彷徨える魂よ。黄泉から帰り給え。
「だったらさ。手紙に書いてある方法を実践したらどうなるのだろう?もし手紙に書かれているのが真実だとしたら…。」
【死人が蘇る?】
御子神の脳内に、その言葉が浮かんだ。
御子神は人差し指を、ほんの少しだけ曲げて唇に当てる。
【いや。そんな事は有り得ない。死人が蘇る等と云うのは架空の物語の中にしか存在はしないのだ。】
御子神は思考を巡らせていく。
【だが彼等の会話を聞く限りでは…。彼等は故人から手紙が届いていると思っている事は間違いないのだろう。そして、その手紙には蘇りの方法が書かれている…。】
「でも…。よくよく考えてみるとさ…。鷹山さんの葬儀に行ったよな?火葬場にも行った…。」
声の主は続ける。
「死者が蘇生する事は極稀にあるんだよ。死亡診断された遺体が遺体安置所で息を吹き返したとか…。死後数日経過した後で息を吹き返したとか。そういうケースがネットでニュースになったりするだろ?だけどさ…。鷹山さんは、そうじゃないよな?火葬されて骨だけになってたよな??」
【あぁ。そうか…。】
御子神は心で呟く。
【肉体は存在してない…。例え、魂が残っていても…。帰るべき場所が無いと云う事か…】
「骨から身体が再生する事なんて…。絵空事だよ。有り得ない。」
「でも…。この手紙は間違いなく鷹山さんが書いたと想う…。」
「誰かが似せたんだろ?」
「似せる事に意味がある?」
【そうなのだ。誰かが鷹山さんのフリをしていると仮定する事が何よりもシックリとくる。違和感は無いのだ。だけど…。】
「だとしたら手紙を書いた人物は、鷹山さんの事を熟知している人物になるよな…。」
沈黙が訪れる。
その沈黙は御子神の思考を深めていったのだった。