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友田さんは午後十一時に寝て、朝六時に起きるという生活を毎日続けている人で、その途中で目覚めるなんてことは、少なくともここ十年は一度もなかったそうだ。


それなのにその日は何故か午前三時少し前に目が覚めて、寝付けなくなったので、本でも読もうと思って居間に行ったのだと。


「そこで女を見たのかね」


「最初はそんな人はいませんでした。しかししばらくして女の人がいることに気付いたんです。それが午前三時でした」


「集落の誰かかね」


「いいえ」


「では友田さんの知っている誰かとか」


「いいえ」


「顔は見てないんだね」


「顔は見ていません。自動販売機の前で自動販売機を見ているようでしたから。皆さんご存知のように、自動販売機は道を隔てて私の家の向かいにあります。ですから自動販売機を見ている女は、私の家からでは後姿しか見えません」


「顔を見てないのに集落の人間でも友田さんの知り合いでもないと、どうしてわかるんだね」


「体格その他ですね。知っている人なら後姿でもわかります」


長老がその女は友田さんが知っている人ではないかということにこだわったのは、その女が真中さんの死んだ奥さんなのではないかと考えたからのようだ。


しかしかつて自分の家の向かいに住んでいた奥さんを、後ろ姿とはいえ友田さんが見間違えるはずもない。


ある意味詰んでしまった。


その女が集落に関係がある女なのかそうでないのか、生きた人間なのかそれとも死んでしまった人間であるのか、それすらもわからないのだ。


「その女はずっと、そこにいたのかね」


「いえ、少し目を離してもう一度見たら、そこにはもう誰もいませんでした」

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