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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第01章 : 恥ずか死お姉ちゃんとポンコツ魔王の転生録
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#002 : 転生しても恥は残る。──死因:恥ずか死からの再就職。

挿絵(By みてみん)

前回までのあらすじ

→ 恥ずかしさに殉じた女、佐倉 桜。

その魂は、いまも夜の住宅街でファイティングポーズを取っているという。(都市伝説化)


◇◇◇


【現在地】生と死のあいだ(無音の中間地帯)

【視点】サクラ

【状況】死後、魂だけの存在になっている


◇◇◇


ムダ様の声が消えて、静寂が残った。

闇の中で、音が吸い込まれていく。


“恥ずかしい?笑わせるな”──その言葉だけが、胸の奥にこびりついてる。


……変だね。


あんな恥ずかしい最期だったのに、ムダ様の声だけは、ちょっと温かかった。


……ほんと、ずるいよね。


それが、転生のきっかけになるなんて、思ってもみなかった。



──そして今、私は暗い空間に居る。


再度、周囲を見回す。


やっぱり、誰もいない。


もう、ひとりはいやだ──。


(静寂)


……暗い。静か。

でも、自分の存在だけが、ほんのり光ってる気がした。


「……だれか?」


自分の声だけが、やけに響いた。


「……いないのかな」


『恥ずかしくて死にそう』

なんてよく言うけど


本当に死ぬ奴なんて……ここにいました。


はは……まあ、私らしいっちゃ私らしいよね。


まぁ、最期まで推しのために全力だったんだから、それはそれでいいじゃん?


恥ずかしかったけど、後悔はしてない。


……でも、最後まで一人きりってのは──


ちょっと寂しかった。


……ちょっとだけね。


(やりきった良い顔で微笑む)


──静寂。


ふふ……まったくねぇ。やんなっちゃうよねぇ。



すぅ……(大きく息を吸う)


……ぅぅぅ………………(まだ吸う)


……………………………………ッ!!(ピタッ)



喉の奥に熱いものが込み上げる──。



「──う、うう!うううー嘘だよぉおおおおお!!」


(じたばた じたばた)


「後悔しかないよぉおおおーッ!!」


(どたばた どたばた)


「ムダ様ごめんッ!!やっぱり恥ずかしいよぉおおおおお!!」


「港区女子♡ってさぁ! 夜景バックに、飲んで良いのか分からない色のカクテル持ってる写真、SNSに上げてみたかったよぉおおお!!」


(ごろごろごろ)


(深呼吸)


(赤面)


(言うぞ……)


(言っちゃうぞ……!!)


「ボウズヒゲマッチョのカレピッピ欲しかったよぉおおお!!」


(……よし!)


(あ、あと!これも言っちゃうんだから!!)


(……)


「……あと、ち、ち、チュー……」(耳たぶまで真っ赤)


「チュー、してみたかったんだよぉおお!!!」

「きゃー言っちゃったぁああああああ!!!」

(両手で顔を塞ぐ)


「きゃー!!きゃーーー!!」

「恥ずかしいぃぃぃぃぃぃ!!」


(ドタバタ ドタバ──)


《天の声:うるせー!!》


── え?


「……だれ?今の聞いてたの!?忘れろ!!今の全部、即削除!!」


《天の声:サクラ。お前死んだぞ。死因は「恥ずか死」だ。》


(……)


「……知ってる」


「ねぇ?」


《天の声:なんだ?》


(……)


「私……ほんと、恥ずかしかったんだよ……」


《天の声:恥ずかしい? それはお前がまだ死んでない証拠だ。誰かと繋がってる限り、人は死なねぇんだよ。……だからお前はまだ終わってない。》

 

サクラ「今、死んだって言っただろ!?」


《天の声:お前の脳じゃ理解できんか。まぁいい。世界は二刀流のオータミかお前の話題で持ちきりだ。誇れ。》


「オータミさんと肩並べてるの誇らしいけど!?」


《天の声:それより港区女子?SNS?お前のSNSのフォロワー全員業者だろ。》


(やった!フォロワー増えた!→業者か……の記憶がフラッシュバック。全5回分。)


「……やめろッ!!」(怒号)


(空気が一瞬止まる)


《天の声:……。》


「そういう柔らかいところに触れるのマジでやめろ!!」


《天の声:ホントすまん。》


「そういうとこだぞ!!」


(間)


《天の声:あとお前、県民──》


(ピキッ)「……おいッ!!」(真顔)



(沈黙)



《天の声:……魔王が召喚してる。》


(魔……?)


