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第十一話


 勇者シュート=カリヤ御一行は、燻りの迷宮にのんびりと馬車で向かっていた。転移石やレヴァンの様に瞬間移動の魔法があれば一瞬だが、勇者はあえてそれをしない。


 目的のAランク冒険者は、Bランクの女冒険者を探しに燻りの迷宮へと向かったのだと勇者は聞いた。なので勇者は、Aランク冒険者はBランク冒険者の事を、好いているんだと推測して、ボスに苦戦しているときに自分が颯爽と駆けつけて、Aランク冒険者の前でBランク冒険者を惚れさせることにしたのだ。


 速く着いてしまってはそれが出来なくなる。


 勇者はすでに彼氏や夫を持っている女を寝取るのに、生きがいを感じている。その為に自分は、この美貌を持って生まれてきたのだと信じて疑っていない。そして、その女を使い果たした後、ごみの様にすぐ捨てる。それが、この勇者の性癖であった。


 これではただただ性格の悪いクズ勇者というだけだ。質が悪いのが、使い果たした女を捨てる場所だ。


「ねえ、なんで冒険者探しなんてしようと思ったの? あれ報酬は少ないし、やる意味ないと思うんだけど」


 そう勇者に声を掛けるのは、勇者パーティの魔法使いであるフレイヤだった。フレイヤは回復魔法や補助魔法はからっきしなのだが、攻撃魔法は卓逸している。それに加え、勇者に憧れる農民と付き合っていたので、寝取って仲間に加えられた。


「別に意味なんてないさ。目の前に困っている人がいたんだから、勇者として助けなきゃいけないだろ?」

「嘘ね。綺麗な女性だっだからでしょ」


 フレイヤは頬を膨らませて、上目づかいで嫉妬しましたアピールをする。彼女の美貌を持ってすれば、今ので大抵の男を魅了されるだろう。しかし、勇者は例外だ。


(飽きたな……ゴブリンの群れにでも捨てるか)


 これが、勇者の本性であり性癖であり、他のクズ勇者より質が悪いところだ。女を寝取って犯しまくって、その女に満足したら、ゴブリンやオークなどの異種族の女を孕ますことでしか、子孫繁栄ができない種族の群れに捨てる。そして、それに性的興奮を覚える。


 この男が異世界にやってきて開花させた、異常な性癖だ。


「そんなわけないじゃん」


 これは真実だ。先ほども言った通り、勇者は男持ちの女にしか興奮できない。もっと言えば、処女に興奮できない。地球で彼女を作っても、処女だと知った途端に別れ話を切り出す男なのだ。


 受付嬢は見るからに仕事一筋で、男と付き合ったことなんてない雰囲気を醸し出していたので、勇者は受付嬢に興味を示さなかった。

 依頼を受けた真の理由は、これだ。


(……ふふっ、あの僕を見る目。あの僕に失望したかのような表情。ああ、最高だよ)


 あともう一つ。この勇者には特殊な性癖がある。他人から蔑まれると快感を覚えるのだ。それを味わうために、ギルドで冒険者たちの勇者のイメージをぶち壊した。

 そして、依頼を受けた。


 勇者は、Bランク冒険者をAランク冒険者の前で惚れさせて、Aランク冒険者を絶望させる。Aランク冒険者を見捨てて冒険者ギルドに帰還し、失望や蔑みの視線を浴びる。Bランク冒険者とさんざんヤッたあと、ゴブリンやオークの群れに捨てる。これが勇者の真の目的だ。


「嘘つき」


 フレイヤは妖艶な笑みを浮かべてそう呟き、外の景色に興味を移した。それに勇者は、爽やかなスマイルを返して、誤魔化したような振りをする。全ては、自分の欲望のために。


「あれ……なに……?」


 今度は盗賊の幼女フィナに声を掛けられた。平原のド真ん中だったので、指を差すほど珍しい物はないはず。そう思いながらも勇者は、フィナが指を差す方向へ首を傾けた。


 ぷにっ。フィナの人差し指に、とても柔らかい感触。その正体は勇者の頬だ。フィナは人差し指を勇者の肩に置いて、勇者が首を傾けた際、丁度頬に当たるよう仕向けたのだ。誰でも思いつく定番の悪戯で、美幼女がやっているのも相まって、とても微笑ましい光景になっている。


「止めろよぉ……」


 勇者はそれに困ったような演技をする。自分が揶揄われたという事実を不愉快に思った勇者は、はにかんでそっぽを向いているフィナを鋭い眼光で睨んだ。全ての物事が思い通りにいかないと気がすまない性格なので、悪戯が通用しない。


「……可愛い」

「キミの方が可愛いよ、フィナ……」


 勇者はフィナの真っ赤に染まった頬に両手を添えて、そう呟いた。うっとりとしているフィナを見て、勇者は内心こう思う。何故、俺が処女を口説かなければいけないんだ、と。


 この世界ではフィナの様な善行をする、勇者パーティに相応しい盗賊は少ない。勇者パーティでは盗賊の索敵スキルなどが色々な面で必要になるので、どれだけ嫌いな処女でも雇いたかった。そしてパーティを脱退されないために、口説いて勇者パーティに依存するよう仕向けている。


「ふふっ、私の前でそうもイチャイチャされると、嫉妬してしまいます。私ともイチャイチャしてください」

「……おう」


 今度は神官アイシアが、先程の魔法使いと同じように、頬を膨らませて嫉妬してますアピールをする。


 勇者はあからさまに苦渋の表情を見せる。アイシアは勇者が好む、男持ちで処女ではない女だというのに、勇者は仏頂面になっていた。


 アイシアは勇者とフィナの間に無理矢理は割り込み、勇者の腕に絡みつく。勇者をじっと見つめて、紅潮している。それに勇者は目を逸らした。


「私の事嫌いですか?」

「い、いや、愛してるよ」

「ふふっ、それは良かった」


 アイシアは可愛らしくはにかんだ。これもどんな男が見ても一瞬で惚れる笑顔だろう。しかし、勇者は露骨に目を逸らして、顔を顰める。


 こうして、勇者御一行は燻りの迷宮に向かった。


 

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