黒き聖女と聖なる光 11
三人でダンジョンに行くことになり、以前よりも効率が良くクエストをこなす。
二人よりも三人の方が安全だし、多くの魔石を手に入れることができるようになった。
そして、三人で行動することが多くなり、自然と孤児院へも顔を出すことが多くなる。
「おーい、お土産買ってきたぞー。今日はお祝いだから、おやつも山盛りだ!」
今日もダンジョン帰りに孤児院へと顔を出す。
「おーい! にーちゃんが帰ってきたぞ!」
「おみやげ! 今日は何を買ってきてくれたの!」
「すげー、こんなにたくさん!」
すっかり歓迎ムード。
ここの子供たちともすっかり仲良くなった。
「こら! アクトさんはお客様ですよ!」
ニコアの声も孤児院に響き渡る。
「さぁ、アクト様。セーラさんを呼んできましょう!」
リリアもすっかりと慣れてしまい、子供たちと一緒に中に入っていってしまった。
「セーラさーん! 夕飯の準備をしましょう!」
「はーい、いまいきますねー」
奥の方から声が響いてきた。
リリアとセーラは子供たちに囲まれキッチンに消えていく。
「ごめんなさい、なんだかすっかり……」
「まぁ、いいんじゃないか? 子供たちも楽しそうだし、リリアもセーラも楽しんでいると思うよ」
ニコアと一緒に中に入り、少しだけ休むことにした。
「先に報酬を分けておこうか。これが、ニコアの分な」
今日のクエストもクリアできたし、魔石も多めに換金できた。
しかも、今日のクエストクリアでランクEに上がったのだ。
三階層よりも先に進むことができ、受けることができるクエストも増える。
「……少し多くはありませんか?」
「そんなことないぞ。夕飯をここでお世話になるし、少しだけニコアは多めになっているだけだ」
ニコアは少しだけ躊躇したが、そのままお金を袋に入れた。
「ありがとうございます。助かります。私も夕飯の準備してきますね……」
そして、ニコアはそのまま部屋から出て行ってしまった。
なんだか、少し暗かったような気がした。気のせいだろうか。
一緒に行動をすることになってから数日経過したが、特にニコアからは異変を感じない。
たまに変な視線を感じるだけで、何かをされるわけではない。
きっと、セーラもリリアも考えすぎだと思う。
しばらくすると、みんながやってきて、夕飯の時間となった。
子供たちも一緒に食べることになり、食卓は笑顔で埋まり、笑い声が響く。
「みんな、アクトさんたちにしっかりと感謝してくださいね」
「してまーす! にーちゃんランクアップおめでとう!」
「早く食べよう! お腹すいた!」
にぎやかな食卓。子供たちもたくさん食べ、満足しているようだ。
セーラも笑顔でみんなにご飯を分けている。
そして、夕飯も終わり、次第に子供たちは眠りについていく。
「ふぅ、みんな寝たわ」
ニコアとセーラが戻ってきた。
「みんな幸せそうな顔で、眠っていますね」
「起きているときは騒がしくて、ついつい怒ってしまうんですけどね」
四人でテーブルを囲み、少しだけこれからの事について話す。
「さて、今日ランクアップすることができた。みんなのおかげだ、ありがとう」
「やりましたね! アクト様もこれで低ランク卒業ですね!」
いつもリリアは一言多い。
誰だって初めは低ランクから始まるんだ。
「明日、三階層に行こうと思うんだけど、リリアとニコアは大丈夫か?」
三階層にはウルフが出現する。
嫌な記憶がよみがえるが、今の俺達だったら問題ないはず。
「そこまで深くいかなければ大丈夫だと思います」
「群れで来られたら大変かもしれませんが、単体ならいけますよ!」
二人とも乗り気だ。
「よし、じゃあ明日は三階層に初挑戦。決して無理はしない」
「「了解!」」
お茶を飲んでいるセーラも話し始めた。
「主様、修理用の資材が思ったよりも早く手に入り、そろそろ住めるようになります。そろそろお引越しされますか?」
俺もリリアも手伝うことが多く、たまにニコアも手伝ってくれた。
おかげさまで修理も早く進むし、ダンジョンでの稼ぎも多くなったので、早めに修理が終わったのだ。
「そうだな。いつまでも宿に住みっぱなしも悪いし、時期を見て引っ越すか」
「私はアクト様と同じ部屋ですよね!」
結局、宿の空き部屋がなかなかでなく、別の部屋を借りることはなかった。
今までずっとリリアとは同じ部屋で寝泊まりしていたのだ。
「残念ですが、一人一部屋ですね」
「そ、そんな……。アクト様、引越ししなくてもいいですよ、今のまま宿にしましょう」
「いやいや、宿代だってタダじゃないんだ。早めに引っ越そう」
「そ、そんな……」
リリアが残念がっている。
せっかく自分の部屋がもらえるのに、うれしくないのだろうか。
「お引越しされるのですね」
「あぁ、明日は初めて三階層に行くから、無理せず早めに帰ってこようか」
「そのあとお引越し準備ですかね」
「そうだな、準備が終わったら一日休んで、引越しするか」
翌日のスケジュール決まり、早めに孤児院から帰ることにする。
「じゃ、また明日な。いつも通り、ギルド前で」
「はい。明日もよろしくお願いします」
ニコアと別れの挨拶をして俺たちはニコアと別れた。
別れ際、ニコアの表情が少し暗かった、何かあるのだろうか……。




