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一般的成人男子よりもまだ大きな女を。
女はどこかへ立ち去ったわけではない。
目の前から一瞬で消えたわけでもない。
それなのに気付けば何処にもいない。
これまたみなが言っていたことと同じだ。
実際に経験してみると、なんとも言い様のない薄気味悪さが残った。
その夜、集会に顔を出した私は、見たことを告げた。
長老と池下さんが、ああなるほど、という顔をした。
二人とも揺れるその動きが変だとは思ったが、その足が宙に浮いていることには気がつかなかったのだから。
長老が言った。
「やはりあの女、生きている人間ではないようだ」
「そうですね」
その後、誰も口をきかなくなった。
湿った重い空気の中、どうしたものかと考えていると、長老が言った。
「ちょっと遅いが、私が真中さんに電話してみよう」
「真中さん……にですか?」
と友田さん。
「そう。あの女についてなにか知っている者がいるとしたら、真中さんしか考えられない」
「それ、大丈夫ですかね」
と飯田さん。