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発見

作者: 水瀬

 もう何もしたくない。 

 今までだって本気を出さなくたって15年不自由なく生きてこられたんだから、何もしなくなって大丈夫か。


 4月、私はいわゆる高校デビューをした。

 度が強すぎて目が小さく見える眼鏡を外し、前髪も作った。今まできちんと閉めていた第一ボタンをだらしなく開け、緩くネクタイを結ぶ。

 高校生なんてこんなものだ。今の高校生活に不満はない。が、私はある問題を抱えている。

 やる気が出ない。

 別に無理にやる気を出す必要はないと思ってはいるが、学校からの課題を目の前にした私は、やる気はいったいどこからやってくるものだろうと考え続けている。その時間さえも無駄であると分かってはいるが、どうにもペンが進まない。もういっそのことこのまま何もせずに高校生活を棒に振ることができたらどれだけ楽だろうか。 

 そう思いながらも、それでは駄目だと心が訴える。きちんと勉強をして、部活をして、遊びにも行って、充実した高校生活を送るんだ、と。

 そんな生活は、今の私からは到底想像もつかない。朝はギリギリまで寝ているのに身だしなみはしっかりしたい、と鏡の前で寝癖やら何やらと格闘しているから遅刻しそうになるし、学校ではまともに生活している方だと思うが、家に帰ってきた途端にスマホを眺めてダラダラゴロゴロしているし。今の私は、何もかも中途半端だ。中途半端になるくらいなら、いっそダメ人間になってしまった方が清々しいくらいなんじゃないか。

 

 そう考えた私は、その日から本当に何もしなくなった。

 わけじゃない。中途半端な私のままだ。何もしない努力はしている。けれど周りのみんなが授業をちゃんと受けて、課題をきちんと提出に向けて終わらせている姿を見ると、どうしても胸がうずく。そして、みんなと同じように授業を受け、課題を提出しているのだ。ダメ人間になれれば何もしなくて済むのに、なんでなれないかな。どこまでも中途半端な自分に嫌気がさす。

 

 そんな生活を1か月ほど続けたある日、高校生になって初めての定期考査の2週間前を迎えた。これまでの生活と同じように、みんなが努力している姿に焦りを覚え、テスト対策をした。

 

 結果は、真ん中より少し下、というなんともいえない順位だった。どうしてこうもパッとしないかな。

 そう思いながらも、今の私は、何もしないことを心がける生活を送り始めてすぐのときとは自分の考えが変わってきているのに気づいていた。

 

 私は、何もしないで生きていくことはできない。ダメ人間になろうと努力をしても、なれなかった。だから今度は、今までと逆の方向に努力をしよう。中途半端にならないためのもう1つの方法は、自分を高めるための努力をすることしかない。

 よし、今日から少しずつ頑張ってみるか。

 

 あ、やる気って、ここから出てくるものかもね。












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