1.
件のその日、私はまどか、妹の綾、まどかの妹のももかと公園で遊ぶ約束をしていた。公園に来たのはいいものの、結局遊ぶものもなかったので、ブランコで二人乗りをしようとした。
すると、
「ねえ、なんかあのベンチにいる人、さっきから全然動いてないよ?」
と、ももかが突然言い出した。
「まさか、幽霊!?」
まどかのオカルトマニアの血が騒いだようだ。というか...
「いるわけねーだろ。ってゆーかまどか、まだそんなこと信じてんの?」
まどかは出会った小1のときから幽霊だの妖怪だの、オカルトなことが大好きだった。もうそろそろほとぼりが冷めるころだと思っていたのだが、まだその気が残っていたとはさすがに私も妹たちも呆れ気味だ。
「私のオカルトマニアの血は一生騒ぎ続けるって決まってるの!」
はぁ...
「幽霊だのなんだのって言って騒いでるお姉ちゃんは置いといて、あの人大丈夫なのかな?
気分が悪くて座ってる、とかだったら助けてあげなきゃだよね...」
...少しはももかのこういう優しいところをまどかにも見習ってほしいものだな。少しばかり気が弱いのが玉に瑕だけど。
とりあえずももかの言う通り、一人で興奮しているまどかは放っておいて、三人で謎の男の観察を始める。
年のころは、高校生、いや、大学生くらいだろうか。とにかく大人びた雰囲気で、相変わらず考え事を続けているようだった。そして私の視力2.0くらいの目で注意深く見てみると、近くに何かが浮かんでいるように見えた。
「何かが浮かんでるように見えるね」
私だけでなく綾にも同じように見えたのだろう、綾がそう小さくつぶやく。
そんな小さなつぶやきにもまどかは反応し、
「なに!どこ!?浮かんでる!?、、、そんなのUFO以外の何物でもないじゃん!
そんな面白いものなんで言ってくれないのー...恨むよ?」
何を一人で勝手に話を進めているんだか。無理やりオカルトの話にこじつけるのもさすがとしか言いようがない。
見かねたももかに、
「こんなところにUFOがいるわけないでしょ。まず現実にいない可能性のほうが高いんだから、もっとお姉ちゃんは現実を見たほうがいいよ」
とたしなめられているしまつだった。ほんとこの二人は姉と妹が逆転してる気がするな...
そんなバカ騒ぎをしていると、声に気づいたのだろう、謎の物体が近づいてきていた。
近くで見ると、やはりUFOなどではなかった。というより、この姿は...
「おとぎ話に出てくるような妖精っぽいね」
ももかの言う通り、その姿は小人に羽が付いたような、まるで小さな頃に読んだ絵本の妖精そのものだった。
近づいてきていたその妖精は私たちの前で静止して、そのままぺこりとお辞儀をして言葉を発した。
「初めまして、私はシャドーと申します。以後お見知りおきを。」
その光景を、私たちは口を開けたまま見ていた。それでもシャドーと名乗った妖精はそのまま言葉を続けた。
「あなた方が私を見ることができる、ということは・・・あなた方が”選ばれし者”なのですね!?
やっと再び目に写すことができて、私は至極幸せでございます...」
・・・えーっと、一人で感動してるところ悪いんだけど、話が全く分からない!
「「「「”選ばれし者”って何!?」」」」
私たち四人の声がハモった。が、その直後にはシャドーの間抜けな聞こえる声が返ってきた。
「・・・え?」
これが私たちと謎の妖精との不思議な出会いだった。