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草原のマリア

作者: 一色春

緑色に輝く草原には平和という言葉が似合うと思う。その中に鎧を着て馬に乗る私たちは草原には少し不釣り合いに思う。鎧の胸部にある青い十字架は、国王軍の印で父は誇り高き騎士の証だと言っていた。

私たちはハズレにある村がゴブリンの集団に襲われた、という報告を受けその村に私を含めて4人の部隊で向かっている途中だった。ゴブリンの討伐には4、5人の少数部隊で足りる。

「目的地は、この森の中にある村だ。」部隊長のレオが言った。

森の先に家がいくつか建っているのが見える。馬から降り、周囲を確かめる。

それぞれ魔法の呪文を唱え武器を手にする。

「Työkal ソード、シールド」と周りに聞こえないように唱えると、私の手に剣と盾が現れる。

「行くぞ」とレオ隊長が小さく言い、全員が素早く森の中から村に入る。まずは村人の安全を確保するため人を探した。近くでゴブリンの声が聞こえた。「そっちか」声のした方へ向かった。


私たちがその村に到着してすぐにゴブリンの群れは私たちによって全滅した。それでも、私たちが到着するまでにケガ人が数名ではあるけど出ていた。もう少し早くついていれば。それでもゴブリンの恐怖から解放された村人たちは、私たちに感謝していたようだった。

「おねーちゃん。ありがと!」その村に住む男の子が笑顔でそう言ってくれた。

「いえ、その。君が無事で何よりです。」膝をつき少年に目線を合わせてそう言った。ケガをした村人の方を見る。胸がコツンと鳴った。

「では、我々はこれで。」とレオ隊長が村の長に言っていた。

私たちはまた馬に乗り、不釣り合いなのに草原を駆けた。さっきより傾いた陽に胸の十字架は誇らしげに駆けた。

その夜、同じ部隊としてゴブリンの討伐に向かったアウグストと食事をしていた。寒空に北極星が今日も眩しい。

sijainti ペッコ通りは小さな酒場が並んでいて毎日がお祭りのような場所だ。

アウグストは5つ年上で、もうすぐ30だ。と最近よく言っているのを見る。戦闘においてだけでなく何かと頼りにしている先輩だ。私は彼を兄のように慕っている。今も喧騒にかき消される私の声を穏やかな顔で聴いてくれている。

もう少し早ければケガ人を最小限に減らすことができたのでは、とその事をアウグストに言ってみた。アウグストは私の話を聴き、

「たしかに見回りの強化とか。対策が必要かもな。」とアウグストが応えた。やっぱりアウグストはわかってくれると思っていた。すると、ヨシュアが私たちのいる店に入ってきたところが見えた。彼も今日、同じ部隊だった。ヨシュアの周りには3人いて、もちろん鎧なんて着ていないが騎士だろう。と思った。

「ヨシュアだ」アウグストも気がついたようだ。ヨシュアもこちらに気づき近づいてきた。

「アウグストさん、マリア、こんばんは。」とアウグストの方を向いて言った。「おう」とアウグストが応え、私の「こんばんは」は喧騒にかき消された。挨拶だけしてヨシュアは3人のところに戻った。その後もアウグストは私の話を聴いてくれた。彼の前だと声を出して笑うことが許されるような感じがする。

家に着くとすぐに眠った。亡き父の夢を見た。ヨシュアに会ったからだろうか。


「駄目だ。お前は魔法使いの家に生まれたんだぞ。誇り高き騎士になるために生まれたんだ。」父にそう言われてから、もう10年も経つ。古くさい考え方。その10年間にお母さんが病気で倒れて、父が病死し、それから結局お母さんも病気で死んでしまった。2人とも綺麗な声をしていた。

それなのに、私の声はガサガサで、笑うと黒板に爪を立てた「キッ」という声が出てしまう。それがすごく恥ずかしくて、私は子供の頃に人前で笑うのをやめた。それどころか、人前で話すことも少なくなった。ただお母さんの前では、よく笑いよく話し、それからよく歌った。

今日は1日休みだ。昼前に起きてカーテンを開ける。窓を開けると、短く切りそろえた髪が首のあたりで風に泳ぐ。お母さん譲りの黒髪。今は雪が降るような季節ではなく、晴れわたった青空が顔を見せる。

ここスオミ王国は国の中心にウッコ王家の王城があり、私はそこで騎士として仕えている。元々は他国の傭兵や錬金術師に対抗するために魔法使いが集められた。しかし、今は戦争もなくなり昨日のようにモンスターから人々を守ることが主な仕事なっている。ここ何十年かで世界は平和を獲得した。

