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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第12章 : またかよ、最下層!人生ハードモード続行中
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#147 : ただいま☆おかえり

挿絵(By みてみん)

瘴気に侵された辰夫が咆哮を上げながら、再び突進してきた。


サクラ「言葉じゃダメか……なら!」


私は真正面から辰夫の突進を迎え撃つ。

鉱物化した拳と辰夫の爪が激しくぶつかり合う。


ギィンッ!


火花が飛び散り、衝撃で腕が痺れる。

だが今度は一歩も退かない。


サクラ「誰が主人だったか、思い出させてやる!」


【スキル:《怪力》──トカゲのしつけモード・極】発動。筋肉が膨張し、辰夫の爪を押し返す。辰夫の瞳に一瞬、驚きの色が浮かんだ。


サクラ「そうだ!私の方が強いんだよ、辰夫!」


辰夫は容赦なく尻尾を振り回し、私を壁際に追い詰めようとする。


サクラ「甘い!」


私は尻尾を掴み、そのまま辰夫の巨体を引き寄せる。

鱗の感触が手のひらに食い込み、辰夫の体温が伝わってくる。


サクラ「ふんッ……!」


辰夫が体勢を崩した隙に、私は辰夫の顔に頭突きをする。


ドガッ!


硬い鱗に額がぶつかり、鈍い痛みが走る。


サクラ「いい加減にしろ!お前の主人は私だ!」


辰夫「ぐぉぉおおお!」


辰夫が苦悶の叫びをあげる。

だが瘴気が再び辰夫を包み込み、さらに凶暴になる。


私は全身を鉱物化し、辰夫の全ての攻撃を跳ね返す。


サクラ「お前が死んだかと思った…私を守るために死んだかと思った…」


私は辰夫の胸元に飛び込んだ!そして辰夫の耳元で叫ぶ。


サクラ「でも!生きてた!こんなに嬉しいことは無いッ!!」


辰夫の動きが一瞬だけ止まった。

瞳に再び、ほんの僅かな光が戻ったような気がした。


辰夫の意識の深層で、かすかな記憶が揺らめいているのが分かる——


辰夫「この声……知っている……大切な……誰かの……?」


サクラ「そうだ!思い出せ……私はお前の主人で、お前は家来で!……家族だ!」


しかし瘴気が記憶を押し流そうとする。

辰夫が再び激しく咆哮をあげる。

瘴気が身体を包み込んで暴走を加速させる。


辰夫の翼が大きく羽ばたき、強風と共に私を振り落とそうとする。


サクラ「仕方ない!まずはこれだ!」


私は辰夫の尻尾を両手で掴んだ。

太く力強い尻尾が私の手の中で暴れまわる。


サクラ「思い出したか?私たちのいつもの連携技、《辰夫ロケット》だ!」


足を踏ん張り、腰に力を入れて尻尾を掴んだまま、辰夫の巨体を振り回し始める。


一回転、二回転——遠心力で辰夫の巨体が浮き上がる。


サクラ「うぉぉぉぉぉ!」


渾身の力で手を離すと、辰夫が空中で一回転し、勢いよく地面に叩きつけられる。


ドカン!


地面に亀裂が走り、小石がぱらぱらと落ちてくる。

しかし辰夫は瘴気の力で立ち上がり、まだ正気を取り戻さない。


サクラ「ふん!まだダメか!なら、最初にお前を倒した時と同じ技を喰らわせてやる!」


私は辰夫の足元に回り込む。


サクラ「辰夫!これが私とお前の上下関係を決めた技だ!」


辰夫の太い足首を両手でしっかりと掴む。

私の腕に血管が浮き上がり、筋肉が限界まで膨張する。


サクラ「ムダ様流……《迷ったら筋肉!悩んでも筋肉!最後は筋肉!》おおぉ!ドラゴン・スクリュー!!!」


腰を深く落とし、全身の力を込めて回転を開始。

遠心力で髪が逆立つ。


辰夫の翼が風を切り裂き、鱗が洞窟の薄明かりを反射してきらめく。

その巨体が高速で回転しながら地面に落下していく——


ズドォオオオオオン!!!


