小さな食堂
馬車は港に付き、船に乗り換え、船は海を走る。
広く青い海を見ながら、リンは何の学校に通おうか迷っていた。
ラージリア国には沢山の学校があり、夜間のみの学校や曜日指定できる学校もあり便利がゆえにあともう一歩絞りきれなかったのだ。
船の上で一日中、パンフレット見ていたが船酔いしただけで全く決める方ができず、下船に至った。
そこから、また馬車に揺られ目的の町に着き、徒歩で雇い主のところへ向かった。
スモーア国を出て二日経っていた。
小さな食堂に着くと、窓から外を伺っていた女性が笑みを浮かべて戸を開け、
「ようこそ!遠いところから!明日からお願いするわね!疲れたでしょ。さあ、入って。私はマリナって言うの。よろしくね。」
と招き入れてくれた。
「こちらこそ、宜しくお願いします。改めまして、リンです。学校に通いながらという条件を含め受け入れて下さって、ありがとうございます。」
ニコニコとリンの自己紹介を聞いていたマリナが「ヨーゼフっ!」と厨房に叫ぶ。
すると、大柄なコック姿の男が現れた。
「夫のヨーゼフよ。夫婦二人で切り盛りしていたから、助かったわ!学校にはもちろん行っていいのよ。ラージリアにはよく資格を取りに留学してくるの!ねぇ、あなた。」
大柄なコック姿の男が頷き、
「部屋の準備も出来てるから、安心して勉学と勤労に励んでほしい。無理な時はいつだって言ってくれていいさ。ラージリアでは俺たちがリンの身元引き受け人なんだから。」
手紙でやり取りしていた通りの優しく機転の効く夫婦だとリンは思った。
「ありがとうございます。ただ、まだどの学校に行けばよいか迷っているんです。医師を補助する衛生師学校か理髪店の学校か、それから…」
「衛生師は難しいけど働き口はいくらでもあるし、理髪師は自分の店を出すまでに数十年かかるかけれど人気の資格だし、他には?何でも言って!」
マリナは興奮気味に言葉を遮るが色々なことを教えてくれる。その話を頭に叩き込みながら、
「やはり、働き口が沢山あって食いっぱぐれしない衛生師の学校にしようと思います!入学試験が一週間後なのでそれまでお昼の時間で働きたいのですがいいですか?」
「ああ、休憩を含め6時間以上働いてくれれば問題ないよ。一週間のシフトを毎週木曜日までに書いて出してくれれば、融通も利かせられるし、おやすみも週に二日とってね。手紙で送った契約書通りだから、細かいことは契約書をゆっくり見直してくれればいいよ。」
スモーア国ではかなりの高待遇に入るこの食堂でさえ、ラージリア国では普通なのだ。取り寄せて購読していた各国の新聞を見て落差に驚愕したものだ。
ーーよし、明日は9時起きで10時から初仕事だ!ーー
リンは案内された部屋で少ない荷解きを終え、試験の会場や衛生師の試験内容を見直し、シャワーを浴びて就寝した。