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魔王がポンコツだから私がやる。──Max Beat Edition  作者: さくらんぼん
第09章 : 中二と天然と信者の、世界ぶっ壊し珍道中
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#113 : 乙女超新星爆発☆恋すると世界が滅ぶ件


──その夜、焚き火を囲んで。


カエデ「ツバキ、今日のビームすっごかったね!でも……ちょっと強すぎない?魔王と戦う前に、森のモンスター全滅させちゃいそう。なんなら地形変えそう。」


カエデが少し心配そうな顔をする。


ツバキ「ふ……当然の結果よ。なぜなら我が魂は、光の理と契約を果たした──」


カエデ「でも爆風で私のうどん飛んだんだよ?」


カエデがどんぶりを差し出しながら、言った。


ツバキ「……ごめん」


本当は、もう少し優しい力で世界を救いたい。

でも今の私には、この暴走する力しかない。

コントロールできない自分が、怖い。

誰かを傷つけてしまいそうで、怖い。

カエデの心配そうな顔を見ていると、胸が締め付けられる。


── すると。


ローザ「ツバキ様」


ローザが小さく手を挙げた。


ローザ「先ほどから観測している魔力の変動についてですが……気になる点がございます」


ツバキ「え……なにそれ、また暴走系?」


ローザは静かに頷き、手元の記録をめくる。


ローザ「ツバキ様の魔力は……通常の魔法と違って、信仰でも制御でもなく、内面の衝動に反応して膨張していくようです」


ツバキ「……衝動?」


ローザ「はい。つまり──ツバキ様が何かを”強く願うほど”──魔力は膨れ上がり、暴走へと傾くのです」


ツバキ「……じゃあ、私の”このままじゃダメ”って気持ちが……?」


ローザ「それすらも、魔力を肥大化させてしまうのです。まるで、感情そのものが、燃料のように」


ツバキ「じゃ、じゃあ私が落ち込んでも……?…もしさ……私が誰かを”好きかも”って思った瞬間、超新星爆発したらどうするのよッ!?」


私が頭を抱えながら叫んだ。


ローザ「……乙女超新星爆発、ですか?」


まじめな顔でローザがメモを取りはじめる。


カエデ「わあ……それ、ちょっとロマンチック……見たいかも…(きゅん)」


カエデが きゅん とした後に うどん をすすった。


ツバキ「ロマンと絶滅が隣り合わせなんだけど!!??」


カエデに軽くチョップ(ツッコミ)をしながら言う。


カエデ「あいたw」


カエデが笑った。


ローザ「大丈夫ですよ。ツバキ様。力をコントロールするのも、成長の一部です。それに──ツバキ様が本当に自分らしくいられるようになったから、きっと大丈夫です」


ローザが優しく微笑む。彼女は夜空を見上げた。


その言葉に、胸が温かくなった。


──翌朝。


空を見上げると、青い空に、うっすらと雲が流れている。

風が頬を撫でて、新しい一日の始まりを告げている。


ツバキ「さ、行こうか」


私は進み出す。

“ツバキ”としての道を──。


完璧じゃなくても、暴走しちゃっても。

それが今の私だから。


ツバキ「私は……私……か。」


小声で呟いたつもりがカエデが私を覗き込んで言った。


カエデ「うんっ!ツバキはツバキのままでいいんだよ!」


ふわっと隣で笑ったカエデが、何気なく言った。


それはどんな祝福より、優しくてまっすぐな──


勇者の言葉だった。


(つづく)


◇◇◇


──今週のカイ様語録──

『感情とは、制御不能な光。

 ──だが俺は、うどんをすする!』

(※つまり、うどんがうめぇ)


解説:

TVアニメ《堕光のカイ》第5069話より抜粋。

感情に反応して力が暴走する”聖女兵器”との戦闘で、カイ様が自らの心を沈めるために行った儀式。

それが、湯気立ち上るうどんを「すーっ」と啜る行為であった。


◇◇◇


おまけ


《カメリア聖典・信徒の断章》

記録者:ローザ

・「うどんで人は救えるんだ……!」(信徒Lv.1)

・「うどん派とそば派で宗教戦争が起きそう」(信徒Lv.7)

・「むせたら鼻からうどん出た。たぶん神のお告げだよね」(カエデ)

・「鼻より出でし白き麺、これを『導きの糸』と呼ぶ」(ローザ)

・「我が魂は、聖なる湯気に導かれ、うどんの理へ至れり──」(ツバキ)

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