魔剣退治と不気味な一軒家 1
ギルドから魔剣の駆除クエストを受けてから三日。
朝からはダンジョンへ行き、いつものようにリリアと特訓。
その後、通常クエストをこなし、毎日少し早めに切り上げている。
そしてギルドに寄ってから例の現場へと向かう。
「すいません。換金お願いします」
「今日も早いですね。はい、報酬ね」
「ありがとうございます。では、行ってきます!」
リリアと一緒にギルドを後にする。
今から軽く食事をして、魔剣の待つ一軒家に行くのだ!
そんなアクトの後姿を眺める一人の男がいた。
ギルドの最上階、その部屋の窓からアクトの背中をジッと眺めている。
「あいつが今対応中の冒険者か?」
「はい、アクトさんですね。先日初心者クエストを終えたばかりです」
「初心者か……。まぁいい、どうだ?」
「と、申しますと?」
ギルド長の後方に一人の受付嬢が立っている。
手にはファイルを持ち、冒険者達の氏名や似顔絵、能力などが書かれていた。
そして、その一番下には『アクト ランクF ソロ』の文字が。
「ごまかしても意味がないぞ? フィーネのお気に入りなんだろ?」
少し頬を赤くしながらフィーネは答える。
「ち、違います! そんなんじゃありません! ただちょっと、気になるというか……。そう! 彼は危なっかしいので、心配しているだけです! ほら、皆さんの安全を考えるのも仕事の一つじゃないですか。誰もアクトさんの事を好きだなんてっ――」
「おいおい、誰も好きだなんて一言も言ってないぞ?」
「なっ! わ、私だってそんな事言ってません! 報告は以上です! 失礼します!」
――バタンッ!
扉の閉まる音が、ギルト内に響き渡る。
もう少しでギルド長の部屋、その部屋の扉が破壊されるところだった。
「まったく、あれほど一人の冒険者に肩入れするなって言っているのに……。アクトか、いい知らせを待っているぞ」
ギルド長の視線はアクトの背中が見えなくなるまで追っていた。
そして、アクトの隣を歩く一人の少女にも目線が移る。
「恋敵手ね。ま、フィーネも年頃だしな……」
――
ところ変わって、街の中心部から少し外れた住宅街。
その中でも少し遠くに位置し、ポツンと一軒の家が建っている所がある。
隣は少し背の高い木々が生えており、街の中心部で光る明かりも届かない。
そんな場所に立っている一軒の家屋。そんな家屋もボロボロで廃屋といっても過言ではない。
少し日か落ちかけた街の中。
二人の人影が動き、少しずつ廃屋の家に近づいていた。
「着きましたね」
「あぁ、今日こそは何かあるといいんだけどな」
「今日で四日目です。今日こそは何としても手掛かりを発見しましょう! そして、魔剣を退治して、このお家を!」
リリアの指さす方向にはボロっとした一軒家。
風が吹くと扉ががたがた音を立てるそんなお家。
庭の草も花壇も荒れ放題。
一体この家と庭を直すにはどれくらいの時間と費用が掛かるのだろうか。
もしかしたら、クエストの報酬といいつつ、処分したいだけなのでは?
そんな考えが、アクトの脳裏に浮かんでくる。
「さぁ、アクト様! 今日も張り込みですよ!」
「はいはい。じゃぁ、今日は二階の方に行ってみようか」
来る前に買い込んだ串焼きとパンを片手に今日も張り込みを行う。
今日こそ、きっと何かある! そんな予感がするのだ!
と、敷地に一歩踏み込んだ時、見えなかった水たまりに足を入れてしまった。
「読者の皆さん、こんにちは! アクトです!」
「こんにちは! リリアです!」
「さぁ、始まりました『魔剣退治と不気味な一軒家』編。今回の見どころはどこでしょうか!」
「はい! 見どころは何と、私の手料理シーンが出てきます!」
「それは本当ですか!」
「はいっ! 一応女の子ですから、料理くらいは! アクト様においしいご飯を作りますよ!」
「それは。それは楽しみですね! ちなみに料理した事あるんですか?」
「……それでは読者の皆様! ブックマークのご登録や」
「ページ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】へ」
「「よろしくお願いします!」」
「今回のあとがきは、おなじみアクトと」
「漆黒のナイフ、リリアでした!」
「「それでは、またねー」」
――「カット!」
「はい、お疲れさまでしたー」
「ちょっと」
「はい?」
「私の出番はまだなの?」
「えっと、アーデル様の出番ですか?」
「そうよ。だいぶ待っているのだけど、まだ一言もセリフがないわ」
「も、もう少し後ですかね……」
「まだ待たせるの! 早くしなさいよっ!」
「わ、わかりました。作者に伝えておきます……」
「あんたも早く文句を言った方がいいわよ、セーラ」
「私?」
「セーラの出番だってまだまだ先じゃない」
「私はそろそろですね。お先に……」
「あ、ちょっと待ちなさいよっ!」
「はーい、次の収録行きますので、皆さん外にー」
「あ、ちょっと待って、私はまだ――」




