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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第12章 : またかよ、最下層!人生ハードモード続行中
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#149 : ゴミスキル女子☆地獄で無双開始

挿絵(By みてみん)

──しばらく経ち、辰夫の傷が落ち着いた頃、私たちは真剣に作戦を練り始めた。


サクラ「この奈落の底を抜けるには魔神族と、さっきの気配のヤツ?魔神王?と戦わなければならないってことよね」


辰夫「可能性は高いですな……」


辰夫がうなずく。


サクラ「はい、無理!撤退よ!」


私は親指グッ!笑顔にぱぁ!とさわやかに決めた。


辰夫「さわやか!……まぁ正面からぶつかるのは得策ではありません。特に今の我では……」


私は鋭い瞳で前方を睨みつけた。


サクラ「何とか奴らに見つからないように抜け出して、私の魔王軍で一掃したいな。私は高みから見物したい。笑いながら。」


私は苛立ちを抑えられず、ポテチ感覚で傍らの小石を拾ってパリポリと食べ始めた。


サクラ「魔神族……私をこんな目に合わせやがって……」


サクラ「絶対に許さん……封印?生ぬるいわ……」


サクラ「この世から存在を抹消してやる……」


イライライラ……カリカリカリ……と爪も噛んだ。


辰夫は私の静かな怒りに背筋が冷える思いをしながら、苦笑した。


辰夫「……その石、美味しいんですか?と言うか、なんで石を食べれるんですか?」


サクラ「知らん、怒りで味がわからん!」


サクラ「レベル上がったら胃袋のレベルも上がったんだよ……」


(どんどん謎の生物になってる……?)


辰夫が戦慄していた。


サクラ「糸の活用法は前世のアメリカってところに糸を武器にするスーパーヒーローが居たから参考に出来るんだよね。」


辰夫「前世ってどんな世界だったんですか……」


サクラ「だから魔神族を倒すにはやっぱり連携技を鍛える必要があるな」


辰夫の表情が曇った。


辰夫「嫌です」


私は辰夫を無視して真剣に説明を始める。


サクラ「まず、『辰夫スイング』ね。」


サクラ「お前の尻尾に糸を巻いて敵を一掃する」


辰夫「ほら予想通り!この人は我を困らせることにかけては天才!」


サクラ「待って!黙って!閃いた!」


サクラ「……スイング中にブレスを吐く……?」


サクラ「これ……『辰夫スイング・スパイラル』の完成よ」


私は震え声で言った。


辰夫「話聞けよ!」


サクラ「次、『辰夫スリングショット』ね。」


サクラ「糸で巨大パチンコを作り、お前を射出する」


辰夫「相変わらず人の話聞かないな!この人!」


辰夫「糸を使いたいだけ!」


辰夫「辰夫ロケットととの違いが分かりません!」


辰夫「なんなら辰夫ロケットのが精度高いまである!」


サクラ「最後は、『辰夫ロケット☆ジャイロ』だ。右肩壊しても左肩で投げてやるからな?」


私はさらに重々しく続ける。


辰夫「すんごい無視してくる!?我はここに居ますが見えてますか!?」


サクラ「横回転を加えて命中率と貫通力を上げる究極技だ」


辰夫「究極死ぬ。」


私は天井を見上げ、どこか遠い目をした。


サクラ「天国のおとさんも喜ぶよ?」


辰夫は混乱のあまり絶叫した。


辰夫「その『おとさん』って誰ですか……!?」


洞窟に辰夫の悲痛な叫びが虚しく響き渡った──。


その時だった。


ザザザザザ──


私たちの前に、一体の魔神族が現れた。


しかし、先ほど感じた魔神王の瘴気とは比べ物にならない。これは下級の偵察兵レベルだ。


黒い鎧に身を包み、赤い瞳を光らせながら、巨大な斧を振りかざしている。


魔神族「奈落の底に迷い込んだネズミが二匹……」


その低い声が洞窟に響く。


魔神族「我らが王の復活を前に、良い生贄となってもらおう」


地面を踏みしめるたびに小石が跳ね、湖面に波紋が広がる。


声の重低音が石壁に反響し、まるで地鳴りのように私たちの身体を震わせた。


魔神族の赤い瞳が私たちを値踏みするように見据える。


その視線だけで、背筋に冷たい汗が流れた。


サクラ「辰夫、来るぞ!」

辰夫「仕方ありませんな」


私と辰夫は戦闘体制をとった。


【スキル:《怪力》──免許証の写真写りが前科者だったモード】発動!!(筋力+500%)


