また会えたねを伝えたくて
あまり上手くないかも知れないし、二番煎じかもしれないけど、暖かい目で、読んでいただければ幸いです。
何処かの波打ち際。
いつの日かの記憶。
「じゃあね、またね」
そう、僕に告げる彼女。
僕は泣くのを必死に堪えながら、
「じゃあね、またね」
これが、僕が君に「じゃあね、また明日ね」
と言えなくなった日。
夢から覚める。
最近はどうも同じ夢ばかり見る。
見る夢は、あの日じゃあね、またねと僕と約束をして、引っ越して遠くに行ってしまった子の夢。
また会えたら、いいのだが。
そんな事を考えながらベッドから降りて1階に向かう。
今日は幸いなことに休日。
どんな時間に起きてもいいのだが、
あの夢を見始める様になってからというもの、
体が勝手に朝早くに目覚めてしまう。
全く、自分ながらに難儀な体である。
「やっぱり誰も起きてないよなぁ」
とそんなことをつい口に出す。それもそのはず。
スマホの時間を見ると時計は3時30分過ぎを指している。
平日ならいざ知らず、休日の、土曜日のこんな日に起きているのは、俺だけだった。
適当な服を着て、上に黒の薄目のカーディガンを羽織り、丈が長いジーパンを履き、まだ日が登らぬ街中を歩く。
町と言ってもほぼ田舎のようなもので、
特に何も無いのだが……。
春だというのに日が沈んでいるからか少し肌寒さを感じる。
そして、やはりと言うかあまり人気を感じない。
1人残された街を歩く。
それがここ最近彼女に起こされてしまうの僕の日課になっていた。
普段の道を、昨日とは違う道に逸れると、新しい出会いがあるような気がするから。だからこの時間は好きだった。
しばらく歩いた頃、見慣れた場所がふと目に映った。
視界に映るのは
彼女の元住んでいた家の近く。
2人で目印にした公園。
彼女の家は今はもう別の家庭の物になっているだろうか。
その事に少し悲しみを覚えながら歩を進める。
そろそろ帰ろうかな、と思いながら。
すると、何故か、聞きなれた声がした気がした。
僕はその声が誰か、思考より先に体は動いていた。
「〜〜〜♪〜〜〜〜〜♪」
聞きなれた、歌。
あの子の歌。
忘れもしない。
よく、あの子が歌っていた歌だ。
僕は彼女を求めるように歩を進める。
彼女に、また会えたね、そう伝えたい、その一心で。
気づいたら僕は駆け出していた……。
ここの道は真っ直ぐ、そしてそこの曲がり角を右、そして左。
そこにいたのは…彼女、だった。
いや、違うのか、正確には、君だったものだろうか。
僕が今見ているものはお墓だ。
波打ち際の、あのお墓。
家族の強い意思で、波打ち際の崖の、2人で最後に別れた場所。
思い出した、全て思い出した。
「あぁぁぁ……そっか、そうだよな、君はあの後……」
強く吐き気がした、思い出した、蘇って来てしまった記憶とともに。
その吐き出したものは涙のようだった。
冷静な思考、僕は冷静だ。大丈夫、おちついている。
あの日、じゃあね、またね。と言った彼女は。
もう二度と、またねとは言えない。
彼女は死んだ。あの日目の前で彼女は海に飛び降りた。
自分が傷つかないように、死んでないことにした。
彼女は引っ越した。と、思い込んで。
きっと…また、僕はここに来るだろう。
……だってお別れができていないから。
またここに来る事になるんだろう。
……また君に呼ばれた気がして来てしまうだろう。
きっと、このループは続いてしまうのだろう。
そして、僕は家に着いた頃には全てを忘れる。
簡単なことだ。全てを忘れて、また繰り返す。
「ねぇ私、貴方のこと好きなんだよね。」
昔の君との話。
「僕も、君のことが好きだ。」
昔の僕の言葉。
泣き続けている僕の頭にひたすら響いている。
君のいない世界は何処か息苦しくて。
……変わりたく、なくて。忘れたくなくて。
「もう気にしなくていいんだよ。キミはキミの人生を歩んで。」
何処からか君の声がした。
いや違う。目の前に。そこにいるでは無いか。
君がいる。そこにいる。
「心配だから来ちゃった。」
「え……。君?」
「そういう所がキミの悪い癖だよ。全く。私はここにいるよ。なんにも変わってないね。」
少し嬉しそうに語る君。
「でもね、変わらなくちゃいけない。見てられないな。って思って私はここに来た。少しだけ神様に猶予を貰ってね。」
「きっと、私はもうすぐ消える。」
これが、最後のお別れになるだろう。
だから、紡げ。ここで終わらせられるように。
きっと今まで見てくれていた彼女にこれ以上心配をかけないために。
上手く言葉が出なくてもいい。
自分の言葉で綴ろう。
この物語のエピローグを始めなくてはならない。
君は死んだ。揺らぎのない事実。
そこにもう君はいないから。次の道に、進まなくちゃならない。
「なぁ……約束をしよう。」
「なぁに、約束って。」
「じゃあね、またね。また、いつかは知らないけど、天国とかあるならさ、そこで会えるかな?」
一瞬彼女は面食らった様な顔をしたが、直ぐに切りかえ、満面の笑みと少しの涙と共にこう、短く返事を返す。
「うん!また、一緒に。」
その言葉を言い終えると、君は満足気な笑みを浮かべながら。
「ごめんね、時間、来ちゃったみたい。」
彼女の姿が透けていく。
きっと、もう長くはない。
「貴方に会えて幸せだったよ」
「僕もだよ……僕も君に会えて幸せだった。」
「じゃあね、またね」
「……じゃあね、また、またね」
これが僕らのエンディングだ。
おしまい。彼女の体が完全に透けて、見えなくなる。
声ももう聞こえない。
それでいい。彼女とは、いつかきっと、また会える。
じゃあね、またね。
自分の書きたい子達は書けたかな……多分。
こういう悲しい系の愛も好きだけど両片思いのも書きたいなぁ。
時間を下さい(切実)
自分の書きたい物は書けたかな。
それはそれとして、ここまで読んでくれてありがとうございます。
また機会があれば、読んでいただけると幸いです。