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二人の生活と特訓 4


 どのくらい時間が経過しただろうか。

部屋のテーブルにはリリアのナイフが置かれている。


 今、湯汲に行っているのもリリア。

いったいどちらが本物のリリアなのだろうか。


――コンコン


「はーい」

『リリアです。入ってもよろしいでしょうか?』


 俺は立ち上がり、扉を開ける。


 そして目に入ってきたのは湯汲直後のリリアの姿。

少し火照っており、膝上までの質素なワンピース。

そして何よりさっきまでとは全くの別人に見える。

リリアってこんな顔していたのか?


「お、おかえり……」

「ふぅー、いいお湯でした。さっぱりしました!」


 俺の隣を通り過ぎ、ベッドにそのまま寝転んでしまった。


「お布団、気持ちいですー」


 布団の上で転がるリリアは子供のようにはしゃいでいる。


「アクト様も湯汲に行かれては?」

「お、おぅ……。行ってくるよ」


 少し動揺しながらも、一人湯汲に行く。

体を拭き、頭もさっぱり! しかし、お腹がすいた……。

そういえばリリアってご飯食べるのだろうか?

部屋に戻ったら聞いてみよう。


 さっぱりした俺は部屋に戻る。

ノックをしたが返事がない。おかしいな。

ゆっくりと扉を開け、部屋に入った。


 灯りは付いたままになっており、ベッドで寝息を立てるリリアの姿が目に入ってきた。

俺はゆっくりとリリアに近づき、そっと布団をかける。


 寝顔は子供のように、無邪気な表情をしている。

このままそっと、寝かせておいてやるか。

あとで食べられるように何かもらってくるかな。


 一人で一階の食堂にやってきた。

少し夕飯から遅い時間、食堂には人がまばらに座っている。


「すいません、まだ食べられますか?」


 カウンターの奥から顔を出してきたのは、この宿の看板娘シャーリ。

さっきも受付のところで何か俺に対して怒っていた。


「夕飯、食べるとは聞いていませんが?」

「ごめん、あまりものでいいんだけど……」

「まったく、しょうがないですね。そこに座って待っていてください」


 厨房に戻ったシャーリは何か準備して、食事を持ってきてくれた。


「どうぞ」


 お盆がそっけなく俺の目の前に置かれる。

が、パンにスープ、肉が入った炒め物もある。

とてもあまりものには見えない。


「いいの? あまりものでいいんだけど……」

「いいんです! 私も料理の練習が必要なんです。アクトさんには、私の練習台になってもらいますからね!」


 怒りながらもしっかりと食事を出してくれる。

シャーリの優しさを感じ、俺は笑顔になる。


「ありがとう、いつも助かるよ。今度何かお礼をしないとな」


 シャーリのふくれっ面が少しだけ和らぐ。


「な、何もいらないわよ! そんなことより、早く食べてよ! 洗い物が終わらないじゃない!」

「うん。いただきます」


 温かいスープもパンもおいしい。

ふと、シャーリの方に視線を移す。

シャーリもなぜか俺を見て、微笑んでいる。


「……何見ているのよ」

「いや、なんでもない。そうだ、パンを少しもらえないか?」

「足りなかったかしら?」

「俺は十分なんだけどさ。リリアが食事もしないで寝てしまって」

「リリアさん。あのさ、リリアさんって、アクトさんの……」


 シャーリが言葉を詰まらせる。

言いたそうな、言いたくないような。

そんな雰囲気が伝わってくる。


「今日さ、ダンジョンでウルフに襲われてね。リリアに助けてもらったんだ。ある意味命の恩人だな」

「そう、命の恩人……。まぁ、それなら、しょうがないの、かな……。いいわ、今準備するわね」

「ありがとう。いつも助かるよ」

「べ、別にアクトさんの為ではないからっ! パンがたまたま余って、今夜には捨てる予定だっただけだからっ!」

「それでも助かるよ」

「そう……。だったら沢山感謝してよね」

「はい、感謝しています」


 シャーリに食事をもらい、リリアの分ももらえた。

本当にいつも世話になってしまっている。

今度、何かお礼でもしないとな。俺と同じくらいの年の子は、何をもらったら嬉しいのだろうか。

じーさんは、そんなことは教えてくれなかったしな。

今度フィーネさんにでも聞いてみようかな……。


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