#049 : 魔王軍☆闇夜に響くコマネチ
── その夜。
ざわざわ…ざわざわ……
月明かりの元に喧騒がこだまする ──。
私は温泉工事の為に、北の山の温泉前に魔王軍を集めていた。
ゴブリン、オーク、コボルド、リザードマン、巨人…等々と、錚々たる顔ぶれである。
[タグ]#魔王軍深夜残業 #月下のパワハラ演説 #月明かりと社畜たち
ざわざわ……ざわざわ……
ざわざわ……ざわざわ……
サクラ「おほん!」
(静寂)
サクラ「はい。静かになるまで5分かかりました。300秒です。スクワット300回な?」
ざわざわ!?ざわざわ!?
…
……
………
モンスター達がスクワットをしてる中、私は演説を始めた。
サクラ「聞きなさい!この世でもっとも邪悪な存在達よ!!!」
サクラ「これよりお前たちに重要な任務を与えるッ!!!」
サクラ「これは何よりも優先すべき事となると心得よォッ!!!」
ざわざわッ!ざわざわッ!
サクラ「聞け!闘争と温泉、どっちも血を洗う!!」
サクラ「温泉は心を裸にする!裸の心は征服しやすい!つまり温泉=最強の兵器!」
魔王軍「「「なるほど...…?」」」(理解した気になる)
ゴブリンA「温泉って何ですか?」(純粋)
オークB「俺、お風呂で歌うの好きなんだ…」(意外な一面)
リザードマン「爬虫類だから長湯は苦手です」(リアル)
サクラ「そして!温泉も闘争も両方とも……終わると腰に手を当ててるでしょ?……凄くない?」
[タグ]#温泉と闘争 #別に凄くない #何言ってんだこいつ
……(長めの沈黙。モンスターたちが互いに目を見合わせる)
………………ざわ…?…………ざわ…?
ゴブリンA「……なにが?」
オークB「……腰?」
サクラ「オホン……!温泉に入浴……すなわち……ニューヨークにー!行きたいかーーー!?」
………(さらに長めの沈黙。微妙な空気)
(遠くから聞こえる教会の鐘)
………ざわ…?………ざわ………?
コボルド「……誰?」
巨人「ニューヨークってモンスターいる?」
ざわ…?………ざわ………?
サクラ「おほん!」
(静寂)(魔王軍、一斉に直立)
──私は静かに刀を引き抜いた。
サクラ「ふむ。乗り気ではないと……なるほど。」(刀の峰で肩をトントン)
サクラ「ならば……」
(間)(魔王軍の喉が鳴る)
サクラ「今日は皆さんに、ちょっとだけ殺し合いをしてもらいます。」
私は右肩を上げたり下げたりしながら話した。
ざわ……!?ざわッ!ざわッ!ざわーーーッ!!!
サクラ「うんうん♪温泉に入りたいみたいで良かったです」
\\ コマネチ //
[タグ]#魔王軍の正式挨拶に採用 #魔王軍困惑中 #鬼姐さんの奇行
私は両手で股関節をなぞる体操選手のマネをすると、演説を終えた。
ざわ……?????
辰美「え……」
リザードマンA「……コマ?」
ミノタウロスB「……ネチ?」
(静寂)(コオロギの鳴き声)
サクラ「お前らもやれよッ!!」(怒号)
\\\ コマネチッ! ///(魔王軍一斉にコマネチ)
サクラ「もっともっとだぁーッ!!」(刀を振り回す)
\\\ コマネチッ! ///
サクラ「いいぞー続けろーッ!!」(刀を振り回す)
\\\ コマネチッ ///
サクラ「もっとー!もっとだーッ!!」
\\\ ……マネチッ! ///
サクラ「……もっとだーッ!!」
\\\ …………ネチッ! ///
サクラ「…………だーッ!!」
\\\ ………………チッ! ///
辰美「私は今、何を見てるんだ……」(闇夜に響くコマネチ)
──
その後、ワイトとサタンに念押しをする。
サクラ「いいですか。ワイト、サタン。あなた達が現場監督です。」
サクラ「人間に迷惑をかけない事を最優先で指揮しなさい。少しでも人間に迷惑をかけたら後頭部を右ストレートよ?」
サクラ「ちなみに私はお前達と戦った時より数倍強くなっています。具体的に言うと、私のレベルは53万です。」
ワイト&サタン「「ひ!は!はいーッ!」」
「「ど、どうして数字がインフレしてるんですか!?」」
サタン「人生は気合と勢いだよ!!」(ドヤ顔)
ほほほ。みなさんホントおバカさん達ですね。
── こうして温泉工事が始まった。
◇◇◇
── そして約1週間後。
村に温泉という観光名所が出来た。
常闇のダンジョンの温泉はモンスターにも大好評だった。
そう。お風呂が嫌いな生物は居ないのである。
── この村が、世界征服の出発点となる。
村人A「あの鬼の姉ちゃんが作った温泉らしいが...」
村人B「モンスターが夜中にこっそり工事してくれたんだろ?」
村人C「案外、良い奴らかもな...」
(つづく)
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】:2.5%(温泉インフラ構築により地上との影響力拡大)
【支配地域】:リンド村(拠点化完了)/常闇のダンジョン(福利厚生施設追加)
【主な進捗】:
・北の山で掘り当てた温泉を活用し、リンド村&常闇のダンジョンに温泉導管を建設
・魔王軍を夜間工事に動員、地上初の観光名所《リンド温泉》の開発が進行中。
【特記事項】:
・現場指揮はサクラ(自称Lv53万)
・施工は魔王軍(拳と刀でモチベ管理)
・“入浴前に全身を洗え”が魔王軍規範に追加
・なお、工事用語として「コマネチ」が一般化。
・湯気の向こうに、共存の可能性が見え始めている。
・ 村人の反応:
・「まさかモンスターが温泉引っ張って来るとは…」
・「あの鬼の姉ちゃんが企画した?じゃあ行こう」
・「リンド温泉、混浴らしいぞ(小声)」
・結果:
・魔王軍と人間の間に、“湯気で繋がる”交流の場が誕生
・軍規:『入浴前に全身を洗え』が追加
・魔王軍:清潔になる
・備考:
・温泉から始まる征服。心から掴むのは良いね。
◇◇◇
──【今週のサクラ語録】──
『闘争と温泉、どっちも血を洗うの。
そして両方とも、終わると腰に手を当ててるでしょ?
……凄くない?』
解説:
何が?とは言わせない。意味は後からついてくる。




