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冒険の始まりと出会い 5

「はぁぁぁ!」


 ダンジョンに響き渡る声。

朝からダンジョンの一階層に潜り、ひたすらラビットを狩っている。

小さいけど魔石も回収し、その半分以上をリリアに吸い込ませている。


 ボロボロだけど武器としては使える。

だが、ヒビを早く直さないと壊れてしまうかもしれない。


――キィィィン


 一つ、魔石をリリアに取り込む。

ほんの少しずつだけど、ヒビが修復されている。


『ふぅぅ、ありがとうございます。少しですが、力が戻ってきている気がします』


 自分の生活もあるため、全ての魔石をリリアに取り込むわけにはいかない。

もっと大きな魔石、もっと強い魔石だったら……。


 ナイフを握りしめ、リリアを見つめる。


『アクト、様?』

「すぐに直してやるよ。待ってろよ!」


 俺は立ち上がり、再びラビットを見つけ、リリアをラビットの胸に突き立てる。

一瞬で消え去るモンスター。ダンジョンは魔石を核に、モンスターを生成しているらしい。


 だが、魔石を回収してもダンジョンからモンスターはいなくならない。

そして、定期的にモンスターを狩らないと、あふれかえってしまう。


 街に冒険者は必須なのだ。

階層が深くなればなるほどモンスターは強くなっていく。

俺も、早く強くなってもっと大きな魔石を……。


『アクト様! 後ろっ!』


 考え事をしていたら、背中に痛みが走った。

ラビットに直撃をもらってしまった。


「うぐぅぅぅっ」


 地面を転がり、握ったナイフをラビットに向けて威嚇する。

唸るラビット、その数は次第に増えていく。


『アクト様! 今日は、もう終わりにしましょう! この数、危険です!』


 昨日は十匹で倒れそうになった。

目の前のラビットも昨日と同じくらい。


 この数なら何とか……。


「大丈夫。全部狩ってリリアに魔石をあげるよ。心配、しないでっ!」


 一匹ずつ確実に仕留めていく。

目の前の一匹、次に右手のラビット。

そして、三歩後退し左手のラビット。


 大丈夫、落ち着いてみればできるはず。

無茶はしない。確実に、一匹ずつ……。


――


『アクト様……』

「はぁはぁはぁ……、大丈夫。ほら、まだ動けるだろ?」


 俺は額の汗を拭き、地面に落ちた魔石をすべて回収する。

換金したらそれなりの金額になるだろう。

だが、優先はリリア。集めた魔石をすべてリリアに吸収させる。


――パキィィィン


 一つ、また一つ魔石が砕け、その淡い光がリリアに吸収されていく。


「どう? だいぶ良くなってきた?」

『おかげさまで。アクト様、本当に大丈夫ですか?』


 多少怪我もしているし、体もだるい。

だが、昨日よりはまだまし。


 ふと、人の足音が聞こえてきた。


「お、なんだ昨日の坊主じゃないか。もうダンジョンに来てるのか?」


 昨日助けてくれた人だ。

改めてお礼を言わないと。


「はい。昨日は助かりました! ありがとうございます!」


 男は俺を見ながら、にやにやしている。


「そっか、ところでこのナイフ俺が拾ったんだが、見覚えあるか?」


 使い込まれたナイフ。見覚えのある傷。

間違いなく俺のナイフだ。


「はい! それ、俺のナイフです! 見つけてくれたんですか?」

「そうか、坊主のか。昨日拾ったんだ、ダンジョンでな」

「そうなんですね、ありがとうございます!」


 手を出し、ナイフをもらおうとする。


「十万、出せるか?」

「え?」

「え? じゃなくて。十万出せるのか聞いているんだよ」

「そ、そんなお金ないです……」

「じゃぁ、しょうがないな。このナイフは換金させてもらうぜ。端金にしかならなさそうだけどな!」

「返してください! それは、俺の――」


 腹部に痛みが走る。


「お前のだって証拠はあるのか? ないだろ? だったらこれは俺の物だ。残念だったな」


 地面に転がりながら去っていく男を見る。

俺は弱い。俺は自分を守れない。


『アクト、様?』

「大丈夫。そんなに痛みはないよ」

『ですが……』

「冒険者だから。俺も冒険者だから……」


 腹部の痛みに耐えながら、壁に背をつけ少し休む。

結構気に入っていたナイフだった。でも、今の俺にはリリアがいる。


面白い、続きが気になると思っていただけた読者の皆様。


是非、ブックマークや下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると作者も喜びます。


よろしくお願いします。

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