#002 : 鬼引き☆異世界ガチャ開幕
前回までのあらすじ
→ カップルは悪くないと思います。
◇◇◇
── それから、どのくらい時間が経ったのだろう。
━━ SYSTEM LOG ━━
《死亡確認:佐倉 桜(享年22歳)》
《死因:恥ずかしさによる心停止》
━━ END LOG ━━
\\ポーン♪//
━━ SYSTEM LOG ━━
《異世界転生システム起動》
《死因:羞恥心過多》
《補正:恥耐性 +∞》
《特典:女子限定ガチャ(KS含む)》
《注意:転生後の苦情は受理しません》
━━ END LOG ━━
◇◇◇
気がつくと、真っ暗な見知らぬ空間。
目の前には巨大なスクリーン。
「えええ!?ここどこ!?映画館!?」
(熟考)
「死亡確認?享年?……やっぱ夢じゃなかったかぁぁぁ!!」
「心のどこかで夢だと思ってたぁぁぁ!!」
「……あんな理由でぇえええ!?」
「恥ずかしくて死ぬとか恥ずかしすぎる!!!」
「私の黒歴史、世界配信されたまま人生(物理)終了ってマジかよ!?」
「で、これも……夢だよね……?」(現実逃避)
《天の声》
落ち着け。そうだ。もう死んでる。
今は魂みたいなもんだ。
「やっぱり私……死んだんだ……?」
(沈黙)
「えぇ……マジか……」
「嘘だ……嘘だ……なんで私ばっかり……」
「……良いことなかったな……私の人生……」
《天の声》
お前、凄いぞ。世界はオータニさんとお前の話題で持ちきりだ。
事件現場とお前の家が聖地化で観光地になった。
「オータニさんと肩並べたの誇らしすぎるけど!?」
「凄いけど恥ずかしすぎるぅううう!?」
《天の声》
まぁ、もう過ぎたことだ。切り替えろ。
ここから異世界転生の始まりだ。
異世界での新しい身体と能力を授ける。
「いやいや、異世界転生って、流行りのあの……?」
《天の声》
“恥ずか死” の初ケースとして、特別に女子限定ガチャ許可!
さぁ引け!そして生まれ変われ!
════════════════════
▼転生対象の超・異種族祭り限定種族
☆UR:ヴァンパイア Hカップ (4.999%) ← 確率UP!!
SSR:人魚 / Gカップ (10%)
KS:鬼 / Aカップ(0.001%) ← NEW!!
*KS=KUSA。引いたら草。以上。
もちろん!人魚/アラクネ/ラミア等の人気種族も多数排出!
[挿絵:女種族限定ガチャバナー/#鬼だけ異物感MAX #やべーの居る #右www]
*転生後の苦情は受け付けません。
*読者の皆様も、ガチャは計画的に。
════════════════════
ガチャのバナー画像を見ると、優雅な美人種族たちの横で、ひときわ異質なマッスルな鬼が仁王立ちしている。
「……。」(一度見)
「は?」(二度見)
「女子キャラ限定……?」(三度見)
「マッスル鬼の存在感が異常!!」(四度見)
《天の声》
では、ガチャを回そう。
「いや!待て!鬼がフラグにしか見えない!!」
(頭の整理が追いつかない……)
\\ ♪ ぐるるるーん!どん ♪ //(*ガチャが回された)
「え……私……引いてないよ……!?」(ガクブル)
──
《ガチャ演出中……》
\\ドガァン!//【★★★★★確定演出★★★★★】
『天空に舞い踊る女神たち、黄金に輝く竜にまたがるヴァンパイア──!』
『選ばれし魂よ、新たなる運命の扉が今、開かれる!』(虹テロップ)
[挿絵:確定演出イラスト/#確定きた #こんにちは巨乳]
「なんか凄い演出きたー!」
「ヴァンパイアがドラゴンに乗ってるぅ!!」
「憧れの巨乳ライフ確定ィ!!ひゃっほーい!」
(*大当たりと見るや即ノリノリ。これが汚れた大人。)
──しかし。
パッ!
