その人をその人と認識するのは…。
御子神は思考する。
【その人をその人と認識するのは…。何方を指すのであろうか?肉体か…。精神か…。それとも…。その二つが相俟ってか…。】
【その人をその人と形成するのは…。手紙に現れるかの様な【歴史】なのだろう。その人が歩んできた【歴史】に違いない。】
【だとしたら…。その人をその人として証明するのには、その人以外、誰が証明出来るのだろう…。】
「まぁ…。」
後方から聞こえる声が御子神を思考の海から引き上げた。
「論より証拠だよな…。だからさ…。」
そう言った声の主は…。何やら鞄を開いている様だった。
御子神は、カウンターに置かれている磨かれた金属製の冷蔵庫越しに、その姿を見ている。
後方にいる声の主は数枚の紙を取り出しながら
「手紙に書かれている方法によると、1人で行わなければならないのだろ?だからさ…。各自で…。」
と言い…。
各々の前に、その紙を並べた。
【あの紙は手紙のコピー?】
「オカルト研究会として、試さずにはいられないだろ?」
声の主はそう続けた。
鞄から1枚の紙がヒラリと床に落下する。彼等は誰一人として気付いてはいない様子であった。
「死者が蘇るのか…。」
その後、暫く彼等は雑談するとCafeを後にしたのだった。