#113 : 乙女超新星爆発☆恋すると世界が滅ぶ件
──その夜、焚き火を囲んで。
カエデ「ツバキ、今日のビームすっごかったね!でも……ちょっと強すぎない?魔王と戦う前に、森のモンスター全滅させちゃいそう。なんなら地形変えそう。」
カエデが少し心配そうな顔をする。
ツバキ「ふ……当然の結果よ。なぜなら我が魂は、光の理と契約を果たした──」
カエデ「でも爆風で私のうどん飛んだんだよ?」
カエデがどんぶりを差し出しながら、言った。
ツバキ「……ごめん」
本当は、もう少し優しい力で世界を救いたい。
でも今の私には、この暴走する力しかない。
コントロールできない自分が、怖い。
誰かを傷つけてしまいそうで、怖い。
カエデの心配そうな顔を見ていると、胸が締め付けられる。
── すると。
ローザ「ツバキ様」
ローザが小さく手を挙げた。
ローザ「先ほどから観測している魔力の変動についてですが……気になる点がございます」
ツバキ「え……なにそれ、また暴走系?」
ローザは静かに頷き、手元の記録をめくる。
ローザ「ツバキ様の魔力は……通常の魔法と違って、信仰でも制御でもなく、内面の衝動に反応して膨張していくようです」
ツバキ「……衝動?」
ローザ「はい。つまり──ツバキ様が何かを”強く願うほど”──魔力は膨れ上がり、暴走へと傾くのです」
ツバキ「……じゃあ、私の”このままじゃダメ”って気持ちが……?」
ローザ「それすらも、魔力を肥大化させてしまうのです。まるで、感情そのものが、燃料のように」
ツバキ「じゃ、じゃあ私が落ち込んでも……?…もしさ……私が誰かを”好きかも”って思った瞬間、超新星爆発したらどうするのよッ!?」
私が頭を抱えながら叫んだ。
ローザ「……乙女超新星爆発、ですか?」
まじめな顔でローザがメモを取りはじめる。
カエデ「わあ……それ、ちょっとロマンチック……見たいかも…(きゅん)」
カエデが きゅん とした後に うどん をすすった。
ツバキ「ロマンと絶滅が隣り合わせなんだけど!!??」
カエデに軽くチョップ(ツッコミ)をしながら言う。
カエデ「あいたw」
カエデが笑った。
ローザ「大丈夫ですよ。ツバキ様。力をコントロールするのも、成長の一部です。それに──ツバキ様が本当に自分らしくいられるようになったから、きっと大丈夫です」
ローザが優しく微笑む。彼女は夜空を見上げた。
その言葉に、胸が温かくなった。
──翌朝。
空を見上げると、青い空に、うっすらと雲が流れている。
風が頬を撫でて、新しい一日の始まりを告げている。
ツバキ「さ、行こうか」
私は進み出す。
“ツバキ”としての道を──。
完璧じゃなくても、暴走しちゃっても。
それが今の私だから。
ツバキ「私は……私……か。」
小声で呟いたつもりがカエデが私を覗き込んで言った。
カエデ「うんっ!ツバキはツバキのままでいいんだよ!」
ふわっと隣で笑ったカエデが、何気なく言った。
それはどんな祝福より、優しくてまっすぐな──
勇者の言葉だった。
(つづく)
◇◇◇
──今週のカイ様語録──
『感情とは、制御不能な光。
──だが俺は、うどんをすする!』
(※つまり、うどんがうめぇ)
解説:
TVアニメ《堕光のカイ》第5069話より抜粋。
感情に反応して力が暴走する”聖女兵器”との戦闘で、カイ様が自らの心を沈めるために行った儀式。
それが、湯気立ち上るうどんを「すーっ」と啜る行為であった。
◇◇◇
おまけ
《カメリア聖典・信徒の断章》
記録者:ローザ
・「うどんで人は救えるんだ……!」(信徒Lv.1)
・「うどん派とそば派で宗教戦争が起きそう」(信徒Lv.7)
・「むせたら鼻からうどん出た。たぶん神のお告げだよね」(カエデ)
・「鼻より出でし白き麺、これを『導きの糸』と呼ぶ」(ローザ)
・「我が魂は、聖なる湯気に導かれ、うどんの理へ至れり──」(ツバキ)




