#023 : 最強魔王軍爆誕☆魔王・勇者・竜王=地獄の闇鍋パーティー
前回までのあらすじ
→ サクラがうるさかった。
◇◇◇
そして地面にめりこんでいるドラゴンの眼に刀を向けドラゴンを見下ろすと、憧れの最高に厨二っぽい言葉をドラゴンに放った。
サクラ「あはは!トカゲぇ?……チェック!メイちょ……ぁ……ょ…」
(沈黙)
ドラ「まさか…ここで…最高の見せ場で…噛んだ…?」
サクラ「……ふ…ふふふ…戦う私は…美しい……。」
ドラ「ご、誤魔化した!?ぐぅぅ…なんという心の強さだ…。」
サクラ「おいおいおいーおぃいー?どぅしたぁー?」
「もう終わりなのかぁー?くはは…げははははは!ぶひーぶひーぶひー!」
ドラ「ヒロインの笑い方ではないな……くっ……まさか光魔法だと……?」
「……鬼が勇者……なのか?なぜ魔王と一緒にいる?」
サクラ「ぶひー?まだ続けるのかな?かな?かなーッ?」
「かなーかなッ かなッ かなかなかなーッ!www」(興奮冷めやらぬ中)
ドラ「……そしてサイコパスなのかな……怖すぎる……」
サクラ「色々あってね……私は勇者ってやつみたいね。」
「……私はこの小娘が大好きなのよ。……妹みたいなものだと想っている。だから全力で守る。」
ドラ「……ふ…良いだろう。我の負けだ。魔王の怪我の治し方を教えてやる。」
サクラ「あ!それから配下になりなさい。」
ドラ「は……ぃ?」
サクラ「配下になれと言ってるのよーッ!」
私は刀をドラゴンの眼の前でぶんぶん振り回した。
ドラゴンの目の前で刀の風切り音がピュンピュン!と鳴り響く。
ドラ「……ちょッ! 刀……危なッ!?」
「……ふははははは!面白い!気に入った!」
ドラ「勇者と魔王が一緒にいるだと!? さらにはこの竜王も従える?
「これは非常に興味深い。とても面白い事になりそうだ!」
「良いだろう!魔王の配下になってやるわ。」
サクラ「いやいやいや!バカなの?」
「エスト様の配下じゃなくて、わたしよ。わ・た・し。」
ドラ「ん……ぁ…?」
ドラゴンは考え込んでいる。
サクラ「私に負けたんだから、お前は私の下だろうが!」
「弱肉強食だろ?舐めんなトカゲ!おいコラ!トカゲーッ!」
地団駄を踏みながら刀をドラゴンの眼の前でめちゃくちゃに振り回した。
刀の風切り音がピュピュピュン!と鳴り響く。
風圧でドラゴンのまつ毛が揺れた。
ドラ「刀……危なッ……ちょ!眼はやめてください!!今のは危なかった!」
サクラ「おいどうなんだよトカゲ!」
ドラ「……あれ……?この人……前回…… 靴を舐めて謝ろうと思いましたが靴を履いてないから爪でも良いですか! って…泣きながら命乞いした人ですよね……?マウントを取るとこんなにも変わるのか…?」
サクラ「おい聞いてるのか!トカゲ!」
(……狙うか)
刀の風切り音──ピュンピュンピュンピュンピュンッ……サクッ(鼻をかすめた)
ドラ「鼻ァ!!……わ、わかりました……」
サクラ「よし。よろしい。」
「あ、言っとくけど、私が勇者だとエスト様に喋ったら……」
「お前の尻尾が何回まで再生できるのか確認するからな?楽しみだな!?」
ドラ「は、はい……」
サクラ「よし。私の名前はサクラよ。これからよろしく。」
ドラ「はい…。」
私はニッコリ微笑むと刀を収めた。
その私の姿をドラゴンはしばらく見つめていた。
その視線に、少しだけ、懐かしさと……哀しさが滲んでいた気がした。
ドラ「……ユズリハ殿……」
その言葉に、私は思わず眉をひそめる。
サクラ「は?何それ? 私のことじゃないわよね?」
ドラ「……いえ、失礼しました。少し、記憶が混ざったようです」
でもまあいい。今、見てるのは私。
私に従うってんなら、それで十分だ。
…
サクラ「お前の名前は?」
地面にめりこんでいたドラゴンが起き上がりながら言った。
ドラ「我の名は リンドヴルム です。」
サクラ「うん。ヴが言いにくい!辰夫な!」
辰夫(New)「我の名前は誇りある──」
サクラ「辰夫な!はい終わり!次!」
辰夫「えぇ……」
そんなこんなでドラゴン(竜王)の辰夫を配下に従えた。
── その時である。
(♪テレレレッテッテッテー)
【サクラのレベルが205に上がりました】
【新スキルを習得しました】
・格闘
・刀技
【新称号を獲得しました】
・竜王を従えし者
【エクストラスキルを習得しました】
・光の加護(※なぜか習得できた)
【スキル進化】
・怪力 → 熟練度上昇により《肉体強化》へ派生!
