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魔王がポンコツだから私がやる。 ──恥ずか死した私の黒歴史。  作者: さくらんぼん
第03章 : 厨二病聖女ツバキだ…左目が疼く…
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#033 : 教祖伝説開始 † 私が神になる

挿絵(By みてみん)

── 私は今日も聖女だった。

望んでいないのに、崇められている。


拒めば「悪魔め!神罰が下るぞ!」と脅され、

うなずけば「さすが聖女様」と持ち上げられる。


(どうしてこうなったの……誰かたすけて……)


──だけど私は、昨日、覚醒した。


左目から放たれた光と、心に刻まれた言葉──


ツバキ『神よ…その手が差し伸べるのなら、俺の影まで抱きしめてみせろ。── Contradiction.』


神アニメ『堕光のカイ』の主人公カイ様が第十話で言ったセリフ。


アニメのセリフたけど、今の私にとっては、本物の祈りだった。


ツバキ「我が眼はすでに覚醒している……」


私はいつものように、カイ様の言葉を呟く。


誰に聞かせるわけでもなく。ただ、自分に言い聞かせるように。


右目を閉じ、左目に力を入れる。


ツバキ「万象よ、黙して我が視線を浴びよ。灼き尽くすは理、そして秩序。我が名はツバキ……灼瞳の神子。世界を燃やし、神を嘲る──」


ツバキ「なーんて。出るわけ……」


ビーーー♡



挿絵(By みてみん)

[挿絵]【黙示録インシデント : 神託か誤射か。その日、世界は焦げた】



ツバキ「……デタ……」


──やっぱり、ビームが出た。


焦げる音とともに、部屋の一角が明るく染まった。


本棚に並べられた古びた聖典──歴代の聖女の教えを記した“光の契約録”が、一瞬にして焼け落ちていた。


ツバキ「……あッ!」


私は思わず駆け寄る。左目がじんわりと熱を帯びている。


ツバキ「やっば……!!」


灰と化した革表紙が、パラパラと床に崩れ落ちた。


(怒られる、絶対怒られる……!どうする!?どう言い訳すれば!?)


だが、私の背後で。


ローザ「……聖女……様……?」


低く震えた声がした。


振り向くと、朝食の支度をしていた侍女のローザが立ち尽くしていた。

目を見開き、胸元の十字を強く握りしめながら。


ローザ「今のは……光の裁き……!」

ローザ「旧き契約を焼き尽くす、“新たな啓示”……!」


カエデ「ちょ、いつから見てたのッ!?……恥ず……って違、あれは、ただアニメの──」


ツバキ「いえ、あの詠唱……間違いなく神託でした!“我が眼はすでに覚醒している”その一節、書き残してもよろしいでしょうか!?」


ツバキ「ぎゃあああ!聞かれてたああ!恥ずかしいい!!!」

私は頭を抱えてブンブンした。


ローザ「申し訳ありません!!今すぐ筆録隊を呼んできます!!」


ツバキ「待って!?そんなの呼ばないで!?!?」


バタンッ!!


ローザは全力で走っていった。

扉が閉じた瞬間、残された私はただ、呆然と立ち尽くした。


──


静まり返る部屋。


床には、黒く焦げた本の残骸と、世界が変わる気配だけが、残っていた。


私は小さく呟いた。


ツバキ「……これ……普通にやばいな……」


◇◇◇


あれから、どれだけの時間が経ったのだろう。

私はひとり、部屋の隅で膝を抱えていた。


(お願いだから誤解であって……いや、あの勢いはもう……教義にされてる未来しか見えない……)


心の中でカイ様に祈った。

でも帰ってくるのは静寂だけ。

天井が高い。逃げ場がない。


──ガチャ。


ローザ「聖女様ァァーッ!!」


ローザが凄い勢いで帰ってきた。


ドアを開けたままスライディングで膝をつきながら報告してくる。


ローザ「ただいま!カメリア聖典 第一章の筆録が開始されました!!」


ツバキ「カメリア!?良い名前だけど!!!」


ローザ「すでに数名の修道士が、御言葉を複写中です!」


ツバキ「御言葉じゃないの!!あれはただのノリなの!!日常テンションなの!!」


ローザ「では!第一章、冒頭の一節をお聞きください」


ツバキ「この人!話しを聞かないタイプ!!」


ローザ「『我が眼はすでに覚醒している……黙して視線を浴びよ。

灼き尽くすは理、そして秩序。』」


ツバキ「うわああああバッチリ記録ぅううううう!?」

「やめてえええええぇぇぇぇぇ!!」


私は床にのたうち回った。


ローザ「次に第二節──『世界を燃やし、神を嘲る──灼瞳の巫、ここに在り。』」


ツバキ「これも記されるの!?恥ずぅうあううううう!」


私は床に何度も頭を叩きつけた。



(とりあえず椅子に座って落ち着こう……)


──ガタンッ!