私はこの仕事に誇りを持っている。しかし、父のようには考えていない。

「誇り高き騎士」それが世界の中心のように父は感じていたのだろうか。私が騎士ではなく別にやりたいことが見つかった。と言った時、初めて父に殴られた。

「王家のために戦う騎士よりもしたい事などないはずだ!恥を知れ!」父は騎士以外の職業を見下していた。魔法使いは確かに数少ない種族で、人のために戦う騎士は素晴らしい仕事だ。

だからと言って、例えばこのパンがなければ私は飢えてしまう。そう思いながら遅めの朝食兼早めの昼食のパンを一つ(かじ)る。例えばこの服がなければ寒くて凍えてしまう。スオミ王国は寒い。私たち魔法使いの魔法とは、自分のモノを別空間に入れて自由に出し入れできるだけ、そのモノを作る人がいなければ何もできない。パンも服も武器も私には作れない。

朝食を食べながらお気に入りの曲を流していた。私もこのボーカルの人のように自由に歌ってみたい。流れる歌声は力強く、恋や愛を歌う。私に似たハスキーボイス。なのに少しも恥ずかしそうに歌わない彼女は私の憧れだ。その声は寒空なんかに馴染んで消えたりしない。例えばこの歌がなければ私は空っぽになってしまう。


昼12時になると神とその子孫である王家に捧げる聖歌を歌う。この時間、必ず私は1人になる。私のガサガサとした声で歌うところを、誰にも見られたくないからだ。騎士になった初日の入団式で私を含め新人騎士たちが歌った時、ひどく嫌な思いをした。隣で歌っているヤツもその隣のヤツも、騎士団の人たちも皆、私の歌声を笑いそうになっていた。子供の頃から馬鹿にされ傷ついてきて、もう慣れた。大人になればそんな事なんてないだろうと思っていたのに、いきなり裏切られた気分だった。それ以来、聖歌は誰にも聞かせていない。

だがそれは当然といえば当然だった。私たち魔王使いが魔法を使う時、必ず呪文を唱えなければいけない。その声が美しいほど魔法使いが美しいと言われる基準になる。男性も女性も関係なくそれだけが基準になる。まぁ、容姿に自信があるわけではないけれど。だから魔法も本当は唱えたくない。呪文はそっと呟くようにしている。

騎士よりもやりたいことがある騎士。

魔法を使いたくない魔法使い。それが私。なぜこうも生きづらい。でも、今さら騎士以外になんて。

聖歌を歌い終わって、またお気に入りの曲を流す。囁くように少しだけ真似して歌ってみる。


それから数日して、カレヴァン団長から「王城から離れたハズレまでの見回りを強化するように」という命令が下った。団長の後ろには大きな熊の石像がある。スオミ王国の守護神で私たちの祖先の化身だ。mesikämmenとも呼ぶ。

どうやらアウグストに言ったことを、さらに上の部隊長にまで伝えてくれたらしい。この前のゴブリン討伐の時一緒だったレオ部隊長が「アウグストから聞いたよ。私たち部隊長の中でも、問題視していたとこだったんだ。」と「さすが、ユリウスさんとサーラさんの娘だ。」と言って多分私のことを褒めた。ユリウスは私の父でサーラがお母さんの名前だ。マリアという私の名前は出なかったが、もう慣れたことだった。


早速、王城から離れたハズレにある集落の近くを見回ることとなった。私の部隊は私とイーリスの2人だけ。少し気まずい。イーリスの声は王国一の美しさと言われる。また、その容姿も腰あたりまで伸びた金髪も王国一と言われている。

「マリアちゃんよね?よろしくね。」と彼女が話しかけてきたが頷くことしかできなかった。イーリスは3つ年上でヨシュアと同じ歳だ。集落の近くまでは馬に乗って移動したが、森の中を見回ろうと彼女が言い馬を降りた。彼女の隣を歩く。

「この辺は空気がいいわね。気持ちいいわ。」というその声は、スッと森の空気に溶けるようだった。それからもイーリスは周りにモンスターが居ないか確かめながら綺麗な声で私に話しかけてきた。私は「はい」とかしか言えず、それしか言えないこともその声のガサガサも恥ずかしくて堪らなかった。

「それでは、また。」見回りが終わり、団長への報告も済ませた私たちは王城の前で別れた。笑顔で手を振るイーリスに会釈をした。

帰ろうとsijainti レンポ通りを歩いているとヨシュアがいた。嫌な予感がする。

「よお。見回りは楽しかったかよ。」「なに?」ヨシュアが言いそうなことなんて分かっていた。

「ハズレに住んでるのなんて放っとけばいいだろ。なんでわざわざ。」ヨシュアは面倒そうに頭を振った。

ヨシュアも私の父のように騎士以外の人を見下す質で、そのせいで先輩なのによく揉めていた。本当に古くさい考え方。

「人々の暮らしの安全を守るための騎士です。」ガサガサとした声は語尾が擦れてしまう。

「その声もだけどさ、お前騎士に向いてないよ。」なんで今日に限ってこんな目に合うんだろう。もしかしたら、ヨシュアは私が今日イーリスと一緒だったと、知っているのかもしれない。

