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魔王がポンコツだから私がやる。  作者: さくらんぼん
第10章 : これより、王都を焼きに行きます。
52/64

#052 : 正義が来たので、とりあえず殴った。

挿絵(By みてみん)

──ギルドというのは、どうしてこうも人が多いのだろう。


私はオーミヤの冒険者ギルドで、掲示板を前に盛大にあくびをしていた。


「これ、"凶暴カボチャの駆除"。食べられそう。」

『お姉ちゃん、それはたぶん食用じゃ……』


「えー、じゃあこっち。"巨大ナメクジの粘液採取"──うん、ないな。気持ち悪いわ」

『お姉ちゃん、もう少し真面目に探そう?』


「だから魔王討伐10億リフルやろうよ?」

『だから殺す気か☆』


「今日も平和ですな」

「ですねー」

辰夫と辰美も掲示板を見ていた。


──そのときだった。


バァァァァァン!!!


ギルドの扉が爆発四散。


ざわざわ!?

「「「「な!?なんだ!?」」」」

ギルド内がざわめく。


白煙の中から現れたのは、白銀の鎧と十字の紋章。

背中に太陽を背負うように、声高らかに叫ぶ女がひとり。


「この地に"異端"ありと聞くッ!

ならば、我が正義をもって──断罪する!!」


(……ああ、うるさい)


そのまま、正義を叫ぶ女へと向き直る。


「あら怖い。で、誰に"審問"するつもりなの?白マントさん」

「貴様だッ!鬼の女!!」


「貴様こそが”常闇のダンジョン”を率いた異形の女ッ!

この剣と魔法で、正義の審問を下すッッ!!

──ラウワ王直属、異端審問官・ユリシアが裁くッ!!」


叫ぶと同時に、その剣が炎を纏い、雷が唸り、ギルドの天井が吹き飛ぶ。

どうやらユリシアとやらが戦闘体制に入ったようだ。


(早ッッ!?話す気ゼロ!?…はぁ。やっぱり私がターゲットか。面倒ね)


私は軽く髪をかき上げて、その隣にいるエスト様の袖を引いた。


「……エスト様。少しだけ、耳を貸して?」

『うんっ、なになに☆』


にこにこと顔を寄せてくるエスト様に、私はだるそうに囁く。


「──ギルドの外に出て…ごにょごにょ…を…お願い」


『あいよ!わかった☆』


ふにゃっとした笑顔のまま、エスト様はぴょんと駆け出す。

そして途中で──


『辰夫!辰美!こっち来て☆』

「えっ」

「はい??」


『お姉ちゃんのお願いだよー☆』


その一言に、辰夫と辰美の顔色が変わった。


「……なるほど」(辰夫 : "嫌な予感"が全力でしている)

「なんか面白いことやるんだねw」(辰美 : 何をするのかは分かっていない)


「ふふ……小娘楽しそうね。」

私は口元に手を添えて、小さく笑った。

そしてユリシアへと向き直る。


「はいはいわかった…ったく!うるっせぇなぁッ!!」

──私は考える前に殴っていた。

貝殻ナックルを装着し、そのままユリシアの顔面めがけて拳を振るう!


ドォォォォォン!!!


だが、ユリシアはとっさに剣で受け止めた。

衝撃波がギルド中に響き、ついでに近くの受付カウンターが木っ端微塵になる。


「うわあ!?」「カウンターがあああッ!」

「ギルドが戦場になってる!?」


「……いきなり殴りかかってくるとは……!卑怯者め!!」

ユリシアが睨みつけながら叫んだ。


「え?何が?先手必勝よ?──“正義”って叫ぶ奴ほど、話が通じない。だから黙らせろ。ってね?」

私は肩をすくめてニヤリと笑う。


「へぇ?これをちゃんと迎撃できるなら、手加減しなくて済みそうね?」


「ふんっ!」

ユリシアが斬りかかる。

炎の刃が唸りをあげて、一直線に──!


「"聖炎斬"ッ!!」

ズバァァァン!


「ほいっと」

軽やかに横に跳び、拳で反撃。


「遅いのよ、正義バカ!」

ガキィィィン!!


