死んでいるはずなんだ…。
「死んでいるはずだろ?あの人達の遺体だって司法解剖の結果で証明されていたじゃないか…。だから…。」
ソコで声の主は1度言葉を区切りー。
ーこの手紙の送り主が鷹山さんなのはオカシイよな?
と震えた声で云った。
【鷹山】その名前は…。
御子神の持つ情報、つまりは樹海で遺体として発見された人の名前と一致する。
「でも…。あの手紙の独特な文字の書き方も、言葉の使い方、選び方までも…。鷹山さんだよ…。」
そう、女性の声は告げた。
【確かに…。】
御子神は想う。
【手紙には、その人独特の雰囲気がある。つまり手紙には、その人の歴史の様なモノが刻まれるのだろう。】
「だとしたら…。この手紙は何時に書かれたと云うんだ?消印は3日前なんだぞ…。鷹山さんが死ぬ前なのか?それとも、この手紙に書かれている方法で…。」
【書かれている方法??】
御子神は彼等の会話から意識を反らす事が出来ない。
「鷹山さんが蘇って書いたとでも云うのか?」
少しの間、沈黙があった。
【それは…。有り得ない事だ。命を失ったのなら、それは終わりと云う事なのだ。人は死んだら灰になるだけだ…。】
そう御子神は想う。そして御子神の考えは間違えてはいないのだろう。
「書かれている事が真実だとしたら…。鷹山さんの母親に聞いてみれば何か解るんじゃない?」
【きっと手紙には、こう書かれているのではないだろうか?】
【母親に蘇らせてもらったのだと。そして…。その方法も…。】
「そんな事、聞ける訳ないだろ?それこそ悪巫山戯ではすまないだろ…。」
「そうだよね…。」
御子神は窓の外に瞳を向ける。
晴れていた筈の空は…。何時しか…。憂鬱そうな雨を降らせていた。