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魔剣退治と不気味な一軒家 12


「みんなぁ、ご飯よー」

「「はぁーい」」

「お、今日もうまそうだな!」

「お母さんのご飯は世界で一番おいしいよね!」


 家族がそろって夕飯を食べる。

決して贅沢な食卓ではない。

だけど、そこには家族の幸せが、笑顔が溢れていた。


「ふふっ、今日はみんなが大好きな肉団子スープよ」

「やったぁー! お肉たくさん入れてー」

「はいはい、たくさん食べて大きくなってね!」

「うん! 早く大きくなって、冒険者になるんだ! お父さんみたいに強くて、かっこいい冒険者になる!」

「そうかそうか、じゃぁ父さんはそれまで現役で頑張らないとな!」

「だったら私は、ずっとみんなを応援しているわ。朝も、お弁当も、夕飯もずっと家族で食べましょうね」


 そんな幸せな日が、ずっと続くと思っていた。


「大丈夫か!」

「ゴホゴホッ……。だい、じょうぶよ。それよりも、みんなの、食事を……」

「何を言っている、そんな体では無理だ。待っていろ、絶対に薬を手に入れて見せるからな!」


 そして、私はいつの日か使われることがなくなり、家族もみんなバラバラになってしまった。

誰も帰ってこない家。灯りの灯らない家。誰の声もしない家。

そんな家になってしまった……。


 私はもう一度、あの声を聞きたい。

もう一度、家族の幸せを、笑顔を。

もう一度、あの光景を……。


――


「セーラ?」

「……」


 俺は野菜をセーラで切りながら考える。

セーラの望みって、ただ料理をするだけが望みってわけではなさそうだな。

セーラの望み、本当の望みって……。


 お鍋がコトコト煮えてきた。

少し味見をして、足りない味をちょいと増やす。

……こんなもんかな?


 出来上がったスープをお皿に分け、カウンターに持っていく。

ふふん、俺だって少しはできるんだぜ。

シャーリ、俺の作った適当スープ食べてみてくれ!

そしてリリアよ! 俺の腕を味わうがいい!


「おーい、できたぞー」


 調理場からカウンターをのぞいたら、なんだか二人とも楽しそうにしている。

二人とも女の子だし、気が合うのかもしれない。

ゆっくりと二人に近づく。


「――そしたらアクト様、ダンジョンで転んだんですよ!」

「あはははは! 本当に、何もないところで転んだの?」

「そうなんです! そのあと無言で立ち上がって『何でもない、行こうか』とか、カッコつけて私に言うんですよ!」

「うわー、かっこわるー!」


 おーい、二人で何話しているの?


「ゴホン」


「「あっ……」」

「続きを話していてもいいぞ? なぁ、リリアさん」

「お、おいしそうですね! 早く食べましょう!」

「本当だ! アクトさんお料理できたんですね!」


 話題を変えられてしまった。

全く、なにを話しているんだか……。


 三人で食事をとり、漆黒のスープはシャーリが味のつけ直しをしてくれることになった。

捨てるのはもったいない。何とかして、明日の朝に間に合わせると言ってくれた。

頼もしい。


「ふぅー、ごちそうさまでした!」

「お腹いっぱいですね」

「アクトさんもリリアさんも、このままお休みになってもいいですよ」

「え、いいよ。一緒に片づけるよ?」


 シャーリはカウンターにあった食器をトレイに乗せ、厨房に歩き始めた。


「この後、味のつけ直しとか、明日の仕込みとかありますので。スープごちそう様でした。おいしかったですよ」


 シャーリはめったに見せない笑顔を俺に向けた。

なんだ、そんな顔できるんだ。普段からしていればいいのに。


 俺は調理場からセーラを持ち出し、リリアと部屋に戻ってきた。

リリアはすでにベッドの腕でうつらうつらしている。


 俺はセーラを眺めながら話しかける。


「どうだ? 俺の作ったスープはおいしいって言われたぞ?」

「そうですね、結構満足したきがします……」


 それでもなんだかさみしそう。

何が、足りなかった?


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