#018 : 伝説武器☆知らん、拳だ!
「モンスター居ませんね。狩り尽くしましたかね。」
地上を目指すことにした私とエスト様はダンジョンを進んでいた。
周辺でレベル上げをしていたせいか、なかなかモンスターが出てこない。
『楽で良いけどね。でも、レベルも上げたいし!』
『何よりもお姉ちゃんの新しい武器を試したいよね☆』
私は腰の「無道・斬」を軽く撫でた。
確かに、刀を一度は使っておきたい。
しばらく進むと、私に冬眠スキルを教えてくれた、クマ型のモンスターが姿を現した。
「エスト様は下がっててください。倒して来ます。奇襲をかけてきます。」
『やっぱり奇襲☆ ワクワク☆』
私はゆっくり歩き出し、突然飛びかかる!
「喰らいなさい!私のフェィバリットを!」
「ザ・グレートムダ様……愛しています!ドラゴン・スクリュー!!!!!」
『おい!刀ぁーッ!?』
……ぐるん!!!ドガッ!!!ガウッ!!!
クマ型モンスターを地面に叩きつけ、無事撃破。
「ふふ……戦う私は美しい……。」
『まさかの刀を使わなかった…』
「だって、刀使ったことないですし。」
『なんで選んだの!?』
「カッコいいからやろがいッ!」
『方言!?』
(なんか力が前よりヤバい気もするけど、まあいいか。
気にしたって始まらんし、こっちは筋肉でぶん殴るだけ!)
……
ダンジョンをしばらく進んで行くと、巨大な広間にたどり着いた。
「こ、この広間…なんて広さなの…東京ドーム2個分はあるわね……」
『東京ドームってなに!?』
「選ばれし18人の戦士が死闘を繰り広げる闘技場です。」
『な……お姉ちゃんはどんな世界に居たの!?』
そうこうしていると、広間の奥から強大な気配が迫ってくる……
そして、その先から低く響く声が聞こえた。
声の主「……この魔力……まさか魔王か?」
ドシン……ドシン……。
気配の主は、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
私の額に脂汗が滲んだ。
サクラ「エスト様……これは……かなりヤバいです。」
エスト『うん……そうだね……。』
サクラ「気付かれたから奇襲が出来ない……ッ!」
エスト『確かにそうだけど!?』
そして、気配の主の姿を確認した瞬間、私は咄嗟にエスト様を盾にした。
妹を盾にする外道ムーブ発動。
サクラ「…………!!」
エスト『……ぅ…ぁ……ぁ……』
──気配の主。現れたのは、巨大なドラゴンだった。
[タグ]#妹は防具 #エストシールド誕生の瞬間
#外道サクラさん #ドラゴンも困惑 #お姉ちゃん?
エスト(……あれ?私、今ドラゴンとお姉ちゃんの間にいる?え、これ盾じゃん。)
ドラゴンはエスト様を凝視し、喋り出した。
ドラゴン「ふむ……魔王では無いか……魔王の子供か?」
「……最近の乱れた魔力の流れ、貴様らが原因か?」
「いや……貴様らよりもっと強大な……」
サクラ「な!なんのことだか!」
エスト『ぅ……ぅ……』
震えているエスト様を私の背後に隠した。
「わ、私とエスト様は地上に行くのです! その為にも……ここを通してもらいます!」
言いながら、《神眼》でドラゴンのステータスを確認する。
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・名前:リンドヴルム
・種族:ドラゴン族
・レベル:300
===========
(レベル300……! 今の私のレベルは141……これは普通に考えたら無理……)
ドラ「……ふむ。通るのは構わんが………我に勝てたらなーーーーーッ!!!!!」
叫ぶと同時にドラゴンが戦闘体制をとった!
その鋭い爪と牙がダンジョンの明かりで不気味に輝いている。
凄まじい殺気が私たちを襲い、息をするのも困難なほどだった。
「くっ!」
(無理無理無理……これ絶対やばいヤツだって……)
(なんで私が、こんな化け物と、命がけの……バカじゃん、異世界……)
(あいつの殺気が、空気ごと出口を塞いでる……)
(……後ろに下がったって、結局、ここからは逃げられない……)
(……だったら、選択肢は一つじゃん……)
息が詰まる。音が遠のく。
全ての感覚が鈍る中、唯一鮮明に感じるのは ── 恐怖だけ。
(……逃げられないなら、やるしかない!)
(死ぬ覚悟はないけど、殴る覚悟はある!!!)
「エスト様!? 戦えますか?」
声に力を込めて尋ねる。心臓が早鐘を打つ。
『ぅ、うん……やるしかないよね!』
エスト様の声は震えているが、決意が感じられた。
その小さな背中には、魔王の威厳が宿っている。
(へぇ…勇気あるじゃん。いいね!それでこそ私のご主人様ってとこかな!)
「はい。私に考えがあります。いつものように魔法で気を逸らして貰えますか。」
『わかった!』
「いきますよ! 3、2、1……」
私は姿勢を低くし、戦闘体制をとる。
心臓が激しく鼓動を打っている。
── 戦闘開始 ──
時間が遅くなったように感じる中、全神経を敵に集中させた。
『闇の矢よ! 敵を貫け! ……ダークアロー!』
エスト様の魔法で空気が震えた。漆黒の矢が闇を切り裂く。
「よし!」 タタッ!!
魔法と同時に私は地を蹴った。
左へ一歩、次に右 ── ジグザグに細かく動いて接近する。
(脚か?頭か?どこを狙う?)
ドラゴンは右前脚を振り上げ、地面を砕くように叩きつけた。
ドォン!!
爆風のような衝撃波。
私は片膝をつきながらも前進を止めなかった。
サクラ「くっ……!」
ドラ「ふん。」
エスト様の魔法の矢をドラゴンの左手が掻き消す。
ドラ「ほう?流石は魔王の血か。なかなかの威力だな。」
その瞬間を逃さず、私は全力でドラゴンの胸部に向かって跳躍した。
サクラ「てやぁっ!」
刀を両手に握り締め、渾身の力で斬りつける!
ザシュッ……! キィィン!
金属のような音が鳴り響く。
刀がドラゴンの鱗を削った。
サクラ「よし! いける!」
しかし──
ドラ「ふん。その程度か。」
ドラゴンの尻尾が横薙ぎに私を襲う!
サクラ「しまっ──」
ドゴォッ!!!
私の体が宙を舞い、広間の壁に叩きつけられる。
サクラ「うがぁっ!」
石壁にひび割れが走った。
エスト『お、お姉ちゃんが刀を使った…!?』
サクラ「驚くとこそこかよ!」
エスト様の悲鳴が響く中、私は血を吐きながら立ち上がる。
全身が軋み、視界がぼやける。
サクラ「……ちょっと斬れた?って思ったらこれだよ!!」
(武器はしっくりこないね!)
サクラ「はぁ……やめやめ。刀なんて性に合わないわ。私にはやっぱ拳だわ。」
ガランガラン……
刀を地面に投げ捨てた。
刃が石を割り、鈍い音を響かせる。
(※拳より凄い伝説の刀です。)
(つづく)
\\ 次回予告 //
刀を捨てたサクラが選んだのは──拳ッ!
だが、その拳に宿るのはただの怪力ではなかった!
怒り、残業、ブラック企業の記憶──
積み重なる社畜の呪詛が、ついに覚醒する!!
「報告!連絡!相談!!」
──会社を滅ぼす三段コンボが、ドラゴンを襲うッ!
次回、
#019 : スキル《怪力》☆OL時代残業モード
\\ サクラの労働は、まだ終わらない! //