踵を返して遠回りになるけど別の道から帰ることにした。「ちっ」舌打ちが聞こえた。


北極星の下を歩いて家に帰るとお気に入りの曲をかけた。ウィークエンドに相応しいテーマソングが流れる。この声に何度助けられたことか。ヨシュアの声が頭にこびり着いてなかなか離れない。彼の声もまた美しい。私の声はガサガサで、悲劇のヒロインになんて到底なれない。

父の言う通りにするのは嫌だったが、お母さんと同じ騎士になれたことは心から嬉しく思う。

「やりたいことをやっていいのよ?」お母さんは「騎士になる」と言った私にそう言った。

「分かってるわ。私、お母さんのような騎士になりたいの。」そう言うとお母さんは16歳の私を抱きしめた。思わず笑う私の声は「キッ」と少し擦れた。

それから数ヶ月経つと父は病気で死んで、それから3年経って私は20歳でお母さんは病気が悪化した。ベッドの上のお母さんは会うたび痩せて、その度に私は怖くなった。だから、私は今でもお気に入りの曲を母に歌って聴かせた。お母さんはニコニコと笑い「もっと聴かせて」と言っていた。

「ねぇ、マリア。」「ん?」

父が病気で死んだ次の春にお母さんも病気で死んで、私は1人になった。もう私の声を聴かせたい人なんていなくなった。


いまさら、この声を馬鹿にされて落ち込んだりしない。もう生まれて25年。騎士になって6年。でも、こればっかりは落ち込んだ。いや、反省した。イーリスのことを誤解していたみたいだ。

私はてっきり彼女も私の声を、ガサガサとした声だ。と馬鹿にしていると勘違いしていた。

「ヨシュアの馬鹿が何か言ったみたいね。本当にごめんなさい。」とイーリスが頭を下げた。

「彼とは同期なんだけど、その。ずっとなのよ。実力はあるんだけれど。」と下を向いて言った。イーリスの美しい声が沈んでいた。

「いえ。全然気にしてませんから。」ガサガサした声で応える私に、イーリスは顔を上げて

「私、あなたの声。カッコいいと思うの。」嫌味には聞こえなかった。私は下を向いてしまった。すごく恥ずかしい。そんなこと初めて言ってもらえた。顔を上げるとイーリスと目が合う。彼女は美しく微笑む。


今日は任務で、モンスターに襲われたという村に調査に行く。今回も王城から離れたところだ。同じ部隊にヨシュアがいなくてよかった。彼の小言ほど聴きたくない声はない。

アウグストを部隊長代理とし、ラウリと私の3人で部隊を組んだ。ラウリは私の2つ下の後輩で、彼とは初めて同じ部隊になった。

村に着くと村人の姿があった。モンスターの姿はない。家や農作物を育てる畑はボロボロで大きな傷があった。大きい爪で引っ掻いたような傷跡だった。村人も何人かケガをしているようだった。農具で応戦したようだ。ボロボロの農具がいくつも転がっている。

「モンスターを見た人はいますか?」アウグストが村人に事情を伺っていた。その間、私とラウリは周囲の安全を確保しに森へ入った。

「まったく、こんなとこに住んでるから襲われるんだよ。」そう思いません?、とラウリが言った。私は少し悲しい顔して、「それを守るのが騎士でしょう。」と言った。ガサガサとした声じゃ、うまく届かなかったみたいでラウリは苦笑して「えっと、はい」と言った。

森の中にも大きな爪痕があった。しかし、モンスターの姿は見えなかった。そのことを報告しようとアウグストに近づくと難しい顔で、

「一度王城に帰るぞ。我々だけでは判断できない。」と言った。

「どうしたんですか?」と聞いてもアウグストは何も応えなかった。


それから2日経っても事情はわからなかった。大きな傷跡を残すモンスターの出現だ、見回りをさらに強化するべきだと考えていた。見回りでアウグストと2人になった。アウグストは事情を知っている。馬から降り森の中を歩いていた。

「あの、」そう言うとアウグストがこちらを向き目が合う。

「この前のモンスターのことか?」アウグストはその話を予想していたようだった。

「はい。一体なんだったんですか?」そう聞くと、アウグストは少し考えてから

「この前のあの村を襲ったのは、熊だ。」と言った。

信じられなかった。熊は私たちのことを守る神で、そんなはずはない。

「まさか」と言ったが、アウグストの表情が曇るだけだった。胸に空っぽを感じる。

「村人がそう言った。見たと言うんだ。」「見間違いということは」必死に頭を働かせる。

「あの大きな爪痕を説明できるのは、やはり熊だと思う。」「どうするんですか?」

「わからない。団長と国王が話し合っているようだ。」

それから見回りを続けたが、特に何もなく終わり。胸の空っぽが目立った。

王城に戻ると熊の石像が目に止まる。凛々しく勇ましい姿でこの国を守っている。まさか。そんなことあるわけがない。胸の空っぽから目をそらす。胸が痛い。


騎士だけが誇り高いというのは、もう古くさい考え方なんだと思う。もう何十年も戦争はなく、いつからか平和と呼べる時代となった。人々の暮らしの安全を守る騎士という仕事は、もちろん誇らしい。しかし、きっと他の人もそうだ。あそこのパン屋も服屋も靴屋も、そんなのが早く当たり前にならないかな。

