救出されて②
下山すると救護部隊が待ち構えていた。
ローランより救護部隊に引き渡されると、まず、ヅッタの静かな雷が落ちた。
「意思があるのだから、行動に移すのはわかる。ただ、あの現場は指示や報告なしで動いていい現場ではなかった。わかるだろう?犯罪者達が近くにいる状態だったんだ。ユリアの件は指示したカラタに責任がある。」
そう言いながらリンの両手両腕の傷を見て、
「ただ、リンの場合は違う。お前は自分で一人行動をしたんだ。『ちょっとすぐそこだから』それがどんなに危険かわかったか?」
消毒液を浸した綿を傷に当てながら諭すように言った。
「はい。申し訳ありませんでした。」
「内勤の時に言ったよな。『人の命を救えると思うな』って。リンが一人で手を伸ばして敵う相手だと思ったのか?その驕りがお前自身の命を危険に晒したんだ。」
「もちろん覚えています」と言いたかったが情けなくて一拍返事を飲み込んでしまう。
「こうも言った。『自分のできる最善を尽くせ』覚えてるか?」
「はいっ、勿論です。」
情けなくて眼に涙が溜まっていく。
それを溢れさせないように堪えながら返事をした。
「じゃあそのあと、俺は何て言った?」
「…っ、『そのために学んで行くんだ。』そう、仰っいましたっ」
瞬きをすると涙が溢れてしまいそうだ。
「そうだ。だから、次は気をつけろ。」
「はいっ。」
しっかり返事をした後俯くと、包帯を巻き終えたヅッタが、
「連れ去られてからは最善を尽くし、同僚を見捨てず帰って来た。恐怖の中よくやった。無理するなよ。お疲れ様。」
と言って肩を優しく叩いてくれた。
その振動で涙が地面に落ちていく。そのまま重力に任せて少しだけ泣いたが、涙を拭いて立ち上がり、先輩達へ心配をかけたことに対する謝罪に向かった。
皆、「大丈夫だ。無事で何よりだ。」と言ってくれたため、涙腺がまた弛みそうになったが、ザーロリフ教育担当がやって来たため涙腺は速やかに締まった。
勿論きっちり注意され、ユリアが先に搬送された職場に帰ることとなった。
職場に戻ると、
まず、テオが飛んで来て、
「大丈夫か?飛んだ目にあったな。腕と手はどうしたんだ?包帯だらけしゃないか!」
もの凄い勢いで捲し立てながらリンの怪我の確認をしていく。
「私、ユリアの所に行きたいんだけど。ユリアはどんな状態なの?」
テオは一通りの包帯の状態を見た後ため息を吐きながら、
「まず、自分の心配しろよ。」
と呟き、
「ユリアは帰って来た時、意識が朦朧としてたんだ。もうすぐ解毒剤が効いてくる頃だ。一緒に行ってみよう。」
「こっちの部屋だ」と言って歩き出す。
個室の前に着くと、テオがノックする。
トントン
戸を開けるとユリアが仰臥位で目を閉じていた。手には点滴の針が刺さり、一定の間隔で滴下されて行く。
リンはベットへ近づき、側の椅子に腰掛けた。
あまりの部屋の静けさに思わずユリアに呼びかける。
「ユリア。帰って来たのよ。わかる?」
すると、ユリアはゆっくりと開眼し天井の一点を見つめながら、
「天国か地獄かと思った。」
と言った。
病室に言葉が響いていく。
「馬鹿言わないで!そんな訳ないでしょ。」
思わず大声で言うとユリアがリンを見て、顔を歪めた。
「そうよね。この世じゃないところにリンが居たら困るもの。」
歪めた顔から涙が一気に溢れ落ちて行く。
「リンが死んだらどうしようかと思った。」
止まらない涙がユリアの枕に広がる黒髪を濡らす。
「馬鹿ね。私もユリアも死ぬ訳ないじゃない。言ったでしょ、『楽勝だわ』って。」
ユリアの手を握り笑うと、
「そうね、そうよね。ほんとう、ほんとに」
しゃくり上げ涙を流し、
「ほんとうに、楽勝だったわ。わたし、『太陽の女神』だもの。リンに、力を与えるくらい、わけないわ。」
嗚咽を漏らしながら笑った。
「残念ね、助けに来たのは『月の妖精』よ。『太陽の女神』の御加護は次に取っておくことにしたの。」
ユリアは泣き腫らした目を隠しながら「それは期待していいわよ」と言った。
テオは2人を見守るようにその場にいるだけで何も言わず、時間が来たら「ゆっくり休めよ」とユリアに言い残してリンと退室した。
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