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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第13章 : 新生☆魔王軍本格始動!私たち、何をしたら良いですか?
159/173

#158 : 焔と光☆共鳴の先に

*前回同様、辰美視点。


……このままじゃ、ツバキさんが自分を焼き尽くしてしまう。

(=地面に顔面を強打して痛い。とても痛い。)


なんとかしないと!?


その時──胸の奥で、サクラさんの声が蘇った。


《諦めるのは負けだ!負けるのは嫌だ!嫌なことはやらない!やらないなら勝つしかない!勝つためには戦う!戦うなら諦めない!諦めないから負けない!つまり最初から勝ってる!とりま今は眠いから寝る!おやすみ!》


辰美(理屈は回る、私は進む。──行こう。)


辰美「サクラさん……私はぁ!!!サクラさんを探しに行く!」


その時、胸の奥で何かが弾けた。


私の足元の石畳がじわじわと赤く光り始める。


ゴウ……ゴウ……


空気が重く、熱く、まるで息をするたびに肺が焼けるようだ。


カエデ「……あれ? 辰美さん、目が怖い……」

ユリ「いや、これは……進化の予兆……!」

エスト『モンスター図鑑的には次のページに行く瞬間☆』


《SYSTEM:辰美、アークドラゴン〈紅蓮神竜〉に進化》


私の足元から炎が駆け上がる。


皮膚に紅蓮の鱗模様が浮かび上がり、背中から炎の竜翼が大きく広がり──


辰美「──ゴォォォォォオオオオッ!ヴァァァァァァァアアアアアアアッ!!」


喉の奥から迸ったのは、私自身の咆哮。


咆哮は炎の唸りを伴い、竜脈を駆け抜けて空を裂き、大地を軋ませた。


その重低音は遠く山々にまで響き渡る。

熱波が辺りを包み、石畳がミシミシとひび割れる。


──私の咆哮に応えるように、ツバキさんの周囲を赤い光が渦を巻き始める。


炎と風が絡み合い、回転する光の輪が形を成す──その輪は輝きを増しながらツバキさんを包み込んだ。


暴走が鎮まったわけじゃない。

ただ、炎と同調し新しい軌道を描き始めた──


──ツバキさんの暴走エネルギーを私の炎の渦が押し返していく。


ツバキ「……体が勝手に回ってるのに、この熱が心地いい……これは何?」


辰美(これって……なんだか特別な感じがする……これ、竜王の力に近い……いや)


私はすぐに首を振った。


辰美(違う。これは私の力だ。サクラさんのために掴んだ、私自身の力だ)


炎と風が絡み合い、赤い光の渦が爆ぜる。

キッとツバキさんと向き合う。


辰美(呼気が重なり、鼓動が揃う――)


辰美&ツバキ「これは《共鳴》」


辰美「ツバキさん!止まれぇッ!」

ツバキ「ふんぬぅううううう!!」


──炎で包み、聖女の力を安定させる。


ツバキさんの体がゆっくりと失速し──最後は私の両腕の中に、温かく落ちてきた。


ツバキ「……辰美……大丈夫。もう止まった」


その瞬間、ツバキさんの瞳に金色の光が宿った。


──聖女の覚醒。


でも、暴走じゃない。私の炎に包まれた、穏やかな覚醒。


ツバキ「辰美…ありがとう。でも次は私が守る番」


私は微笑んだ。


辰美「うん、一緒に戦おう」


魔法陣のカウントダウンの表示が『00:00』で停止。


《SYSTEM:創世事象=回避/聖女覚醒=安定》

──表示は一瞬の残像を残し、スッと溶けた。


ローザ「ツバキ様……これは……私の故郷キューシューに古くから伝わる言い伝えそのものです……『紅蓮の神竜の咆哮とともに聖女が降臨する』……まさにその通りに」


感動で震えた声を漏らすローザさん。


私とツバキさんは顔を見合わせた。


ローザ「“卒業の光に包まれし邪眼、今や聖女の瞳として世界を見守りたまう”──記録に残します」

ツバキ「記録すな!」


カエデ「ほら、卒アルを燃やした甲斐あったじゃん。立派に聖女さんになったよ」

ツバキ「っさい!!」


そうか──私たちの出会いも、この力の共鳴も、きっと偶然じゃない。


ツバキ「カエデ……あとで話がある」(怒)


カエデ「え?うん!なんだろう?」(素)


ユリ「正義が勝ったな!」(違)


エスト『あれ?私たち……魔神族が来たわけじゃないのにピンチだったの?』(驚)


ローザ「聖典に書くことがたくさんですわ!」(喜)


辰美「はぁ……とりあえず寝たい……」(疲)


◇◇◇


南西の方角にサクラさんの気配を感じる気がする。

力が解放されたから?


……いや、違う。あれは絶対にサクラさんだ。


私は静かに拳を握った。

辰美「絶対に見つけ出す。たとえこの命を燃やし尽くしても」


ツバキ「……あとでカエデは殴るけどね」


(間)


カエデ「あれ!?え、なんで!?」


風が頬を撫でていく。今度こそ、必ず辿り着く。


そして今なら分かる──ツバキさんと私、聖女と火竜。


この《共鳴》があれば、サクラさんを救うのも、世界を守るのも、二人なら……ここにいるみんなとなら絶対にできる。


そして、ツバキさんはカエデさんを正座させて説教してた。


カエデ「でもさ、あの時の魔王さんスタイル、似合ってたよ?」


ツバキ「褒めてないからそれ!」


カエデ「私たち、ズッ友だよ?…だから全部覚えてるし、忘れないよ?」


ツバキ「いやぁ……忘れてぇ!」



(つづく)



《天の声 : ローザの言ってたキューシューの伝承は #032 を参照》


◇◇◇


──【今週のサクラさん語録】──

『諦めるのは負けだ!負けるのは嫌だ!嫌なことはやらない!やらないなら勝つしかない!勝つためには戦う!戦うなら諦めない!諦めないから負けない!つまり最初から勝ってる!とりま今は眠いから寝る!おやすみ!』


解説:

これはサクラさんの理屈に見せかけた強引な勝利哲学。

「諦めない=負けない」という単純理論を、無理やり「最初から勝ってる」に飛躍させるあたりがポイント。さらに最後の「眠いから寝る」で、戦意も論理も全部ベッドに持ち込む型破りなスタイル。

常識的には破綻してるが、サクラさんの前では誰も反論できない──なぜなら、反論する前に試合が始まって終わっているからである。


ユリ「つまり…最初から私たちは勝ってたんだな!(違)」

エスト『サクラお姉ちゃんの狂気には逆らうな☆』

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