《天の声:お!スキル進化もできるぞ!やるか?やろうぜ!》
【進化候補】
・スキル《体温調節》:進化可能です。
・スキル《冬眠》:進化可能です。
《なお、私含めてみんな望んでます。面白そうだから》
サクラ「誰が進化すんだよバカァ!!出てこい天の声!!」
やたらと煽ってくる天の声にツッコミを入れている私を見つめながら辰夫は怯えていた。
サクラ「そんな事より辰夫!エスト様の怪我の治し方を教えなさい。魔王に光の回復魔法はダメなの?」
辰夫「は、はい!……光の魔法は魔王の肉体に害をなします。ですが——」
辰夫は真剣な顔で続けた。
辰夫「我の負の魔力なら、魔王種の身体に調和します。治癒の効果を発揮できるはずです。」
サクラ「ブレスで治すの?」
辰夫「いえ……ブレスは破壊の力。危険すぎます。」
「我の魔力を直接、魔王様の傷に流し込みます。それが最も安全です。」
サクラ「なるほどね。やっぱりそんな感じなのね。では辰夫!最初の命令よ!エスト様に魔力を!」
「はい。」
フォオオオオオ……
辰夫は両手をエスト様の傷口にかざした。
禍々しい黒い魔力が、まるで夜の霧のようにエスト様を包み込む。
エスト様の傷を覆った瞬間──傷口がまるで時間を巻き戻すように閉じていく。
エスト(寝言)『ぅ……ん……むにゃむにゃ……うるさい……』
サクラ「良かった…。これで一安心ね。」
辰夫「そうですな。じきに目を覚ますかと。」
ホッと胸を撫で下ろした私は、その場に座り込んだ。
サクラ「はぁ…疲れた…ぁ……」
(魔王に光は毒みたいね。私は何なんだろ?まぁ光も闇も、魔王も勇者も。全部まとめて、私が“上”ってだけの話かな。)
── こうして、前代未聞の魔王と勇者と竜王のパーティーが誕生したのである。
(つづく)
※次回!エスト様が復活!?そしてダンジョンの攻略開始ッ!?
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】 :0.6%
【支配地域】:竜王リンドヴルム(通称:辰夫)/ 常闇のダンジョン100層
【主な進捗】:異世界初のドラゴンにドラゴンスクリュー成功。
竜王を配下に加え、エストも無事回復。
【特記事項】:ムダ様の夢が叶った。
配下の名付けセンスは崩壊中。
◇◇◇
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『ドラゴン・スクリューってな?倒す技じゃない。証明する技だ。俺はここにいるってな。』
解説:
ムダ様がサクラに残した、最も大切な言葉。
たとえ負けても、土下座しても、この技をキメる限り俺たちは「ここにいる」と言える——。