#099 : 竜王の矜持☆正義の一閃
◆ 王城・城門前広場
──あっ。
サクラ「……あー、やだやだ。正義って書いて“めんどくさい”って読むやつだ、あれ」
私の視界の端に、白銀の鎧が見えた。
あの正義の女──ユリシア…ユリ様だ。
そう思ったと同時に反射的に、近くにいた“手頃な辰夫”を掴んでいた。
むんず!
辰夫「えっ?」
サクラ「──辰夫ロケットォゥッ!!!」
辰夫「ええええええええええええッッ!?」
エスト『ひぃッ!?』(すたたたたー!)
小娘は飛んでいく辰夫を見て逃げた。
次はエストミサイルだと悟ったらしい。賢い。かわいい。
その一方。
辰夫(人型)がキリモミ回転で、鋼鉄の弾丸のようにユリシアへと飛んでいく。
辰夫「いいいいいいッ!!」
ガァァァァン!!
火花が散った。
ユリシアは即座に大剣を構えたけど、その衝撃で足元の石畳が砕けてひび割れた。
ユリ様「……ふん。不意打ちとは姑息な。」
サクラ「辰夫。その正義バカはお前に任せた」
私は軽く顎でユリ様を指す。
辰夫「いきなりロケットするから、文句のひとつも言いたかったところですが……」
(沈黙)
辰夫「ハハッ!!!……それなら溜飲が下がりますなぁ!」
辰夫は軽やかに笑って、すっと地面に降り立った。
彼は軍服の上着を脱ぎ捨て、ゆっくりと前に出た。
竜ではなく、人の姿のままで。
辰夫「この人型で戦うのは、実に──数百年ぶり」
サクラ「おいおい、気合入りすぎでしょ。殺すなよ?面倒だから」
エスト『ええ〜!?辰夫いいなぁ〜戦いたい〜!お姉ちゃん〜私も〜!』
サクラ「だーめ」
エスト『んもー!』
ほっぺた膨らませて抗議してくる小娘が、まあ、かわいい。
(小娘は怖い思いや痛い思いはしなくていいのよ。そういうのは私と主に辰夫と辰美の役目)
──激突、開始。
辰夫「竜爪ッ!!」
ユリ様「──ッ遅い!」
風を裂く拳、鉄を打ち抜く刃。
辰夫の拳を、ユリシアは紙一重でかわした。
ユリ様「聖撃・穿剣!!」
銀の一閃が火花を散らし、辰夫の肩をかすめる。
ガッ!!
辰夫の反撃の拳が地面を抉り、石片が宙を舞った。
土煙の中、ふたりはすでに跳び退き、距離を取っていた。
──静寂。
──天の声──
*本作はコメディ小説です。
*ただいま、バトル要素が濃すぎてジャンルを一時的に見失っております。
*作者が一番ビックリしてます。
*こういうのも書けるんだ…私…?
*私…成長している…?って言ってます。
*作者が「ジャンプの掲載順、今どこだっけ?」みたいな顔してます。
*作者もバカです。もうしばらくお待ちください。
───────
辰夫「……強いな。」
ユリ様「そちらも、恐ろしい反応速度ですな」
二人ともニヤリと笑った。
息を切らす気配もない。
拳に宿る意志。剣に宿る魔力。
周囲の空間が軋み始めていた。
サクラ「……え、ちょっと待って」
私は眉をしかめ、ぽつりと漏らす。
サクラ「あれ?ヘタレ辰夫だよね?……なんか、空気読んでなくね?」
エスト『ねー!?お姉ちゃんだったら、戦い始めて3秒でオチつけて笑い取ってるよ!?』
小娘がツッコミを入れてくる。やるじゃん。
──目の前では地面が爆砕し、戦士たちが飛び交っていた。
辰夫「竜爪、連弾──壱、弐、参!!」
辰夫の拳が空間を断ち切るように繰り出される。
それをユリシアは最小限の動きで回避、防御。
──そして。
地面が砕け、門柱が崩れ、城壁が揺れた。
ユリ様「この距離なら──」
ユリシアが剣を構えた瞬間、剣身に電光が走る。
辰夫「雷撃剣・天雷一閃!!」
バリバリバリバリッ!!
