征服してるつもりなかったんだけど!?」


 声が上ずった。

 本当に、本当に意図してなかったのに。


「世界が勝手に征服されていってます……」


 嬉しそうにローザが羽ペンを走らせる。

 どうやら私の存在自体が、

 この世界の宗教観を書き換えているらしい。


 善意でやっていることが、

 結果的に世界征服になってしまっている。


「ツバキ、このまま世界征服だね!」


 カエデがうんうんと頷いた。


「違うー!!」


 ──私が叫んだ、その刹那。


「えへへ、ツバキ!

 実は私もね、新しい精霊と契約しちゃったんだ!」


「は?」「おお?」


 ローザと私の声が重なった。


「ふふーん、これです! ステータスオープン!」


 \\……ほにょ〜ん……ぽわわ〜ん……♪//


「……絶対バカにされてるよ、カエデ?」


「……」


 ローザも押し黙った。


「そうかなぁ?」


 当のカエデは首をかしげるだけだ。


 カエデのステータスウィンドウが、

 やたら優しく牧歌的な音で開く。


=====

【ステータスウィンドウ(※抜粋)】

名前:カエデ

レベル:1(※固定)

称号:草の者/勇者(?)

幸運:-530000(厄災級)


スキル:

・ウィルソンを投げつける(Lv.1210)

・スピリットコール:草

・スピリットコール:弱風(NEW!!)


【スピリットコール:弱風】

精霊名:そよかぜのフーラ

発動効果:相手の前髪が”ふわっ”と揺れる(くしゃみ未満)

副作用:精霊がやたらテンション高くてうるさい

セリフ例「風の精霊、フーラ参上ッ!! 必殺ッ!風圧一センチッ!!」

=====


「「……そよかぜ」」


 私とローザが声を揃えた。


「……お前、本当に勇者なの……か?」


「うん! 精霊と契約できるもん!」


 ドヤ顔だった。

 まごうことなき、自信に満ちたドヤ顔だった。


「カエデ様……さすがでございます……」


 ローザが静かに、そして恭しく頭を下げた。


 さすがでございます、じゃないよ。

 風圧一センチだよ。


 私は世界を征服しかかってるのに、あいつは一センチだよ。


 ──深呼吸をした。


 草の匂いがした。

 のどかだった。


 ……まぁ。


(……カエデだしね)


 それだけで、何故か全部納得できてしまう自分が、

 少しだけ悔しかった。


 ──その時だ。


「あぁ……! わかりました……! わかってしまいました!」


 ローザが突然、雷に打たれたように震え出した。

 目には大粒の涙が浮かんでいる。


「ど、どうしたのローザ?」


「ツバキ様の『世界征服』……

 先ほどの『デンシ・レンジ扱いするな』という拒絶……!」


 ローザが懐から聖典を取り出し、猛烈な勢いでペンを走らせる。


 ガリガリガリガリガリガリッ!!


「ちょ、ローザ!? 怖い音! 筆圧が怖い!」


「デンシ・レンジ……その響き……!

 おそらく古代語で『灼熱の邪神』を意味する言葉……!

 聖女様は、うどんを温めるという安易な快楽(邪神の誘惑)を拒絶されたのですね!!」


「違う! ただの家電! チンする箱!!」


「『チン』……!?

 なんと恐ろしい儀式名……!」


 ローザが戦慄して口元を押さえた。


「命の灯火が消える音を……あえて軽薄に擬音化するとは……

 邪神レンジ……恐るべし……!」


「違うってばぁぁぁ!!」


 私の訂正は、ローザの感動にかき消された。


「──追記します!

『第四千九十六節:世界は征服を望む。しかし聖女は、うどんを温めることを望まなかった』」


「もう意味わかんないな!?

 あと、そのネタみたいな教えが四千を超えてるの!?」


 私のツッコミは、オサカの空へ虚しく吸い込まれていった。



(つづく)



 ──【本日のカメリア聖典追加節】──


『第四千九十六節:世界は征服を望む。しかし聖女は、うどんを温めることを望まなかった』


解説:

世界征服とは、気づいた時には終わっている。

電子レンジに否定されても、歴史は動く。

聖女の意思と、世界の意思は、だいたいいつもすれ違う。

冷たいうどんも美味しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。