#081 : パンに栄光あれ☆ホーリービーム♡
前回までのあらすじ
→ 大聖堂で説教をすることになった。ローザ仕事出来る。
ツバキ「あの人の暴走止めろ!!!」
====================
……集いし者たちよ、沈黙せよ。
語る者はこの身なり。
呼ばれし名はツバキ──“異界に咲きし灼瞳の神子”。
この地に召喚されて幾星霜。
時は未だ定かならぬが、我が魂は既に多くの覚醒を経た。
汝らの“魂の器”は安寧か?
我は今朝、ひとつの奇跡に遭遇した。
それは──《神域の輪環》。
外殻は“サクリファイス・クラスト”、内核は“フワリス・エンジェリカ”。
触れし瞬間、記憶と感覚が次元の狭間で融合し、我はこの世界を一時、忘却した。
それはまさに──
“俗世の枷を断ち切る、禁断の芳醇”。
再び、あの聖なる断片を口にせし日を願っている。
されど──
何故、この世界には《沙士縛鎖麺包》が存在せぬのか。
あの甘辛の旋律は何処へ。
《暗黒の双角》も《天使の臓腑》も、未だ見ぬ幻。
これは……この世界の“喪失”か……それとも、我への試練か……。
嗚呼──
不覚……またしても“穀霊の啓示”ばかりを口にしてしまった……。
我が言霊は、今宵も暴走する宿命にあったらしい……。
──時は満ちた。
これ以上語れば、言葉は虚無となるだろう。
ここで、我が言葉を封印する。
聞き届けてくれたこと、深く感謝する。
(翻訳 :
……こんにちは、みなさん。
私の名はツバキと言います。
この地に召喚されてから、もう幾日かが経ちました。
皆さん、お元気ですか?
私は今朝、とても美味しいパンを食べました。
外はサクッ、中はふわっとしていて、ほんのり甘くて──
あの瞬間だけは、異世界だとか聖女だとか、全部忘れられました。
またあのパンを食べたいなと思っています。
焼きそばパンとかは無いんですかね?
チョココロネとか、クリームパンとかも好きなんですよね。
あっ、すみません。パンの話ばかりしてしまって。
……そろそろ話すことも無くなってきたので、ここで終わりにさせていただきます。
聞いてくださって、ありがとうございました。)
[タグ]#ただパンの話してるだけ #深淵を感じろ
====================
“パンに栄光あれ。我が魂にバターを。”
──我、退場す。
「そして我らは──虚無を恐れるな!!!なぜなら……このツバキの左目が──」
ビーーー♡
天井がバゴンと吹き飛び、虹色のビームが一直線。
差し込む陽光に照らされた私は、ただ呆然。
信者たちが立ち上がり、歓喜に震える。
わー!わー!
教徒A「ツバキ様ー!」
教徒B「うおおおッ!!!」
教徒C「今のが、神……」
教徒D「まさにホーリービーム♡ッ!!」
教徒E「……なぁ?ただのパンの話じゃなかった?」
教徒F「黙れ!深淵を感じろ!!」
ツバキ「ライブ会場みたくなってる!?」
(助かった……ビーム様々……)
◇◇◇
──その夜。
「本日の闇の説教、大成功でございました!」
ローザが紅茶を運んできた。いつもどおりテンション高め。
「ふん…じ…序章に過ぎぬ」
なんとかクールぶって返すけど、内心ほっとしてる。
「それと、聖典の進捗報告です」
「……また増えたの?」
「はい!第四章『天を貫く灼眼』が完成しました!」
「……ま、うん。すごい速い。神速。たぶん」
「さらに昨夜の分も『黄昏の神託』として第五章に収録されました」
「…君たちは…暇なのかな…?」
ローザはキラキラした目で続ける。
「あと、“新たな儀式”が信者の間で流行中です」
「……儀式?」
「はい。“朝、あと5分だけ”と唱えることで夢の叡智に触れるとか」
「それ……ただの二度寝だよね!?」
「“夢と現の狭間を行き来する神秘の旅”とも」
「詩的に…しないで…!!」
(つづく)




