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冒険の始まりと出会い 7


『魔力開放! アクト様、どうかご無事で……』

「ちょーっと待った!」


 光りだしたリリアは次第にその光を止め、元に戻った。


『アクト、様?』

「なぁ、魔力って魔石からしか吸収できないのか?」

『と、いいますと?』

「人にも魔力ってあるだろ? 意図的に、俺の魔力をリリアに送れないかなって?」

『人の魔力を受け取ったことはありません。同じ魔力には違いないと思いますが……』


――シャァァァァ!


 ウルフの爪が俺の頬をかすめる。

危ない危ない。少しだけ頬から血が流れ出るのを感じた。


「やってみよう。どうせ、このまま二人で倒れるだけだろ? 二人で生きようぜ!」

『アクト様……』

「俺はリリアを守りたい。もし、リリアに力があるなら、俺にも貸してほしい。二人で生きて、もっと二人で外の世界を見てみたい!」


 俺は握ったナイフを自分の左腕に差し、切っ先に自身の血をつける。


「ぐっっ」

『アクト様!』

「い、いいから、大丈夫だ。魔力があるなら吸い込め! めいいっぱい吸い込め!」


 リリアが光りだす。

そして、俺の体から何かが抜けていく感覚を覚え、少しだけ全身の力が抜けていくのを感じた。


『アクト様、私はアクト様と出会えてよかったです』

「俺もだ。これからも、二人で冒険しようぜ! リリア!」


 リリアの名前を呼んだ瞬間、手に握ったナイフは眩しいくらいの光に包まれ、やがて光の粒が放たれた。

そして、放たれた光は次第に収束し、目の前で人の形になっていく。


 だんだんと目が慣れてきて、ぼんやりとした視界がはっきりとしてくる。


 その後姿は少女の姿。

ショートカットの黒い髪が風になびいてる。

振り返った少女の瞳は黒く、そして輝いており、満面の微笑みを俺に向けている。


「初めまして、アクト様」


 ボロボロの服に、擦り傷だらけの体。

腕も足も傷だらけで、顔まで汚れている。


「よっ、リリア。久しぶり」


 俺もリリアを笑顔で見つめる。

そして、俺とウルフの間に入ったリリアは、ウルフに向かって吠える。


「私の名前はリリア=ヴェトン。漆黒の名をもらい、回避の付与を与えられたナイフ! お前をこの場で倒し、アクト様と生きる!」


 リリアと俺は淡い黒い光に包まれ、少しだけ体が軽くなった気がした。


 リリアは手に持ったナイフを握りしめ、ウルフに向かって走り出した。

そして、ウルフも迎え撃つかのようにリリアに向かって前足を大きく振りかぶった。


――シャァァァァ!


 ウルフの大きな腕がリリアを直撃!

したかのように見えたが、リリアはウルフの攻撃を回避し、そのままウルフのサイドに回り込んでいる。


 何度もウルフは大きな爪でリリアを攻撃するが、その全てを躱している。


 そして、一瞬。ウルフの視界からリリア消え、その隙に力強く握りこんだナイフをウルフの胸めがけ、リリアは力いっぱい突き刺した。


「やぁぁぁぁぁぁ!」


 リリアの声がダンジョンに響き渡る。

ナイフはウルフの胸に突き刺さり、その大きな体がよろめき倒れこむ。


「リリア!」

「や、やりました! アクト様!」


 俺はリリアに向かって走り出し、そのままリリアを思いっきり抱きしめた。

俺よりも小さな体のリリア。そんな傷だらけの体で無茶しやがって……。


「リリア、大丈夫か?」

「はい! おかげさまで以前よりも力が出せました」


 抱き合う二人の距離は限りなくゼロに近い。

お互いに半泣きになりながら生き延びたことを喜び、抱きしめ合った。


「良かった、リリアのおかげで助かったよ」

「アクト様から魔力をもらったから――」


――ジャリッ


 後ろから音が聞こえた。


――シャァァ


 振り返ると倒れていたウルフが起き上がり、俺たちに向かって飛び掛かろうとしている。

死んでは、いなかったのか!


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― 新着の感想 ―
[一言] 抱き合う二人の距離は限りなくゼロに近い。 抱き合ってんだからゼロに近いではなくてゼロなんじゃ?
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