《天の声 : 運転免許証の更新後、自分の写真を見た瞬間、その凶悪な写りに愕然とする。怒り、絶望、そして哀しみが爆発的に筋力に変換される。なんでだろうな?》


私の全身に力がみなぎる。

筋肉が膨れ上がり、血管が浮き出た。


サクラ「誰だよこの前科者顔ォォォォォォ!!」


サクラ「5年だぞ……5年ずっと鬱確定だとぉおおおおお!!」


辰夫「ええ!?」

ビクっとする辰夫。


サクラ「辰夫!私が行く!怪我人は後ろから援護しろ!」


辰夫「はい!」


魔神族が巨大な斧を振り下ろす。


風を切る音が「ヒュオオオオン」と響き、斧の軌道上に火花が散った。


私は左に跳び、辰夫は右に転がった。


斧が地面に叩きつけられると、「ガッシャアアアン!」という爆音と共に岩盤が砕け散った。


サクラ「その斧、うるせーな!」


私は魔神族に向かって一直線に駆け出した。


足音が洞窟に響く。


サクラ「武器は卑怯ですよっと!」


糸を斧に向かって吐く。


\\ ピュッピュッピュッ //


魔神族の首と斧を固定する。


魔神族「何だこれは!?糸か!?」


サクラ「糸じゃねーよ!犠牲にした女子力だよッ!!」


【スキル:《鉱物化》──ダイヤモンド】発動!!


私は拳を固め、力を込めた瞬間──腕全体が透明なダイヤモンドのように輝き始めた。


サクラ「新スキルの試し撃ちだ!喰らっとけ!」


ガシャアアアン!


拳は魔神族の厚い黒鎧を紙のように突き破り、粉々に砕いた。


魔神族「ぐわぁぁぁぁ!!」


魔神族が驚愕し、よろめく。


サクラ「へぇ?これがダイヤモンドの硬さ?気に入ったわ」


衝撃波が洞窟全体に響き渡り、天井から細かい石が雨のように降り注いだ。


魔神族の黒い鎧にヒビが入り、赤い瞳が驚愕に見開かれる。


魔神族「ぐおおお……まさかこの小娘が……!」


魔神族が大きくよろめく。


その隙に辰夫が後ろから飛び上がり、口を大きく開いた。


辰夫「喰らえ魔神!!『黒炎』!!!」


ゴオオオオオオオオ!


辰夫の口から黒い炎のブレスが噴射される。

炎が魔神族の背中を直撃し、黒い鎧が赤熱化していく。


魔神族「ぐわあああああああ!」


魔神族の悲鳴が洞窟に木霊した。


サクラ「苦しそうだし?楽にしてあげるよ?」


私はにっこりと笑った。


私は苦悶する魔神族に糸を巻きつけ、両手の動きを封じる。


サクラ「受け身をとれないようにしたよ?気をつけてね☆」


私は満足気な笑顔を浮かべた。


サクラ「いよいしょっ!」


そして片足を掴む!


そのまま全身をねじり、回転の勢いを最大まで溜める。


サクラ「ふぅぅ……」


私の身体が竜巻のように回転しながら倒れ込む!


サクラ「よいしょーーーーーッ!!」


【奥義 : ドラゴン・スクリュー】


魔神族も同時に螺旋状に回転!


ズドォォォォォン!


魔神族「ごぼはああああああ!」


魔神族の巨体が頭から地面に激突し、岩盤を砕きながらめり込んでいく。


土煙が舞い上がり、しばらく何も見えなくなった。


やがて煙が晴れると——


魔神族「くそ……くそおおお!」


魔神族が巨大な斧を振り上げようと最後の力を振り絞る。


魔神族「まだ……戦える……!」


サクラ「うっさい!死んどけ!」


ドスン。


私は鉱物化したまま魔神族の上に座る。


魔神族「ぐぼっ」


斧がガランと落ちた。


サクラ「はい終了」


完全に動かなくなった。


辰夫「……斬新ですね」


サクラ「でしょ?」


私と辰夫は勝利のハイタッチを交わした。


パシィン!という乾いた音が響く。


サクラ「私たち強くなってるな」


辰夫「かなりレベル上がりましたからね」


辰夫は苦笑いを浮かべた。


サクラ「よし、次の魔神族が来る前に、ここから脱出しよう」


辰夫「ですね」


私たちは地下湖のほとりを後にし、奈落の底の奥深くへと向かった。


暗闇の中に、かすかな光が見えている。


それが出口への希望の光でありますように。


魔神王の瘴気は、まだ奈落の底に漂っている。


(つづく)

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