足元の焦げ跡で椅子の脚がズルッと滑り、お尻を強打!



ツバキ「ッッッ……!!(声にならない)……っはぁ……」


私はお尻を押さえてうずくまった


ツバキ「いったぁ……! 闇に堕ちた者は光を求める……だが私は、闇に腰を据えようと玉座を求めて腰を落としたら、そこにあったのは虚無──臀部に運命の審判が下された……」


……はっ。

やべ、ついカイ様のセリフ、口に出してしまった!


ツバキ「あっ、今の忘れて!!アニメのセリフだから!!」


ローザ「聖女様……!なんと深遠な啓示……!」(目を輝かせ、両手を胸に当ててプルプル)


いや、違う違う違う。これはただのオタクの口癖で──


ツバキ「いやいやいや、これ絶対誤解されるやつ!!」


ローザは目を輝かせ、腰に下げた小型ベルを鳴らした。


シャラン♪ シャラン♪ シャラン♪


ローザ「修道士!【カメリア聖典 第一章・第三節】の筆録を開始します!!」


は?第三節?もう二節まで終わってたの?早くない?


修道士たちがぞろぞろ入ってきて、羽ペンをカリカリ走らせ始めた。


ローザ「これは“座の無き啓示”として記録します!記せ!『闇に堕ちた者は光を求める。しかし聖女は闇を玉座とし、虚無の座に腰を落とし、臀部に神罰を受けた』!」


修道士「……崇高……!」(羽ペンを落とし、両手を合わせる)


ローザ「さらに追記──『臀部の痛みこそ魂の浄化なり』!」

修道士「かしこまりました!」(カリカリ…)


ツバキ「いや違うってば!ただお尻を打っただけなの!!」


……こうして、カイ様の中二セリフは、“座の無き啓示”として、しっかりカメリア聖典に組み込まれてしまった。


おそらく未来永劫、削除されることはない。


◇◇◇


── 私は、知ってしまった。


この世界では、ノリで発した中二ワードが宗教になる。


侍女は震える指で巻物を開き、うっとりと目を細めた。


ローザ「……聖女様の御言葉は、美しいですね……」


ツバキ「あなたさ!もっと人の話に耳を傾けようよ!?」



──そしてその日。



私の“日常語録”は、カメリア聖典 第一章として正式に聖堂へ奉納された。


左目のビームは「ホーリービーム♡」と呼ばれた。


ツバキ「ダサッ!?名付けセンスぅ!?」


──こうして私は、完全に誤解されたまま、本物の聖女として崇められていく。


だけど、いい。本当の私は、知ってるから。


私はただのツバキ──


でも、今は「聖女ツバキ様」って呼ばれてるからには──やるしかない。


(サクラなら……きっとこうやって開き直るだろうしね。ふふふ……はぁ……)


この世界の神が偽物なら──私が、神になる。


(ああ、カイ様。私は……今、確かに、あなたの影を受け入れた)


──聖女ツバキの教祖伝説が始まった。



(つづく)



◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】:該当外

      征服そのものは進んでないが、信仰勢力による誤解が暴走

【支配地域】:カメリア聖堂

【主な進捗】:

・左目ビーム

  *正式名称:ホーリービーム♡)が聖なる奇跡として定着

・侍女ローザの誤解と熱意により、「カメリア聖典」編纂が爆速進行

・ツバキ、否定も逃走も間に合わず、聖女・教祖として覚醒

・中二ワード、詠唱、ビームが三位一体となり、宗教誕生


【特記事項】:

・ツバキ、信仰対象になってしまったが本人はずっと床を転がっている

・ローザの記録力と解釈力が異常に高く、誤解を確定事項へと昇華

・「神になるしかない」という選択肢に割とノリで首を縦に振った

・信徒数:現時点で5名、だが“教義の濃度”が異様に高い


◇◇◇


──【今週のカイ様語録】──

『闇に堕ちた者は、光を求める。だが俺は、闇に腰を据えようと玉座を求めて腰を落としたが、そこにあったのは虚無──臀部に運命の審判が下された。(つまりケツ強打して痛ぇ)』


【カメリア聖典 第一章・第三節・座の無き啓示】

ツバキ様は語った──

「玉座を探す者は多い。だが、尻で世界を悟った者は少ない」

よって正座は神意。椅子は反逆。死刑。ケツも痛い。


ツバキ「言ってない!言ってない!」

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― 新着の感想 ―
 ホーリービーム❤️_:(´ཀ`」 ∠):  突っ込まないぞぅwww  腹が捩れて突っ込めないぞぅwww  
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