#060 : 騎士道?知らん☆回転数で語れッ!!
リンド村を出た私たちは、領主の住む街を目指していた。
この世界にも四季があるのだろうか。
道端に、赤く咲く花があった。
サクラ「……これ、椿に似てるな」
椿──私の世界で見かけた花。
今の世界には無いけど、雰囲気が似ていた。
サクラ「ツバキ……今ごろどうしてるかな」
ふと思い出した、親友の顔。
サクラ「まあ、あの子は絶対元気でしょ。何しても誤解されてトラブルに巻き込まれる体質だけど、受け入れて流されつつも上手くやるし」
一呼吸おいて、私はクスッと笑った。
サクラ「……カエデは…今ごろ泣いてるね。パン食べながら」
ありありと想像できて、私はまた笑った。
みんな、どこかで生きてる。
それだけで、少しだけ心が軽くなる気がした。
さぁ進もう。こっちはこっちで、世界征服の時間だ。
陽射しがやや強く、少し暑くなってきた。とても良い天気だ。
—— こんな日は光合成が捗る。
◇◇◇
エスト『今日は気持ち良い日だねー☆』
笑顔で応えた。
サクラ「エスト様?歩くのに疲れたら辰夫に乗れば良いですからね。」
辰夫「む?うむ。」
コクリと頷く。
エスト『うん。ありがと☆でも今はちょっと歩きたいよ☆』
優しく微笑む。
そして──気になるのは辰美だ。
何故かずっと私の着物の袖口をつまんでいる。
サクラ「ねぇ……辰美?…これ…なに?」
私は辰美がつまんでいる部分を指差しながら言った。
辰美「な、なんでもないです!ご!ごめんなさい!」
辰美は慌てて手を離した。
サクラ「変なの…」
私は首をかしげた。
辰美「……。」
耳たぶまで真っ赤にし、しばらくうつむいていた。
しばらく初夏を満喫しつつ歩いていたが、その時。
乱視を克服した私の目が周囲の殺気を捉えた!
サクラ「ん……?……小娘ッ!トカゲ共ッ!囲まれてます!
乱視が治ったから分かります!殺気が見えます!」
エスト『乱視が治ると殺気が見えるの!?乱視ってなに!?』
この非常時にも正確にツッコミができるエスト様。
嗚呼……やはり私にはこの方が必要なのだ。相方として。
辰夫「トカゲ共!?」(私を二度見)
辰美「あぁもう!ありがとうございます。」
辰美の様子がやはりおかしい。
サクラ「……うーん……仕方ない。やりますか……はぁ……めんどいな……はぁ……」
私はため息をつくと、声を張り上げて言った。
サクラ「こちらを取り囲んでいるのは分かっています!何の用か?」
すると、1人の男が近づいて来て言った。
男「ほうほう。まさか我らに気付くとは。」
その糸目の男は歩みを進めながら話を続ける。
男「私たちは王国騎士軍精鋭部隊です。私は部隊長のジルと申します。とあるお方より依頼を受けまして、あなた方を始末しに来ました。」
サクラ「はい!領主の依頼な。」
エスト『うん!領主の依頼だ☆』
辰夫「ふむ!領主の依頼か。」
辰美「それ!領主の依頼ね。」
私たちは即答した。
ジル「ふふ。」
糸目の男は私たちの前で足を止めると腰の剣を抜いた。
そしてこの男の余裕な態度に私のイライラ度はマックスに達した。糸目だし。
ジル「我々の対策は万全です。完全に取り囲んでいます。こちらとしても無駄な消耗は避けたいので、大人しく投降してくれるなら命まではとりませんよ。」
なるほど。随分とお優しい。
これが騎士道というやつなのかな?糸目だから怪しいけど。
── さて。仕方ないやりますか。
サクラ「ほ、本当ですか?良かった……お助けください!糸目の騎士様!……大人しくします!ですから……どうか命だけは……!」
「私はただ、こいつらに脅されて連れ回されてる哀れで美しい鬼なのです……」
私は糸目に駆け寄った。
エスト『うん?あぁ。……お姉ちゃんのうらぎりものー』
辰夫「む……なるほど?……分かったから好きにしろ。」
辰美「あぁ……そうか。やっぱりこうなるのか。はいはい。」
小娘達も私にしたがう。
ジルは私たちの反応に満足げな表情を浮かべた。
ジル「ふむ。物分かりの良い人たちで良かったです。では、捕まってください。おい!対象は投降した!縄を持ってこい!」
部隊長の糸目のジルは大声で叫んだ。
同時に周囲の殺気が緩んだように感じた。
サクラ「あの…糸目の騎士様…?」
ジル「なんでしょう?」
糸目のジルが返事をしたその瞬間!
サクラ「……肩でも揉みましょう……カッ!?」
私は男の右足を掴み、回転とともに叫んだ。
サクラ「……笑えるよな。こんなに信頼されて、裏切れるんだから。だが、それでも──私は私を裏切らないッ!!」(ムダ様語録)
グリン!!!!!ズガッ!!!
そうだ!得意技のドラゴン・スクリューだ!!
「ムタッ!?」
糸目は騎士らしくない声を出すと地面に頭から突き刺さったまま動かなくなった。
サクラ「カッカッカッーーーーーッ!ぶぁーーかーめーぇー!!!騎士道ー?ご立派でーすねー!カーーーーーッカッカッカッ!!!」
エスト『お姉ちゃん、女の子なんだから笑い方は直そうね☆』
辰夫「はっはっは!やけに素直だったからな。」
辰美「卑怯なサクラさんカッコよすぎ!」
サクラ「あとは気持ちの切れた周囲の雑魚掃除よ!辰美は小娘と空へ!小娘は空から魔法!辰夫は適当に暴れてこい!」
エスト『あい☆』
辰夫「応。」
辰美「はい!」
戦闘が始まった。
私はドラゴン・スクリューを駆使し、敵を次々と倒していく。
足を掴み、素早く回転させ、敵を地面に叩きつける。
その動きは流れるように滑らかで、まるで舞を踊るかのようだ。
エスト『お姉ちゃん?これからもその技だけで生きていくの?』
辰夫「効率悪そうですな…」
辰美「回転するサクラさん素敵…」
そんなこんなで私が30人ほど地面に突き刺したところで勝利した。
(つづく)
\\次回予告!//
ドラゴン・スクリューで30人を地面に突き刺し、圧倒的勝利を収めたサクラ!
だがその直後、思わぬ敵の「一言」がサクラを沈黙させる……!?
次回──
#061 : 恋愛耐性ゼロ☆サクラさんマジで処理落ち中
\\お楽しみに!//
◇◇◇
──【今週のムダ様語録】──
『……笑えるよな。こんなに信頼されて、裏切れるんだから。
だが、それでも──俺は俺を裏切らないッ!!(ドラゴンスクリュー!どっせーい!)』
【ムダ様私語録・第十三話 傷の数は回転数に比例する】
裏切りとは自己肯定のひとつの形である。
自分を信じ続け、人を裏切る。それがムダ様流の誠実。