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魔王がポンコツだから私がやる。 ──恥ずか死した私の黒歴史。  作者: さくらんぼん
第06章 : リンド村を拠点にしました。名前は「サクラ帝国・湯けむり支部」です。
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#055 : サクラさん式礼儀作法☆まず笑って、隙あらば刺す

前回までのあらすじ

→ 壊れたメガネを辰夫に叩きつけた。


◇◇◇


その日の勉強がひと段落ついた頃だった。


ハカセ母「すみません、あの……」


ハカセ「あ!お母さん、お姉ちゃん!」


後ろから声をかけられて振り向くと、少し疲れた顔をした女性と、その隣に高校生くらいの女性が立っていた。


ハカセ母「……さっきからずっと見てたんですけど、その、ヴィヴィが本当に楽しそうで……ありがとうございます。」


ハカセ姉「こんなふうに楽しそうに勉強してるの、久しぶりに見ました」


(……この人たちの名前も「ヴ」から始まりそうね。そんな嫌な予感がする。)


サクラ「いやー、うちの優秀な軍師候補なんで。仕上がったら使わせてもらいますんで。よろしく」


冗談めかしてそう言うと、ふたりは顔を見合わせて、ちょっとだけ涙ぐんだように見えた。


ハカセ母&姉「「……はい、よろしくお願いします」」


そう言ってふたりは、深く頭を下げてから帰っていった。


(……なんか、やる気出てきたわね)

私は思わず鼻を鳴らした。


その後ろでは、村人たちが教育の成果を噂し合っている声が聞こえてきた。


村人F「最近な、うちの子が文字覚えて、温泉施設の案内看板を作ってくれたんだよ」


村人G「あぁ、そういや領主様が来るって話を聞いて、みんなで手紙を書いて用意してたぞ」


村人H「なんかすげえな。勉強ってやつは」


私は小さく微笑んだ。

(ふふふ。計画通り。教育の力って偉大ね。)


そして、村長が慌てて走って行く姿が見えた。


サクラ「あ?村長さーん?どうかしましたかー?」


村長「おお!サクラさん!実は突然 領主様が温泉の視察に来られまして、色々準備をしなければならないところなのです……って、よりによってあの領主様が……」


サクラ「あの?」


村長「ご存じありませんか……“増税マン”こと、ガルド=デ=ブラーク領主です」


サクラ「だっさ!?てか名前だけで絶対悪いやつじゃん!!」


村長「村人からの評判は最悪です。“払えない税はない、徴収できない命もない”が口癖でして……」


村長は苦い顔をして続けた。


村長「ガルド=デ=ブラーク領主は、昨年も隣村から無理な徴税を行って、多くの家族が村を捨てて逃げ出しました……領主の館の地下には『税金を払えない者』が連れて行かれるという噂もありまして……」


サクラ「やっぱり悪いやつじゃん!!」


村長「でも──だからこそ、ご注意を。サクラさんも、くれぐれも無礼のないよう……」


村長はぶっといフラグを立てて慌ただしく走り去って行った。


サクラ「あ、はい。」


村長は慌ただしく走り去って行った。


サクラ「ふーん。領主…ねぇ………?」


(ぽくぽくぽく……ちーん)


サクラ「………あ!ハカセ!ごめん!急用思い出したから今日はここまでね!」


ハカセ「あ!はい。今日もありがとうございました!あと昨日の分も!あと明日の分も先に言っときます!」


(ふふ。)



私は急いでエスト様の元に戻った。


サクラ「エスト様!エスト様!なんと!この村に領主が来ているみたいです!」


エスト『ん…え…?』


エスト様はキョトンとしている。


サクラ「これはチャンスですよ!」


私はエスト様の両肩に手を置いた。


エスト『え?なんで?』


サクラ「いやいやいやーッ!エスト様の目的をお忘れですか?……世界征服でしょ?しっかりしろよ!眠たいんか?やる気あるんか?……お?……小娘がッ!!!」


両肩に置いた右手をエスト様の顎にスライドさせ、アゴを持ち上げた。


エスト『たまにひどい毒を吐く☆』


辰夫「たまに……ですか?」

辰夫が確認した。


私は両腰に手を当て部屋中をスキップをしながら言う。


サクラ「なのでーッ↑ 領主にはーッ↑ 行方不明にーッ↑ なってもらいーッ↑ 私たちでーッ↑ その領土をーッ↑ 奪い取るのでーすッ!ピース!ピース!ブヒーブヒーブヒー!」


(天の声:なお、この発言を聞いたエストは数秒間 頭が真っ白になったと記録されている。)


エスト『……それは笑い声なの!?……お……お姉ちゃんに豚の悪魔が…?』


辰夫「サクラ殿……?」


辰美「あれ……どちらが魔王様でしたっけ?」(混乱)


気を取り直したエスト様が言った。


エスト『まぁ行方不明にはしないけどさ☆挨拶はしといた方が良いよね!いつか侵略するんだし☆』


サクラ「ですよね!ですよね!隙あらば埋めましょう?」


私は両手を併せてピョンピョンしながら喜びながらも──

内心、ムダ様の言葉を反芻していた。


(……殺意を持って近寄るとバレる。敬意を持って近寄ればバレない。そこからは腕力の勝負だ──)


「ふふ……じゃあ“礼儀正しく”ご挨拶しに行きましょうか」

(まず笑って、次に刺す。それが世界征服の礼儀作法)


エスト『お姉ちゃん!ちゃんと礼儀正しくしてよぉー?☆』



(沈黙)*外から村の子供達の楽しそうな声



サクラ「……はぁい♪」


エスト『少し間があった気がする☆』


サクラ「……ないない♪」


辰辰「「……。」」


私たちが キャピキャピ している様子を辰夫と辰美はヤメトケという視線で見ていた。


エスト『そうと決まればー!レッツゴー☆』


サクラ「はいな!…………ん?ほら、辰夫と辰美も行くんだよ!さぁ!ホラ!早く早く!」


辰辰「「……。」」


(辰夫:行きたくない…)

(辰美:え……埋める?こないだ温泉掘ったばかりなのに、また穴掘するの?)


辰夫と辰美は絶対トラブルになるから心の底から行きたくないと思った。


(つづく)



\\次回予告!//


「へっ、カッコつけた増税マンにはラップで返すぜ☆」

──対するは鬼ボディ☆アヒル口の破壊神、“サクランマン”!


今宵、温泉村の広場がクラブに変わる!

ビート刻むは鍋と太鼓、魂ぶつけるライミング!!


次回──

#056 : ラップバトル☆増税マン vs サクランマン


\\見逃すなYO!//



◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】:2.7%(教育と政治掌握への布石が進行中)

【支配地域】:リンド村(拠点化、文明度向上)

【主な進捗】:

 ・ハカセ教育の公開授業で村人の関心を喚起

 ・村人の識字率・論理思考力向上による長期的支配体制の構築開始

 ・将来的な徴兵・兵器開発・司令部設置まで視野に入った魔王式教化が始動

 ・領主来訪の情報を得て、エストと共に“礼儀正しく”迎撃準備中

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