「は?」



《天の声:お前の転職先は「魔王軍」な。》


「魔王軍に転職?何それ!?令和のOLに何言ってんの?」



《天の声:あ、あと種族は「鬼」だ。召喚時に魔王が血の代わりにココアを使ってる。それが関係あるかは知らん。》


「……鬼?ココア???」



《天の声:とりあえず魔王のところに行ってこい》


「いやに決まってるでしょ!?」



《天の声:転職活動だと思え。》


「人生の!?やだよ!!」



《天の声:はぁ……じゃあ本来の転生ルートにするか?》


「え?他にも選択肢あるの?」


まさかの転職メニュー方式。

それなら条件の良い方を選ばせて欲しいよね。



《天の声:本来の転生ルートは異世界に赤子で放り出されて【今度は異世界!ズンドコ!サクラさん☆異世界サバイバル 〜ドス恋♡相撲編 〜 】だな》


(ん?)


(……ドス恋?……相撲?……赤子で?……金太郎かな?)


(脳内で行司が「はっけよい!」)


《天の声:あとはそうだな。次の転生先に小籠包ってのもあるぞ》


(んん?)


「点心!?」


(脳内で肉汁を想像中)


「……もはや生命体じゃない!?」


《天の声:熱い想いは生きている》


(……爆発した。脳内で肉汁が)


(脳の処理速度が……ぜんぜん追いついてない)


(魔王?ズンドコ相撲?点心?どれが正解?)


(……)


「まままっ!魔王ーーーッ!!早くぅ!! 私を召喚しろぉおおお!!」


《天の声:仕方ないから魔王のとこで頑張ってこい》



(────異世界転生、開始。)


(……おいぃ?決定?)


「待て待て!──待って!!」


《天の声:……なんだ。》


「まだカレピッピチューの件がぁぁあ!?」



《天の声:……そこ?》


「未練は叫べ。ずっとフラバするんだよ。あの焼肉が。だから叫べ。それが供養だ。──ってムダ様も言ってたのよ!」



《天の声:……誰だよムダ様。》


「推しだよ!!」(キリッ)



《天の声:うるせー!!ズンドコするか?》


(!?)


「……魔王様!今行きます!魔王様万歳!」(最高に良い姿勢)


《天の声:さぁ異世界だ。四股を踏んで頑張れ!餃子に負けるなよ》



(四股?ドスコイ?ズンドコ!!餃子がライバル!?点心!?)



「ちょっと待て!!ズンドコはやだよ!?点心やだよ!?!?」


《天の声:……。》



── 返事はない。



「おぃい!既読スルーすんなよ!!なんか言えよぉおお!?点心は食べるものぉおおおおお!?」



その瞬間、世界が──ズレた。



「おいぃぃぃぃ!?」


視界がぐにゃり。


「ふざけんな!小籠包食べたくなったじゃねーかぁあああ!?

新しい未練だコレぇえええ!!」(現世最期の言葉)


── 笑いながら、涙がこぼれた。


(……あぁ、バカみたい)


やがて、世界が光に包まれた。


光の中で、ココアの香りがした。


(ココア……?正直、今は酢醤油の口だけど……)


甘い。寂しい。

──それでも、温かい。


(ムダ様……やっぱ、私……笑ってるよ)


静寂の中で、微かに息が溶けた。


──その香りは、まだ少しだけ甘かった。



◇◇◇



(……なんか、ココアの匂いがする……私から?)


(よかった……とりあえず点心ではなさそう?)


(頭に……硬い。ツノ?)


(体が……軽い?)


(胸元に手を当てる)


胸……相変わらず軽い。


繰り返す。ツノ出た。胸軽い。


(間)


(……転生しても、AはAか。)


\\なんでぇ!?ツノは出たのに、胸が出てない!?//


《天の声:うるさい。落ち着け。》



\\死んでツノ生えて!?胸は!?どういう転生ルート!?//


《天の声:それは”進化”じゃなく”淘汰”だ。》



\\なにぉお!?こいつぅううう!!!//


《天の声:詳細は魔王に聞け。》



\\ふざけんなよ!消費者庁!国民生活センターさぁぁん!?//


《天の声:異世界にそんなものは無い。》



◇◇◇



── そして。



???『 ……お姉ちゃん!起きてよ? 』


目を開けると、赤い瞳の幼女がちょこんと座っていた。


この子、ツノ……?


……魔王?