時代は変わる、でもそこで暮らす人が変わらなければ。ここ数年で女性の騎士が増えた。ここ数年で騎士の仕事も、戦争から平和維持へと変わった。

私たちも認識を改めるべきなのかもしれない。熊というのは。


聖歌を歌い終わり家を出た。最近体調が優れないとイーリスに相談したところ、「疲れてるのかも。一度診てもらうとどう?」と軍医に診てもらうことをお勧めされた。街の医者よりもメンタル的な点で診てもらえる軍医の方がいいと思う、とイーリスに言われたからだ。

「胸が痛い?」ここ数日、胸が痛かった。始めはいつだかのゴブリン討伐の時、胸にコツンと引っ掛かりがあるようで大して気にしていなかったが、最近は痛みがひどくなってきた。

「はい。」「うーん。まさか」と軍医の女性が言って、それから「マリアさん。あなたの両親って確か。」

私の両親は病気で死んだ。お母さんを殺した病気が、私のことも殺そうとしているらしい。

「親子である一つの病気に弱いということは、少なくないんですよ。」と説明を受けた。

「でも、今なら治せなくとも痛みを緩和することはできますから。安心して。」

「騎士は?」続けられるのだろうか。軍医の女性は難しい顔で、

「騎士以外にも素敵な仕事はあるのよ」と言った。「わかってます。」

帰り際、熊の石像を見た。この国を守っている、ようには見えなかった。


それから数日、見回りを終え王城に帰る途中、私とイーリスはその瞬間を見てしまった。

草原に一頭の熊。そして襲われる2人の男。草原には不釣り合いな、私たちは状況が飲み込めず一時停止したようだった。

「私が囮になる。その間に2人を!」イーリスがそう言って、私は状況を飲み込む。イーリスは馬に乗って熊に近づく。しかし、熊は2人を襲う。間に合わない。

「Työkal ソード!」手に剣が現れる。熊の大きな爪と私の剣がぶつかる。熊の腕をはじき距離を取る。私の後ろには襲われていた2人がいる。少し離れたところにいるイーリスはきっと目を見開いている。騎士が神聖な熊に対して剣を振るったのだから。

構わないと思った。誰かを苦しめるような文化や伝統なら無くしてしまえ、と思った。

熊が腕を振り上げる。右腕だ。振り下ろしたのを、左にかわして熊の右腹に剣が傷をつける。少しだけ怖かった。これぐらいでは熊は死んだりしないだろう。

熊は私と距離を取り、私を睨みそれからゆっくりと森へ帰った。これで良かったのだろうか。

襲われていた2人は感謝の言葉を残し、急いでその場を去った。恐る恐るイーリスを見る。

「ありがとう。私では彼らを助けられなかったと思うわ。」とイーリスは言う。

私は何も言わなかった。


どうせならやりたいことをやって、死んでいきたい。10年ぶりに心からそう思えた。

私は責任を取り騎士をやめた。死罪でも軽いところだったのだから、アウグストにもイーリスにもレオ部隊長にも感謝しなくてはいけない。熊との戦闘は私から団長へ自ら報告した。それ以外は何も言わなかった。


ワイナ通りで私は歌っていた。もちろん聖歌ではない。あれからスオミ王国は変わった。ように見えた。それとも私が変わったのか。ガサガサした声で堂々と歌えるようになったんだから。

イーリスが聴きに来てくれていた。「やっぱり!マリア、あなたの声ってとっても素敵だわ!」こんなに興奮した彼女を初めて見た。白い頬が赤く染まっている。「ありがとう」歌い疲れた私の声はいつも以上にガッサガサで、思わず笑った。「マリア、ひどい声よ」とイーリスが笑い。

「失礼ね」と笑って返した。

お母さんの最後の言葉が蘇る。

「ねぇ、マリア。」「ん?」病室でした、この会話が最後だった。

「お母さん、綺麗な声に産んであげられなくて、ごめんね。」泣きながらそう言った。昔はこの言葉に悩まされた。

大丈夫よ。私この声のおかげで、こんな素敵な毎日を送っているのよ。

「騎士になりたい」って言ったのも嘘じゃないよ。お母さんの子で、本当に良かったわ。

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