#004 : 世界征服☆ツノは出たけど胸は出なかった件について
前回のあらすじ
→ シリアスな話でビックリした。
◇◇◇
少しずつ……今の私が置かれている状況が頭に入ってきた。
── 巷で流行りのアレだ。異世界召喚……?
(状況整理中)
「……ん?ん”ん”ッ?さっき、私の鬼の力がって言ったよね……!?」
「あのガチャでホントに人間じゃなくなってる!?」
慌ててベッドから飛び出す!
バッ! ドゴォォォン!!
「ひゃん!?」
床に直径3メートルのクレーターが開いた。
石の破片が四方に飛び散る。
「!?……ご、ごめん……?……床、陥没しちゃった!?」
「で、でも私、ただ飛び降りただけだよ……?」
近くの石柱に手をつくと……
ミシ……ゴリッ。
「え、えええ!?指の形に凹んだ……石柱が……」
「いやいやいや、どういう身体してんのコレ!!」
『私の魔力で作った身体……ごめん、盛り過ぎちゃった☆』
そうこうしてると、部屋の隅に鏡を見つけた。
(恐る恐る鏡を覗き込む)
「……え?」
顔はそのまま、肌、ツヤツヤ。目、パッチリ。
これOL時代の私より確実に5歳若い。
「マジ?転生ってスゲー!」
試しにポーズを決めてみる。決まる。
「やっべ!これで新しい人生──」
ふと胸元に目をやる。
「……あれ?」
もう一度胸を見る。
「……あれれ?」
手で確認してみる。
「……平原?」
そして頭の違和感に気づく。
「え?なにこれ?」
頭に手を当てると、硬い突起物。
「……ツノ?」
鏡をもう一度見る。
「……誰だよこのキャラメイクしたやつ……」
「こういうのって美少女巨乳になってさ!?」
「チートスキルを選べてチュートリアルとかあるけど!?」
「私、チートも何もない筋肉バグってるだけの美人貧乳鬼?」
『鬼だけに……鬼コース……かな?☆』
エストが困惑している。
「このツノ……なんの意味があるの? Wi-Fi 拾えるとか!?」
『わい……なにそれ?ツノはね?怒ると赤くなるし、恥ずかしいとピンクになるよ!それだけ!』
「それだけ!?感情バレバレじゃん!?」
『今はピンクだよ☆』
──天の声──
《サクラよ。お前の鬼引き──実に愉快だった。》
「おぃいい!またお前かぁあああああ!!」
「ん? いや待て。そもそも私は鬼になったんだよね?」
「それなのにエストが作ったことになってる?」
──天の声──
《転生ガチャで魂が鬼になったんだよ》
「ガチャ回してないけどな!!!」
──天の声──
《そこにエストの魔力で召喚され、同時に身体も作られた》
「へー?」
──天の声──
《本来は鬼として生まれ変わり、この世界に赤子で放り出されて【今度は鬼だ!ズンドコ!サクラさん☆異世界サバイバル 〜ドス恋♡相撲編 〜 】の予定だった》
「どこまで鬼畜なんだよ!あ!あぶねぇえええ!」(ドキドキ)
(沈黙)
── その瞬間、頭の奥でブチッと何かが切れた。
私の周りの空気が、ぎゅっと冷たくなる。
鏡に映るツノが、ゆっくりと赤く染まった。
この魔王が、身体を作った!?
ガンッ!! パリーン!!
鏡を叩き割って、私はガラスの破片を蹴飛ばしながら睨む。
『お、お姉ちゃん……ツノが真っ赤だよ……?』
「召喚時に身体を作ったって……言ったな?」
『う、うんっ!お姉ちゃんの魂が死にそうだったから!』
『魔力で肉体を強くしたの……大変だったんだよ?でも頑張ったの!』
「へぇ?……死にそうに?」
『で、でも!かっこいいよ!? 鬼だし!強そうだし!』
「そんな話なんかしてない!!」
『……ん”?ん”ん”……?』
「死にそうな私の”胸”に魔力注ごうとか思わなかった?」
『なんで!?』
「巨乳にしろよ!」(ツノが黒くなる)
『黒ッ!?』
「ラミアとかアラクネとかでも良かった!」
『その2種族、下半身が蛇と蜘蛛だけど……それでいいの!?』
「……。」(*ツノ=青)
『(青くなった?なんだろう)……ゴブリンやオークでも!?』
「えッ!?……そ、それは嫌かな……」(小声 *ツノ青のまま)
『5メートルの巨体でも!?』
「……い、いや……でございます……」(小声&敬語 *ツノ青)
『はい論破!結局見た目☆』
(静寂)
「私が納得してねぇんだから論破じゃねぇだろ!!」(逆ギレ中 *ツノ=どす黒)
(*20歳超えた大人です。)
『逆ギレ!?開き直った!?』
「だまれ……今の私に正論は届かない……」(ツノ=虹色)
[タグ] #混乱モード #召喚したらヤバい人でした #鬼レインボーモード
『虹!?そのツノどうなってんの!?』
『わ!私は!この世界で生きていけるようにしようとしたのぉ!』(正論)
「はぁ!?胸がありゃどこの世界でだって生きてけんだろぉがよぉ!?」(暴論 *ツノから湯気)
『湯気ッ!?この人なに言ってんの!?』
「転生してもAカップなのかよッ!!」
『え?召喚時の魂に書いてあったAって胸のことなの?』
「……は?何だと思ってたの?」
『筋力の……A?』
「筋力のA!?」
『だって鬼だから……筋力Aランクにしたよ……』
「Aランクじゃねぇよ!!Aカップだよ!!しかも最小サイズ!!」
『え?小さいの?』
「小さいよ!!」(泣きながら)
『ご、ごめん!筋力だと思って……』
『胸だったら……もっと大きくできたのに……』
「できたのかよ!!」(ちゅどーん!!*ツノ=大爆発)
『爆発したぁああああああ!?』
「……ふ……ふふ……」
「と、とりあえずさ?こ、この鬼の力を試してみようか?お前の身体でなぁ?」(ツノ=燃えかす)
「やっとチュートリアルが始まるな……小娘ぇ?」
(*サクラさんは20歳を超えた大人です)
(*読者の皆様、これが大人の対応です)
《理不尽は受け入れるな。拳で訂正しろ。》
── ムダ様のお言葉が私の頭の中に響く。
私は指をポキポキ鳴らしながら近づく。
『ヒィィッ……!』
エストが壁際まで後ずさり、小さな体を震わせる。
(*この時のエストの心境:やばい人召喚しちゃった)
『い……一緒に世界征服してくれたらさ!』
「ああ!?」
『き!ききき巨乳にできるかも……!?』
「ッ!?」
『た!たたた!たぶん……だからお願い、殴らないd』
私はエストの手を掴み引っ張ると──
「はじめましょう。魔王エスト様。世界征服を。」(*ツノ=ピカピカ)
『ツノまぶしッ!?』
── そのまま手の甲に誓いのキスをする。
『ひぃぃぃぃ……(Chu♡)……ん……?』
食い気味に心からの忠誠を誓ったのである──。
「……。」(ニコォ *目が笑ってない)
『……。』(つられてニコォ *ガクブル)
『……あは……』 「……ふはッ!」
『あ……あははは……』(どーしよう!この人…超怖い!)
