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「えっ、でもその女の人を近くで見てたんでしょ」
「そう、すぐ後ろで見てたんだが、気がついたらいなくなっていた」
「すぐ後ろで見てたのに、気がついたら目の前にいた大柄な女の人が、いなくなっていたんですか? どういうことかよくわかりませんが」
「自分でもよくわからんのだ。よくわからんから実際にあった事をそのまま言っている」
「……」
「その女は、すぐ後ろで見ていたのに気付けばいなくなっていたと言うんですね」
と池下さん。
「明日行くのは池下さんだな。自分の目で確かめるといい」
「もちろんです」
その日の集会は、それで終わった。
次の日、集会に行くと、もうみんな集まっていた。
普段なら月に一度あるかないかの集会がここのところ毎日だが、それも仕方のないことだろう。
長老が言った。
「それじゃあ始めましょうか。では池下さんどうぞ」
「はい、見てきました」
「どうだった」
「昨日と同じ話になりますね。女がいて、声をかけたけど反応はなし。そして揺れていましたね。左右に小さく、ゆっくりと」
「そうだろう」
「聞いたときにはいまいちわかりませんでしたが、見るとわかりました。長老の言うとおり生気が感じられないし、あの動きはなんだか変ですね」