地面が砕け、岩の破片が四方八方に飛び散る。

洞窟全体が震動し、天井から砂埃がぱらぱらと降ってくる。


辰夫が地面に叩きつけられると同時に、瘴気が身体から激しく噴き出す。


辰夫「ぐぁぁあああ!」


瘴気が薄れていく中、辰夫が再び立ち上がろうとしている。

その瞳にほんの僅かな正気の光が戻り始めたのを私は見逃さなかった。


サクラ「その調子だ!私の技を思い出せ!」


辰夫は地面に激しく叩きつけられ、瘴気が激しく吹き荒れる。


サクラ「辰夫!」


私は駆け寄り、辰夫の目の前で拳を構える。


サクラ「お前を元に戻すまで、何度でもやるぞ?」


辰夫は苦しげに呻きながら身体を起こそうとしている。

その瞳は瘴気と正気が激しく入り乱れていた。


辰夫「……サクラ殿……我は……我は何を……?」


その声は震えていた。

私は辰夫の目をまっすぐ見つめる。


サクラ「お前は私を守ってくれた…今度は私がお前を守る番だ!主人として命令する──元に戻れ!」


辰夫の瞳が大きく揺れ動く。

瞳の奥で苦悩と記憶がせめぎ合っている。


辰夫の意識の中で、記憶がよみがえっているのが分かった——


辰夫「あの日……我が初めてサクラ殿と出会った日……投げ飛ばされた時の衝撃、痛み、そして……驚き。この小さな鬼が、竜王である我を上回る力を持っていた。その時感じた畏敬の念……そして、この方になら従いたいと思った気持ち……」


瘴気が記憶を塗り潰そうとしている。

黒い霧が心の奥に侵入し、大切な記憶を奪おうとする。


でも——辰夫の心の奥で何かが叫んでいる。


(我はサクラ殿を守りたい。ユズリハ殿を失った時のような後悔は、もう二度と……!この方は我にとって、主であり、家族であり……なくてはならない存在……!)


瘴気が再び辰夫を襲い、辰夫は激しく頭を振り回した。


辰夫「ぐぁぁぁ……我は……我は……!」


その様子を見て、私は辰夫の顔に向かって叫ぶ。


サクラ「思い出せ!私がお前を仲間にした日のことを!お前が私に忠誠を誓った日のことを!」


辰夫の目に一瞬、明確な記憶がよぎるのがわかった。


辰夫「……サクラ殿……」


辰夫が呟いたその言葉を聞いて、私は頷いた。


サクラ「そうだ!あの時、お前は私を主人として認めた!」


辰夫の身体から瘴気がゆっくりと消え始めていた。


辰夫「……そうだ……あの技を喰らった瞬間……我はサクラ殿を認めた……サクラ殿を……主として……」


瘴気が次第に薄れ、辰夫の瞳にいつもの落ち着いた茶色が戻った。


サクラ「辰夫……?」


辰夫は穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと私を見つめた。


辰夫「……サクラ殿……ただいま……戻りました……」


私は背中を向けた。胸が熱くなるのを感じながら、震え声で呟く。


サクラ「……手間かけさせるなよ」


そして、深く息を吸って。


サクラ「……ありがとう」


静寂が洞窟に流れる。

辰夫の温かな気配が背中に感じられる。


サクラ「……おかえり」


辰夫「ただいま戻りました……サクラ殿」


辰夫は深く頭を下げた。


◇◇◇


──数時間後。


穏やかな空気が流れて、二人で歩いていたその時だった。


辰夫の身体が再び震え出した。


辰夫「ぐぉお!こ、これは瘴気……」


サクラ「またかよっ!?」


ドゴン☆


辰夫「ぎゃッ!!」


──数時間後。


穏やかな空気が流れて、二人で歩いていたその時だった。


辰夫の身体が再び震え出した。


辰夫「サクラ殿……そろそろ瘴気モードが……」


サクラ「はいお疲れー」


私は指をポキポキしながら近づく。


サクラ「ていっ」


ドゴン☆


辰夫「ぎゃッ!!」


──数時間後。


穏やかな空気が流れ(略


辰夫の身体が再び(略


辰夫「ぐっ……今度こそ自分で……制御を……」


辰夫が必死に瘴気と格闘している。


サクラ「おっ、頑張ってるじゃん!」


辰夫「ぐぅう…だめです……サクラ殿、別の方法無いんですか…」


サクラ「絆!絆!」


私は笑顔で腕をぶんぶん回しながら言った。


辰夫「なんで笑ってるんですか!」


辰夫が横に跳んで回避を試みるが、私は予測して移動。


サクラ「ドラゴンスクリュー・零式!」


通常より倍の回転数で技を決める。


ドスン☆


辰夫「ぐえッ!!」


サクラ「ふふ。私とお前って、いつもこうだろ?」




(嬉しいんだよ)




(つづく)


◇◇◇


──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──


『迷ったら筋肉。悩んでも筋肉。最後は筋肉。』


解説:この世の悩みの9割は筋肉で解決できる。

まず筋肉を信じろ。何も考えずに筋肉だ。

今日も筋肉してるか?

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