「え、ここ異世界? てか妹ポジションって何!?」


こうして、恥ずか死した女の異世界生活が始まった。


最悪の転生が、最高の冒険になる──かもしれない。


……多分、ならない。



第二の人生。


今度は恥ずかしい思いはしたくない。


……どうせなら笑って死にたい。


そして──今度は、一人じゃなきゃ……いいな。



(つづく)


◇◇◇


──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──


『未練は叫べ。ずっとフラバするんだよ。

  あの焼肉が──。

   だから叫べ。それが供養だ。』


解説:

未練を我慢するな。

吐き出さなかった後悔は、一生フラッシュバックする。


カレピッピ? 叫べ。

チュー? 叫べ。


黙ってたら、50年後も夢に出る。

ちなみに俺は18の時、焼肉食べ放題で遠慮した。


今でも夢に出る。カルビが。

呼んでるんだよ。カルビが。


未練は消えない。だから最初から叫べ。

恥? 知るか。フラバの方が地獄だ。


俺はまだ供養が足りてない。フラバ消えん。

以上だ。叫べ。後悔するな。寝る。


──


──あとがき(読み飛ばし可)──


★超おまけ★

サクラの見てる夢(*本編とは無関係)


──


《天の声》

“恥ずか死” の初ケースとして、特別に女子限定ガチャ許可!

さぁ引け!そして生まれ変われ!


════════════════════

▼転生対象の超・異種族祭り限定種族


☆UR:ヴァンパイア Hカップ (4.999%) ← 確率UP!!

SSR:人魚 / Gカップ (10%)

KS:鬼 / Aカップ(0.001%) ← NEW!!

 *KS=KUSA。引いたら草。以上。


もちろん!人魚/アラクネ/ラミア等の人気種族も多数排出!


挿絵(By みてみん)

[#鬼だけ異物感MAX #やべーの居る #右www]


《免責:転生後の苦情はAIが既読無視します》

《注意:読者の皆様も、ガチャは計画的に》

════════════════════


ガチャのバナー画像を見ると、優雅な美人種族たちの横で、ひときわ異質なマッスルな鬼が仁王立ちしている。


「……。」(一度見)


「は?」(二度見)


「女子キャラ限定……?」(三度見)


「マッスル鬼の存在感が異常!!」(四度見)



《天の声》

では、ガチャを回そう。


「待て!鬼がフラグにしか見えない!!」



《天の声》

レッツ!異世界ライフッ!!


\\ ♪ ぐるるるーん!どん ♪ //(*ガチャ開始)


「おい!私、引いてないぞ!?」



《ガチャ演出中……》


\\ドガァン!//【★★★★★確定演出★★★★★】

『天空に舞い踊る女神たち、黄金に輝く竜にまたがるヴァンパイア──!』

『選ばれし魂よ、新たなる運命の扉が今、開かれる!』(虹テロップ)


挿絵(By みてみん)

[#確定演出 #こんにちは巨乳]


「なんか凄い演出きたー!憧れの巨乳ライフ確定ィ!!」

(大当たりと見るや即ノリノリ。これが汚れた大人。)


──しかし。


パッ!


突然、背景が草原に変化


「あれ……草原?」


挿絵(By みてみん)

[#唐突な草原 #嫌な予感]





スゥ……(神々しいSE)


“段ボール箱” が神々しく降りてくる。


「神々しい段ボール!?」


挿絵(By みてみん)

[#神々しい段ボールというパワーワード]





“段ボール箱” が草原に静かに着地。


(……沈黙)


私は草原に佇む段ボール箱を見つめる。


「……。」(ゴクリ)


挿絵(By みてみん)

[#落ち着け #ここまではURある #諦めるな]





段ボール箱から──


……ツノが出た。


      \\ ニュッ。 //

挿絵(By みてみん)

[#ツノ出てんぞ #URはない #諦めろ]


…… 一瞬の静寂。


心臓が嫌なほど早く打つ。



段ボールから、マッスル鬼が生えた。


      \\マッスルッ!//

挿絵(By みてみん)

[#鬼引き #さようなら巨乳 #こんにちは筋肉]


「…………。」


視界の端で、さっきまでの虹色がゆっくり色を失っていく。


終わったの?

私の人生、二周目が始まる前に終わったの?



《天の声》

おめでとう!KS 鬼(Aカップ)0.001% を見事に引いたな!


「……へぇ?あの身体がどうやって段ボール箱に?」(天井の蜘蛛を見つめる私)


「…………」(震える手で髪の毛を一本つまみ、枝毛を発見)


「四つ葉の枝毛発見……ふふ……幸せの予感?」(現実逃避)


(深呼吸)


「……って鬼かよぉ!?私、あのマッスル鬼みたいになるの?」



《天の声》

文字通り “鬼引き” ワロタwww


「笑ってんじゃねぇぇぇ!!」


《天の声》

クスッとでもしたなら──評価と★評価だ。


「もうしてるよ!!」

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