突然、背景が草原に変化
「あれ……草原?」
[挿絵:唐突な草原カット/#ガチャ演出中]
↓
スゥ……(神々しいSE)
“段ボール箱” が神々しく降りてくる。
「みかん箱が神々しく降臨してるんだけど!?」
[挿絵:神々しい段ボール箱降臨/#神々しい段ボールというパワーワード #URの予感]
↓
“段ボール箱” が草原に静かに着地。
(……沈黙)
私は草原に佇む段ボール箱を見つめる。
── URヴァンパイアだ……間違いない……!(ドキドキ)
「……。」(ゴクリ)
[挿絵:草原に置かれた段ボール箱/#ここまではURある #諦めるな]
↓
段ボール箱から──
……ツノが出た。
\\ ニュッ。 //
[挿絵:段ボールから出るツノ/#ツノ出てんぞ #URの可能性ない #諦めろ]
…… 一瞬の静寂。
心臓が嫌なほど早く打つ。
「ま、まだだ……まだ分からない!ヴァンパイアが舞踏会とかでこういうツノを付けてる説ある……!」(全力で自分を騙す私)
↓
段ボールから、マッスル鬼が生えた。
\\マッスルッ!//
[挿絵:マッスル鬼登場カット/#鬼引き #さようなら巨乳 #こんにちは筋肉]
──ここで人生二周目が終わった。
「…………。」
(全てを察した沈黙)
……手が震える。
視界の端で、さっきまでの虹色がゆっくり色を失っていく。
胸の奥に冷たいものが広がる。
終わったの?
私の人生、二周目が始まる前に終わったの?
《天の声》
おめでとう!KS 鬼(Aカップ)0.001% を見事に引いたな!
「……へぇ?あの身体がどうやって段ボール箱に?」(天井のクモを見つめる私)
「…………」(震える手で髪の毛を一本つまみ、枝毛を発見)
「…………四つ葉の枝毛発見……ふふ……幸せの予感?」(四葉の枝毛=幸運の錯覚)
(沈黙)
(違う!今はそれどころじゃない!)
(深呼吸)
「……って!巨乳来たぁ!……からの鬼かよォ!!!」
「やったなじゃねーよ!やってんなお前ーッ!?」
「いや、待って?マジで0.001%引いたの?」
「……私、あのマッスル鬼みたいに……なるの?」
(沈黙)
「夢よ、夢……絶対夢……起きたら巨乳になってるはず……」
《天の声》
文字通り “鬼引き” ワロタwww
「笑ってんじゃねぇぇぇ!!」
《天の声》
現実を受け入れろ。お前は “鬼” に転生した。
ツノが出た。……そして胸は、出なかった。
「嘘だと言ぇえええええ!!」
《天の声》
これは『進化』ではない。『淘汰』だ。
「こいつぅうううううう!!!」
《天の声》
文句は拳で語れ。それが鬼の流儀だ。
「いやだから流儀とか知らんし!」
「まずはお前を拳でぶん殴るから覚悟しろ!」
《天の声》
よし!その意気だ。それでこそ鬼だ。
「前向きぃいいい!?」
《天の声》
……あ、そうだ。
異世界でお前にやってもらいたいことがある。
でも今は言わない。いつか話す……たぶん忘れたころに。
「お前の言うことなんか聞くかよッ!!!」
(────異世界転生、開始。)
「待て待て!──待て!!!」
「ふざけんなよ!詐欺だ!消費者庁!国民生活センターさぁぁん!?」
「……さぁぁん!?」
「……ぁん!?」
「……!?」
「…」
(……もう、どうでもいいや)
(どうせ私の人生なんて、最初からこんなもんだった)
(一人で生きて、一人で死んで……)
──ふと、昔の記憶がよぎる
(……おばあちゃん……)
(家族……やっぱり欲しかったのかな……)
(でも、もう遅い。全部終わったんだ)
(もうどうにでもなれ……)
その時、胸の奥で何かが共鳴した。
同じ寂しさを抱えた誰かの呼び声のような──
(……え?この感覚……誰かが私を……?)
その瞬間、世界が──ズレた。
視界がぐにゃり。
体が圧縮、吐き気。
白目+泡(※ヒロインです)。
── 世界が光に包まれた。
………
……
…
──そして。
???『 ……お姉ちゃん!起きてよ? 』
目を開けると、赤い瞳の幼女がちょこんと座っていた。
この子、ツノ付き。……魔王?
サクラ「え、ここ異世界? てか妹ポジションって何!?」
こうして、恥ずか死した女の異世界生活が始まった。
最悪の転生が、最高の冒険になる──かもしれない。
(多分ならない)
◇◇◇
運命と戦うこと、それはずっと拾い直すこと。
人は何度も “見えないガチャ” を回し続けてる。
ガチャの結果も、家族の温もりも、いつもハズレ。
だけど “もう一度” を夢見て拳を握る。
それがきっと一番 “人間” で、一番 “面白い” とこ。
異世界でもきっと、見えないガチャを回し続けるんだろう。
外れたら拾い直せばいい──鬼でも、Aカップでも。
(つづく)
\\ 次回予告 //
突然魔王から告げられた衝撃の言葉──
『お姉ちゃんは家族なんだよ☆』
笑い飛ばせるはずの現実が、心に妙な影を落とす。
姉と妹。血は繋がらずとも、呼び合うその響きは、どこか懐かしくて。
次回──
#003 : お姉ちゃん☆魔王が妹な件
「涙と笑いがすれ違う、その境界線で──物語は動き出す。」
\\ お楽しみに。 //