剣と拳が激突、火花が散る。だが──


「チッ」

私の表情が曇る。


ユリシアの剣技は、予想以上に鋭かった。


「"雷光連撃"ッ!!」

バリバリバリッ!!

電撃を纏った剣が、一瞬で五連撃を繰り出す!


ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシューッ!!


「いち、に、さん、しー……って多ッ!!ごおおおおおおっ!!?」


私は吹っ飛ばされながら床を滑り、ギルド内を横断した。

舞い上がった埃が視界を覆う。


ギルドの空気が一瞬、静まりかえる。


「決まったか……?」

ユリシアが剣を構え直し、警戒を解こうとした、そのとき。


──ゴゴ……ッ!

埃の中に、赤い瞳がゆっくりと浮かび上がる。


「……ふう。終わった?」

私の頭、肩、腹部には、薄く透明な貝殻が張り付いている。


「ああ、これ?貝殻生成……部分的にね。全身は面倒だから、斬られた箇所だけ」

パリパリと貝殻を剥がしながら、私はにやりと笑った。


「で?まだ正義ごっこ、続けるの?」

「奇妙なスキルだが……正義は、悪に負けんッ!!」


ユリシアが跳躍し、天井に向かって剣を振り上げる。


「"天罰雷撃"ッ!!」

ゴロゴロゴロ……

ドカァァァァァン!!!


ギルドの屋根に巨大な雷が落ち、建物全体が崩れ始める。


「ちょっと待てよ!!建物壊すなバカ!!」

「悪を断つためならば、多少の犠牲は──」


「犠牲って何よ犠牲って!!修繕費誰が払うと思ってんの!?

──あぁ!もう!マジでムカつく。これ以上ギルド壊されたら仕事受けられなくなんのよ!」


「外でやりましょうか、正義の騎士様いや、ユリ様」

数十個の貝殻が次々と生成。


「食らいなさい!シェルバレット!振りかぶってぇー!投げちゃいましたー♪」


ヒュンヒュンヒュン!!

貝殻を弾丸のように連続で投げつける!


「"聖光斬"ッ!」

キンキンキン!!

ユリシアは剣で迎撃しながら口を開く。


「我が王より命を受けている!!貴様のような異端は──」

「王様?私、王様に嫌われるようなことはしてないわよ?」


その隙に、長い棒状の貝殻を生成。

「貝殻バットぉー♪」

一瞬で間合いを詰め──


「磯野ぉッ!野球しよう…ぜっ!!!!!」


ブォンッ!!!ガン!


「なっ──!?」

ユリシアが剣でガードするが、凄まじい威力に吹き飛ばされる。


ドガァァァン!!!


「うわああああああ!!」

ユリシアはギルドの外まで派手に吹っ飛んでいく。


そのとき──


『お姉ちゃ〜ん!準備できたよ〜〜☆』

外から聞こえる、エスト様の声。


(よし、タイミング完璧!)


「あら、ちょうど外に出たじゃない?……さて、後半戦といきましょうか」


私は、ゆっくりと外へ歩き出した──。


(つづく)


◇ ◇ ◇


《征服ログ #052》


【征服度】:4.05%(“正義”に絡まれただけ)

【支配地域】:オーミヤ(ギルド:天井消失、壁一部崩壊)

【主な進捗】:

・異端審問官ユリシアが登場するも即開戦

・サクラ、問答無用で先制パンチ

・ギルドの天井と受付カウンターが爆散

【特記事項】:

この日のサクラは、話を聞く気がゼロだった。

そして、正義の人はゼロ距離でバットを受けた。

ギルドのHPもゼロに近い。


◇ ◇ ◇


──今週のムダ様語録──

『“正義”って叫ぶ奴ほど、話が通じない。だから黙らせろ。』


解説 :

ムダ様の教え。

「正義って叫ばれるとイラッとするから、先に殴っとけ」

読了、本当にありがとうございます!

サクラたちの世界征服物語を、ここまで読んでくださったあなたに、心から感謝を。


少しでも笑ったり、楽しんでもらえたなら、それだけで幸せです。


評価・ブクマ・感想のいずれかを残していただけると、

作者は今後1週間、テンション高く生きていけます(真顔)。


またどこかでお会いできますように──!

挿絵(By みてみん)

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