雷鳴のごとき斬撃が、辰夫へと駆け抜ける。
辰夫「おお!?」
辰夫の左腕に、より濃密な竜鱗が浮かび上がった。
ガガガガガッ!!
雷撃が竜鱗に弾かれ、四方八方に散っていく。
石畳に着弾した雷が、次々と爆発した。
ユリ様「…!?……何者だ貴様……雷をも弾くとは」
辰夫「はっはっは!結構痺れましたぞ」
辰夫が苦笑しながら左腕を振る。
ユリ様「しかし──まだまだ!」
ユリシアが剣を両手で握り直す。
ユリ様「雷神招来・連続雷撃!!」
ドドドドド!! バリバリバリ!!
──天から、無数の雷が降り注いだ。
サクラ「うわあああああ!?」
エスト『きゃあああああ!?』
サクラ「おい!こっちまで飛んできてるぞ!?」
私と小娘の目の前に雷が落ちた。反射的にダッシュした。マジ危ねぇ。
その中で──辰夫は冷静に構えを取っていた。
辰夫「竜鱗!!」
左半身全体が、鎧のような竜鱗で覆われた。
バリバリガガガガガッ!!
雷撃を、竜鱗が次々と弾いていく。
まるで雷雨の中で傘を差してるかのような余裕っぷり。
辰夫「行くぞッ!!人間ッ!!」
ユリ様「来いッ!!」
激突。
雷鳴のような衝撃音。視界が白く染まる。
──そして、土煙を裂いて、ふたりは同時に飛び出した。
ユリシアの剣が鋭く袈裟斬りに閃く。
辰夫の竜鱗の腕が、それを受け止める。
ギィィィィン!!
火花と雷光が飛び散った。
──その時。
辰夫「そろそろ──温めていた“奥の手”を出すぞ?」
辰夫が口元だけで笑った。
辰夫「おおぉぉぉぉおおお!!」
辰夫が叫ぶと同時に全身に鱗が走る。
そして左半身が、竜へと変貌。
──ドラゴン・ハーフモード。
サクラ「ダサッ!左半分ドラゴンで右半分人型!」
エスト『上半身とか下半身じゃなくて左右が半分なんだ…』
私と小娘はヤジを飛ばす。
ユリ様「……なるほど、本体はドラゴンか…ふふ…恐ろしいな…」
辰夫「そうだ。本来の姿だと、城が壊れるからな──」
サクラ&エスト『「アイツらあの姿にツッコまないの?」』
私と小娘がツッコむ。
ユリ様「いくぞ!はぁああああああ!」
辰夫「おう!うぉおおおおおおお!」
盛り上がるユリ様と辰夫。
完全スルーされる私たち。
サクラ「無視…?…私たち…目立ってなくね?」
エスト『そうだよね……』
私が不満を漏らすと小娘も不安げに答える。
──もはや、笑い声すら入る余地がなかった。
その直後 ──。
ユリ様「雷鳴剣・最終奥義──神雷断絶剣!!」
サクラ「え?ちょっと待って!?名前が長い!!」
エスト『全部漢字なんて覚えられないよ…』
よし、魔王軍は漢字だけの長い技名を付けたら死刑というルールを追加しよう。
ユリシアの剣が、これまでとは桁違いの雷撃を迸らせた。
ピカァァァァァァッ!!ドゴォォォォン!!
空が真っ白に染まり、轟音が王都全体を揺らした。
辰夫「おおおおお!?」
辰夫の竜鱗が、雷の奔流を必死に受け止めていた。
バリバリバリバリッ!ガガガガガッ!
──さすがの竜鱗も、限界に近づいていた。
辰夫「くっ……これは……」
ユリ様「はああああッ!!」
ユリシアの渾身の一撃。
辰夫の竜鱗防御。
──ドゴォォォォォォン!!
衝撃が王都の空気を震わせる。
(つづく)
作者「あれ!?これジャンプ連載してるの!?(混乱)」