#048 : 絆の証☆胸を見つめた親友の誓い
私と辰美は北の山からリンド村への帰路に着いていた。
サクラ「辰美。これからは村で人間と暮らす事になるけど、辰夫と同じく、人型にはなれるよね?まぁ……なれなくても力技で人型にするけどなぁ……?」
私は歩きながら辰美に尋ねると、指をポキポキ鳴らした。
辰美「ひぃ!り、竜人族の姿になれます!」(ガクブル)
そう言うと辰美は人型に変身した。
サクラ「……お?」
竜人族の辰美は私と同じ10代後半くらいの姿だろうか。
髪は赤い色のショートヘア、ややキツめの目つきがとても美人である。
── そして…私は胸に目を移す。
サクラ「……辰美ーーーーーぃッ!」
辰美「は、はい!?」
サクラ「……私たち……ずっと親友だぜ……?」
私は辰美の胸を凝視しつつ、最高の笑顔で親指をグッてした。
辰美「くっ……」
辰美は自分の胸を押さえ、下を向いた。
そう──。
辰美もペッタンコだった。
上機嫌の私はスキップしながら辰美に話す。
サクラ「いやぁ良かったよー?もしも主人より大きかったらさーぁー?刀で切り落とす必要があったからさーwww」
(沈黙)
サクラ「…………あ!……首をなぁ?」
私はスキップを止め、刀をチラつかせた。
辰美「ひぃッ……」
辰美はペッタンコで良かったと心から思った。
そして、私たちはリンド村に戻った。
◇◇◇
村長に火竜討伐の報告し、この一緒に居るのがその火竜だと告げ、慌てる村長を尻目にしつつも、いつもの宿屋に着いた。
サクラ「エスト様。ただいま戻り……あら……ふふ……。」
部屋に戻るとエスト様はベッドで寝ていた。
辰美「ああ……この方が、魔王様ですね。グッスリ寝てますね。」
辰美はエスト様の寝顔を見て言った。
サクラ「ふふ。お腹を出しちゃって……風邪をひくわよ。」
私はエスト様が風邪をひかないようにと、そっと布団をかけた。
…
── そしてエスト様が目覚めた。
エスト『……うーん……?』
サクラ「お目覚めですか。エスト様。ただいま戻りました。」
エスト『あ!お姉ちゃん☆おかえりー☆』
サクラ「火竜討伐に行って、火竜を配下にしてきました。あと……こないだの酒場の冒険者3人も成り行きで…」
私はちょっと残念そうに戦果を報告した。
エスト『おおー☆さすがお姉ちゃん☆』
サクラ「辰美。自己紹介を。」
辰美「はい。火竜の辰美……と言います。特技は火を吹く事です。好きな食べ物はタマネギ、嫌いな食べ物はピーマンです。夏が嫌いです。暑いから。宜しくお願いします。」
エスト『私は魔王のエストだよ☆よろしくね☆』
エスト様は嬉しそうに笑った。
サクラ「あ!そうそう。辰美も "私の配下" ですので。」
エスト『ぅん……そうだろうね……。』(虚空を見つめながら)
…
少ししてから私は悪魔の女(面白いお姉さん)のことをはなした。
サクラ「というわけで、その人がめっちゃ面白かったのです。」
辰美「私!あの人にまた会えたら友達になってもらおうと思ってます!」
私が説明を終えると、辰美は目を輝かせた。
エスト『うーん?悪魔のような感じ……?心当たりが無いなぁ…』
エスト様は首を傾げていた。
サクラ「そうですか。まぁ、また来るみたいな事を言ってたので。」
…
次に、本題である温泉の報告をした。
サクラ「エスト様。北の山で温泉を掘り当ててしまいました。」
「そのお湯をこの村と常闇のダンジョンの 2箇所 に引っぱる工事をしたいです。」
サクラ「そこで、常闇のダンジョンの私の魔王軍を使っても良いですか?まぁ私の軍だし、良いよね。人間に見られないよう、夜にこっそりと工事をする予定です。」
辰美「おぉ…魔王軍!?」
辰美は魔王軍にそんな使い方があるんだ!と、関心した。
エスト『うん!いいよー☆でも、村は分かるけど、ダンジョンに温泉を引いてどうするの?……あとお姉ちゃんの軍じゃないよ……。』
(沈黙)
サクラ「……。」(無視)
エスト『……。』(ゆっくりと虚空を見つめる)
(沈黙)
私は「よくぞ聞いてくれた小娘!」というドヤ顔で語り始めた。
サクラ「温泉は魔王軍のモンスターへの福利厚生的な意味合いとなります。魔王軍にもたまには癒しが必要ですからね。」
サクラ「それに、ダンジョン周辺をモンスターの村にして、この村と繋げていけば──人とモンスターが共存する未来も、あり得るかもしれません。」
サクラ「もちろん、そのためには私たちが“安全で、有益な存在”として認識される必要があります。課題は山積みですけどね。」
エスト『ずっと真面目な話してるけど…うーん…誰だったっけ…この人…』
サクラ「黙って聞け!小娘がッ!」
エスト『……ああ!お姉ちゃんだ!!』
エスト様は満面の笑みを浮かべて私に抱きついてきた。
サクラ「ふふ。」
私はエスト様の頭を撫でた。
留守番が寂しかったのかな。
サクラ「話を続けますね。村側の工事は辰美と3馬鹿にやらせましょう。常闇のダンジョン側はワイトとサタンに。私は村長に話を通しておきます。」
エスト『わくわく☆』
サクラ「ちなみに辰夫は今のバイトを続行です。私たちの生活費が無くなってしまいますので。」
エスト『うん☆そうだね☆』
辰美「……え?魔王パーティーはバイト代で生活してるの!?」
辰美は帰りたいと思った。
(つづく)
\\次回予告!//
ナレーション「火竜を従え、仲間も増えて、帰ってきたサクラたち──」
エスト『え?温泉?工事?』
辰美「魔王軍にそんな使い方が……」
サクラ「福利厚生だよォ!!!」
──夜、月明かりの下に集まる魔王軍。
響き渡るのは……まさかの「コマネチ」!?
辰夫「なぜバイト帰りにスクワット……」
エスト『魔王軍☆闇夜に響くコマネチ!?』
サクラ「征服とは、まず“裸の心”を作ること!」
──次回!
#049 : 魔王軍☆闇夜に響くコマネチ
ナレーション「血と汗と湯気にまみれた、謎の残業タイムが始まる……!」
\\お楽しみに!//