#130 : 拳で語る☆美女と竜王の共闘
\\ サーセンシター!!!ガンガンガン! //
スライディング土下座──
──は、効かなかった。
魔神族たち『…………。』
魔神族たちは微動だにしない。
サクラ「……ふっ…ダメか…あー…おでこ痛っ……でも、奥義が効いてないのはもっと痛っ……」
スライディング土下座を決めた おでこ をさすりながら、私は立ち上がった。
サクラ「さてと?ワンパンされた竜王の辰夫さーん?どこ行ったー!?」
辰夫「……こちらです。うっぷ……吐くかと思いました……いきなりの土下座は魔神族より衝撃でしたぞ……」
私の頭上からゆっくりと降りてくる辰夫。
私はふうと息を吐いた。
サクラ「作戦だし!?謝って帰れるならラッキーだし!?…ま、でもさ──辰夫?そんな軽口を叩けるってことはまだいけるってことよね?てか、いけなくても引っ張り出すけどね」
辰夫「っはは!サクラ殿のその軽口が頼もしく思える日が来るとは!当然行かせてもらう!」
辰夫が勢いよく翼を広げた。
魔神のひとりがこちらを見下ろし、ぽつりと吐き捨てる。
魔神族(人型)『何をしている? 滑稽だな』
サクラ「ふーん……」
私はスキルウィンドウを開いた。
\\ ぺ⤴︎ぺ⤵︎ぺ⤴︎ペ⤵︎ぺったんこぉッ♪ //
(ステータス画面表示音 ※なんか緊迫してる感じ)
……効果音また変わってるな…イラッ(怒)
サクラ「見くびらないでほしいわね……こっちは、ただの”美女”じゃあないんだから──!」
【スキル《怪力》発動】
全身がバキバキと軋み、筋肉が膨れ上がる。
地面にひびが走った。
サクラ「辰夫!今度は私が前衛、あんたは背後からブレスよ!」
辰夫「承知!」
辰夫の咆哮が轟く。
私は地を蹴った。
一体の魔神族が前に出て、黒い爪を振り上げる。
──が、私はそれを”かわさない”。
サクラ「スキル!《貝殻生成》ッぁああああああああッ!!」
自分の左腕に盾として貝殻を生成し、爪を受け止める!
サクラ「……折れてもいい、潰れてもいい、でも──この拳だけはッ……止まらねぇぞぉおおおおおおッらぁあああああ!!!」
【スキル《怪力》── 過負荷モード】
右腕が悲鳴を上げながら、貝殻ナックルがさらに膨張。
ヒビを帯びたまま強化される。
ドォンッ!!!
拳が魔神の顎に炸裂!空気が爆ぜ、衝撃が跳ね返る!
魔神の巨体が半歩、グッと下がった。
石床に──ズシィッ!! 重い足跡が刻まれる。
サクラ「ちなみに切られるのはいやよ?覚えときな!」
魔神族(細身)『……ぐっ…なんだ? ……この女……』
赤く腫れた右腕がズキリと痛む。
指先が痺れて握れない。肘の奥で骨がミシ、と嫌な音がする。
それでも私は、鼻で笑ってやった!
サクラ「──っはッ!だからさっきから通りすがりのッ!美女だって言ってんだろぉーおッ!!……辰夫ぁーーーッ!!」
辰夫「行くぞ!我が秘奥ぉおおおおお!!」
辰夫が翼を広げ、魔力を一気に練り上げる!
口元から吹き出すのは熱じゃない──黒き霧と、禍々しい瘴気!
辰夫「《崩哭》!!!!!…地の底より這い上がれ、滅の吐息よぉぉッッ!!!」
ズゴォオオオオオッッ!!!
放たれたそれは”破壊”そのもの。
空間が軋み、黒紫の奔流が魔神の背を一気に焼き貫いた――!
ボッ……バヂヂヂヂヂィィィ……ッ!!!
肉が焦げ、骨が焼け、空気すら悲鳴を上げる。
魔神族(細身)『……ぬ……っぐ、……がは……ッ』
魔神の口元から濁った息が漏れる。
黒い蒸気が皮膚の隙間から抜け、膝が沈む。
サクラ「でっかしたぁー!辰夫!それを私にやったらぶっ飛ばす!!!!」
辰夫「ははは!いつか放ってやりますぞ!」
サクラ「連携行くよ!辰夫ッ!!」
辰夫「応ッ!いざ、渾身の──!」
左右から挟み込むように走る。
サクラ「くらいやがれぇぇぇぇぇえええええええあッッ!!!!」
交錯の瞬間、私の右回し蹴り(貝殻ブレイス装着)が魔神の下顎を跳ね上げ──
ズドンッ──!!
辰夫「おおおおおおおおおおおおッッッッッ!!!!」
同時に、辰夫の尾が音速の刃となり魔神の胸をえぐる!
バキバキバキィンッ──!!
音を置き去りにし、衝撃が魔神を襲う!
肋骨が砕け、魔神の喉奥から濁ったうめきが漏れる。
そのまま地面を抉るように、巨体が叩きつけられた!
ド グ ォ オ オ ン !!!!
衝撃が走る。
魔神の巨体が反動で宙に浮く──
魔神族(細身)『っかは………ッ…』
サクラ「まーだだ……よいしょッ♪」
宙に弾ける魔神の左足を掴む。
ガシッ!!
【スキル《怪力》── 絶対根性モード】
そのまま全力で地面に回転しながら倒れ込む!
サクラ「……テメーもッ!土下座したらッ!許してやんよぉおおおーッ!!!!!ドラゴンッ・スクリューぅうううううぁッ!!!!!」
ギュルルルルルッ!!ズッッドォン!!!!!
── 土煙が上がる。
その中を私はゆっくりと立ち上がる──。
サクラ「……んー……あー。嘘だわ。やっぱり許さねーと思うわ。」
魔神を横目に髪をかき上げる。
──魔神は頭から地に、沈んだ。
一体の魔神族が、崩れ落ちて、動かなくなった。
魔神族たち『……っ!?』
他の魔神たちが、微かに反応する。
倒れ伏す魔神族の傍らで、私は膝に手をついて、荒く息を吐いていた。
胸が上下しすぎて、吐く息が震える。
サクラ「──ほらね。言ったでしょ?ただの美女じゃないってさ……」
拳と膝を振るわせながら、強がって見せる。
──足と指先の感覚がない。
今の一発で、何かを”超えて”しまったのを、身体が知っている。
サクラ「……っは、は……やった……倒せる……コイツら…倒せるのよ……ッ!」
辰夫も大きく肩で息をしていた。
翼が小刻みに痙攣している。
辰夫「……ふ、ふはは……一体だけ、ですけどな……」
それでも、辰夫は笑った。
竜の誇りを失わないかのように。
(つづく)




