#115 : ホーリービーム全開♡恋と石と聖典の乱舞
前回までのあらすじ
→ 魔神が頑張って登場しようとしてる
◇◇◇
(BGM:「か・み・さ・ま☆ドーン〜恋はビームで打ち抜け〜」)
カエデとローザが無意識にテンポを取り、私の魔力が拍に乗る。
── その時。
ぱぁん、と音を立てて弾けるように、光の翼が展開する。
その瞬間、私の体がふわりと宙へ。
輝くオーラに包まれながら、地上から数十センチ浮き上がった。
ローザ「あっ、ちょっと!?まだ顔の位置合わせ中なんですけど!?」
ローザは慌ててジャンプしながら、宙の私の顔に照準を合わせ続けた。
聖典を振り回しながら、謎の調整ジャンプが始まる。
ツバキ「あばばばばばばばばばばーーーッ!!!(顔面ロックオン中!!!)」
私のビーム出力が最大に。
それを見たカエデも叫んだ。
カエデ「ツバキ凄い!ウィルソンも追加ああぁ!!」
(*しつこいですが、ただ石を投げてます)
カエデ「私も全力行くよ!《スピリットコール:弱風》──出てこい、フーラ!!」
突如、カエデの周囲に風が舞い、テンション高めの精霊が登場。
フーラ「風の精霊、フーラ参上ッ!! 必殺ッ!風圧一センチッ!!」
ピュウッ!
魔神の──
手の甲を優しく撫でた。
魔神『ちょ……何いまの!?…くすぐった……!』
フーラ「これが伝説の風圧、感じたかッ!?」(※ドヤ顔フーラ)
カエデ「やった!効いてる!たたみかけるよ!」
カエデが謎の手応えを感じながら、すかさず叫ぶ。
(*本人は大真面目です)
カエデは最後の石をそっと見つめた。
カエデ「……最後のウィルソン…いってらっしゃい…」
ウィルソン「カエデ……今までありがとう」(カエデにだけ聞こえる)
カエデ「えい!」
ポイッ(※ただ石を投げた)
ゴンッ!!
魔神『いでッッ!!』
ウィルソン「──カエデ…ヴァルハラで会おうね」
(*カエデは荷物のうどんを見てる。お腹空いたらしい。)
ウィルソンと私のホーリービーム♡、そして聖典の角、フーラが全て命中。
痛みで魔神の集中力が途切れ、裂け目を維持できなくなる。
魔神『いででででで!!痛い!めっちゃ痛い!!集中できない!!』
……裂け目の中からかすれた声が響いた。
魔神『……ちょ……無理だこれ……想定外すぎる……』
魔神『裂け目が縮んで……手も痛いし……』
……だが、次の瞬間。
低く、禍々しい声が残響のように響いた。
魔神『次は裂け目ごと穿つ。希望もろとも、だ。』
バシュゥッ!と空間が閉じ、魔神は撤退する。
── 静寂が戻る。
ツバキ「──逃げた?」
私が汗だくで膝をつく。
全身の力が抜けて、ぺたんと草原に座り込む。
ツバキ「はぁ、はぁ……こわかった…全力拒否成功ッ…!我が拒絶の光よ。次は……通さないから……!」
カエデ「……あの、ほんとに……ウィルソンが……効いた?」
カエデは全弾投げ尽くして荒く息を吐く。
ローザが私たちに駆け寄る。
ローザ「お疲れ様でした!でも……あの魔神、また来そうですね」
カエデ「……今のうちにうどん食べとこっか」
ツバキ「……それな」
私たちは顔を見合わせ、なぜか笑いが込み上げてきた。
カエデ「……次は、熱湯だね」
ローザ「聖典は湯気に弱いですが、賛同します」
ツバキ「……うどん、ゆでてから投げよ」
◇◇◇
風が戻る。世界の呼吸が、やっと再開した。
ツバキ「……行こう、カエデ、ローザ。まだ──終わりじゃない」
草原に立ち上がった私は、汗と涙に濡れた顔をぬぐった。
その眼差しには、さっきまでの恐怖のかけらはない。
カエデ「うどんたくさん買い溜めしないとね」
ローザ「はい。魔王を、倒しましょう。」
私たちは笑い合い、太陽の下へ歩き出す。
その背中には、もう”聖女”も”勇者”も背負っていなかった。
ただ、“ツバキ”と”カエデ”と”ローザ”のままで。
──私たちの魔王討伐の旅は、まだ始まったばかりだ。
あの日、恐怖に泣いた少女は──もう、いない。
◇◇◇
その頃、異次元の彼方で──
魔神『痛い……手がヒリヒリする……』
魔神は暗闇の中で手をさすっていた。
魔神『なぜあの石がこんなに痛いのだ……ただの石ころのはず……』
魔神『それに聖女の力も想定以上……裂け目まで浄化されるとは……』
魔神『次は必ず……もっと大きな裂け目を最初から作って……』
◇◇◇
《征服ログ》
【魔神】:登場失敗
→ 聖なる力で裂け目縮小、物理攻撃で集中力途切れ撤退
【ツバキ】:ホーリービーム♡最大出力発射(裂け目浄化)
【カエデ】:ウィルソン連投フルコンボ、フーラ大活躍(魔神の集中妨害)
【ローザ】:信仰の鼓舞とツバキの照準サポート
【次回】:魔神の出直し計画と、うどんと、物理の重要性について
《魔神の反省メモ》
- 次元移動時は最初から大きな裂け目を作ること
- 聖女の浄化能力は予想以上(裂け目まで縮む)
- 石の威力を侮るべからず(集中力が途切れる)
- 次は”第三の鍵”が動く前に……潰す。




