ほんの少し前の事。
後方にいる彼等から発せられた言葉から想像するに、どうやら聖堂大学に通っている学生の様だった。そしてその会話の内容から数ヶ月前に亡くなった先輩から手紙が届いたのだと判明した。
確かに数ヶ月前、御子神が住んでいる街の大学生4人が卒業旅行の最中に行方不明となった事件があった。御子神が、その事件について関係している筈はなく、知識として持ち合わせているのは、報道番組で得た情報だけだ。
その情報と今まで聞いた会話の内容から…。
御子神の脳内で1つの物語が形作られたのだった。
行方不明となったその4人は聖堂大学のオカルト研究会に所属していた。そして…。彼等は卒業の想い出として、【樹海】でキャンプをする事にしたらしかった。其所は自然保護区域で、キャンプ等は禁止されている場所の筈だ。だがその樹海は自殺の名所としても知られていて、その樹海には度々、足を踏み入れる者が後を絶たない…。
オカルト研究会として最期に何か、そう幽霊の様な存在に遭遇する事を夢見ていたのだろう。
しかし、その場所は自殺行為を抑止する為、巡回する人が数人交代で見回っている。1人で軽装なら何とかすり抜けられそうなものだが、数人で況してやキャンプの為の荷物を抱えて立ち入る事は容易ではない筈だ…。
彼等は幸か不幸か…。
それとも、その樹海に呼び込まれたのか…。
彼等は樹海の奥深くへと足を踏み入れる事に成功したのだった。