#008 : 勇者爆誕☆でも私、魔王軍ですよ☆
前回までのあらすじ
→ 大きいバカが小さいバカのバリアを殴ったらバリア割れたとこ。
◇◇◇
\\パリィィィィィン!!!//
まるでガラス細工のように、バリアが粉々に砕け散った。
【スローモーション開始】
光の破片が宙に舞う。
キラキラと輝きながら ── ゆっくりと落ちていく。
バリアの向こうで、エスト様の目が点になる。
[タグ]#世界征服は無理そう #筋肉は裏切らない
ヤバい!と気付いたエスト様!
『ひっ』と声を絞り出す。
そして、必死の形相で逃げようとするが……
そのまま勢いの止まらない拳が──
ゴツン!!『アゴッ☆』
エスト様のアゴに、クリーンヒット。
涙、鼻水、ヨダレがゆっくりと空に舞う。
── そして、ゆっくりと倒れる。
【スローモーション終了】
「……」
私は砕けたバリアの残滓を見下ろす。
(静寂)
「……薄いし、柔いよ……?」
私は拳とエスト様を交互に見つめた。
「えーっと……」
(…………)
(……やっちまった……?)
「どうしよう……」
──この時はまだ誰も知らなかった。
この出来事が、“魔王の致命的なウィークポイント”を世界に知らしめる第一歩になるとは──
◇◇◇
私は気絶したエスト様を見下ろしていた。
……簡単に気絶するほどのポンコツ魔王が、“世界征服”なんて……ムリ。
でも……言い出したのは妹だ。
だったらもう、やるしかないじゃん。
守るのも征服するのも、まとめてやったるわ。
家族ってさ?姉ってさ?そういうもんでしょ?
(うーん……家族……ね……)
(ぶっちゃけよく分かんないのよね……)
(まぁでも……頼られて、必要とされて、大切にされて……)
(私を呼ぶ声……あったかくて、悪くない。)
(うん……悪くない。)
「……姉?姉妹?……私が?暴力と逆ギレでできてる私が?」
── その時である。
《ぺったん ぺったん ずんどこどーん♪》(*レベルアップのテレレレッテッテッテー♪のリズム)
「わわッ!びっくりしたぁ……頭に直接聞こえてる?」
脳内にレベルアップ(?)のファンファーレが鳴り響く。
「ずんどこどーん♪じゃねぇええ!!何がレベルアップだよ!どこが上がったんだよ!?」(胸をガード)
【サクラのレベルが100に上がりました】
「……は?」
(……は?)
「……は?」
「レベル100?……は?この物語の最終回?」
「いや、ちょっと待て待て待て待て待てー!」
「なんで?今の何?チュートリアル?」
「え?私だけバグってんの?ねぇ?」
──天の声──
《理由はサクラだからだ。どうだ?納得だろ?》
「なんだよその理由!?」
(混乱中)
── その時、再び頭の中に響く声。
──天の声──
《ついでに魔王を倒したので勇者認定する。常識だな。世界の理だ。》
【称号「勇者」を取得しました。】
「は?ついで?今度は勇者?……え?ついでに勇者!?」
\\ ぺぺぺぺぺー⤴︎ぺったん♪ // ※効果音
「なんで効果音変わってるの!?(怒)」
================
【ステータスウィンドウ】
名前:サクラ
種族:鬼
レベル:100
▼称号:
- 勇者(成長補正【極】) ☆NEW
- ぺったん鬼女【呪い】
→ 全ステータス20%ダウン(笑)
- 世界一タフな性格
▼スキル:
- 怪力(Lv100)
- 暴食(Lv1)☆NEW(偏食から進化)
================
── かくして、勇者サクラがここに誕生した。
私は腕を組んで首を傾げる。
「えーっと……」
「魔王を倒したから勇者……なのかな……?」
「うん……まぁそうか……なるほど。わかるけどわからん。」
「……で、これから魔王と勇者が世界を征服するの?」
「勇者ってさ、普通“世界を救う”もんじゃないの?」
「私?“世界ぶっ壊す”側なんですけど??」
「勇者になっちゃいました!ついでみたいです!てへぺろ★」
「って魔王に?いや絶対めんどくさくなる未来見えた……」
私は拳を握り力を込めてみた。
身体の中から力が溢れる感覚があった。
壁を殴ったらどうなるか、怖いくらいに予感できる。
(やべぇ……マジで強くなってる……。)
── そんな時だった。
\\ ドガァァァァァンッ!!! //
壁が砕け、現れたのは──【キングベヒーモス】。
筋肉と怒気の塊、異世界の生態系トップ。
「うわああああ!?でっか!?」
「無理無理無理!!」
「え!?なに!?どうすんの!?」
私は後ずさりながら震え声で叫んだ。
[タグ]#虹色は混乱 #ヨダレがフラグの量 #理不尽な世界
──天の声──
《戦え。死ぬぞ。》
「戦う?アレと!?無理でしょ!?」
「いやいやいや、令和のOLにいきなりラスボスクラスぶつけるなぁぁぁ!!」
ベヒーモスが咆哮し、突進してくる。
その巨体が床を揺らす。
「やだやだやだ!!」
──ズルッ。
「ブフォッ!?」
ズシーン!!!
エスト様のヨダレに足を取られ、豪快に転倒するベヒーモス。
「え!?転んだ!?」
地鳴りの中で、私は腰を抜かした。
「でも怒ってる!!やばい!!どうしよう!!」
──天の声──
《スキル《怪力》を使え。》
「怪力!?」
「いやいやいや、私ジムの入会金も払えなかったOLだよ!?」
「筋トレ三日でリタイア勢だよ!?使えって何!?」
──強制発動──
【スキル《怪力》 Lv100 発動】
「え、ちょっ、待っ……力が溢れて──!?」
「これ本当に私の身体!?力入りすぎ!?」
全身に信じられないほどの力が宿る感覚。
「な、殴るよ!?殴っちゃうよ!?」
転倒していたベヒーモスが再び突進してくる。
「きゃあああ!……き、きききたぁあ!?」
「も!もももももう知らんッ!右ストレートだぁ!!」
私は叫びながら目を瞑り、全力で右手でパンチ!
ズドォォォォォン!!!
拳が振り抜かれ、轟音と衝撃波。
ベヒーモスの巨体は壁を突き破り、遥か彼方へと吹っ飛んでいく。
「ギャオオオオオ!!」
遠ざかる咆哮と共に、ベヒーモスは逃げ去った。
天井から瓦礫が降り注ぐ。
「……え?」
「逃げた?……逃げた!?」
震える拳を見つめ、全身ガタガタ震えながら呟く。
「怖い怖い怖い!!なにこれ!?私の手!?怖い!!」
「とりあえず有給使う……」(震え声)
(つづく)
※次回!勇者になってしまったサクラに危機が!?
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】 :0.1%(爆上がりに見えてまだ微増)
【支配地域】:常闇のダンジョン最奥(本人基準)
【主な進捗】:レベル1から100へ爆上がり。
ついでに勇者になってしまった。
【特記事項】:称号「勇者」獲得。スキル構成はネタ寄り。
暴走はまだ序章。
魔王のアゴが豆腐 (NEW)
キングベヒーモスを一撃で撃破。