「ふはははーふはははーッ!」(ツノがミラーボール)
[タグ] #真面目に読むと損する小説 #鬼ディスコ #ツノが本体濃厚説
『うわぁ!?まぶしッ!!』
バカ二人の笑い声が石造りのダンジョンに響き渡る。
(静寂)
笑い終わったあと、ふいに静寂が戻る。
ダンジョンの冷たい空気と、ほんのり残る余韻だけが漂っていた。
──こうして私たちの世界征服が始まったのである。
「ん……あれ……?なんで世界征服するんだっけ?」
『え?えーと……』
「え?えーと?じゃなくて!計画はあるの!?」
『け、計画?』
「計画!戦略!段取り!」
『だ、段取り……えーと……』
「まさか何も考えてない?」
『……』(目を逸らす)
「目ぇ逸らすな!!答えろ!!」
『ごめん……なんとなく……』
「なんとなく!?」(ツノ=パトライト)
『赤く光って回ってる!?』
──天の声──
サクラのツノの仕組みが分かったから解説しておこう。
・ピンク(恥ずかしい)
・赤(怒り)
・黒(激怒)
・青(困惑)
・どす黒(逆ギレ)
・虹色(混乱)
・湯気(沸騰)
・燃えかす(絶望・虚無感)
・大爆発(衝撃・絶望のピーク)
・ピカピカ(嬉しい)
・ミラーボール(大爆笑)
・パトライト(警戒)
まだまだあるかもしれないな!みんなも探してみよう!
────────
◇◇◇
「あッ!」
『ひぃッ!?』(ビクビク)
「鬼だけど、昔話みたいなアフロじゃなくて良かった!」
「もしアフロだったら今頃はエスト様もアフロでしたよ?血まみれのw」
『そ……それはなにより……』(ドキドキ)
(しばらく沈黙)
「あ、あと!虎柄ビキニが良かったです。」(ツノ = ピンク)
『なんで☆』
(しばらく沈黙)
「それと金棒はありますか?」(ツノ = 少し青)
『しつこい☆』
◇◇◇
私と、この子。
私たちが欲しいのは、きっと──居場所。温もり。
「また明日ね」や「おかえり」って言い合える相手。
本当は、巨乳になれるなんて最初から思ってない。
ただ、この子が必死で、放っておけなかった。
そして何より── “家族” という言葉が嬉しかった。
それは、何千回もクソだ!と叫び、それでも心のどこかで渇望してた “温もり” だった。
……家族なんて諦めてたのに。
もう一人で生きていくって決めてたのに。
この子の「一緒にいよう」って言葉が、凍りついてた心をじんわり溶かしていく。
……ずるいよ、ほんと。
……でも、そんなの絶対言わんけどね。
また恥ずか死するわ。
…………あの時、エストは「家族」って言った。
そんなの要らないって、千回は叫んだはずなのに。さ?
世界征服?やってやるよ。(ツノ = 虹色)
──
それにしてもこのツノ、変な感覚……頭の奥がギシギシする。
でも──なぜか、嫌じゃない。
(つづく)
\\次回予告!//
ハニトラ作戦──それは乳・尻・太ももで勇者を落とすはずだった!
だが、立ちはだかったのは勇者ではなく……冷蔵庫!レンジ!洗濯機!新聞!救急車!?
次回、
#005 : ハニトラ☆冷蔵庫ブン!レンジチン!洗濯ピーピー!救急ピーポー!新聞スタタン!
\\お楽しみに!//
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】:0.0001%
【支配地域】:魔王の間(仮)
【主な進捗】
・魔王と家族契約成立
・世界征服開始
【特記事項】:
・ツノは出た。胸は出なかった。納得いかん。
・20歳を超えた大人が子供に逆ギレするところを目撃
・巨乳への執念、確認
◇◇◇
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『理不尽は受け入れるな。拳で訂正しろ。』
解説:
この世は理不尽に満ちている。
望んだ結果が得られないこともある。
しかし、それを嘆く暇があれば殴れ。
現実は拳で書き換えるものだ。元気か?