結論:リーシアはかわいい
こんばんは!
最近になって私の作品カテゴリーを考えた結果!
【シリアス・ラブ・コメディ・ハーレム】の頭文字を取って【白子派】になりました!
うん!つまんない!!
あと、誤字報告ありがとうございます!
俺は今、リーシアと二人で厨房にいる。今日の昼食を作る為だ。
「〜〜♪」
「ふふっ、ご機嫌でいらっしゃいますねお兄様。」
鼻唄を歌いながら卵をかき混ぜる俺にリーシアが可愛らしく微笑んで言った。
「ん?あぁ、まぁな。」
「朝の一件以来、お兄様はずっと楽しそうですわ。」
「うっ、恥ずかしいからやめてくれ……」
「ふふふっ、照れるお兄様も可愛いらしいです。」
クスクスと上品に笑いながら俺を見つめる彼女。
朝にあった出来事のせいもあり、二重の意味で恥ずかしい。
「……リーシアが楽しそうで何よりだよ。」
ついクセでぶっきらぼうに応えるが
「お兄様は恥ずかしくなると少しぶっきらぼうになられますね。また一つお兄様の事を知ることが出来ました。」
それでもやはり、リーシアは楽しそうに笑うのだった。
「ですが、今はわたくしとの時間ですよ?わたくしに意識を向けてくださいませ。」
「うん、ごめん。確かに失礼だな。」
しかし、少しだけムッと頰を膨らませて不満をあらわにした彼女に俺は笑いながら応えた。
「じゃあ、次はリーシアが混ぜてみよう。」
「はい。」
どうして俺が上機嫌なのか。
どうしてリーシアが楽しげなのか。
それは今朝の出来事に理由がある。
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ー朝食前ー
「申し訳ありません、遅れました。」
リーシアに連れられて来た俺はドアを開けてまず謝った。周りを見渡すとルイスさん一家にローナ、ラウ、ベルも揃っている。
状況を見る限り、俺を待ってくれていたようだ。
「あはは、そんなに焦らなくても大丈夫さ。みんな今しがた集まったところだよ。」
すると、ルイスさんがいつも通りにこやかに優しい口調で応えてくれる。
「ありがとうございます。」
感謝を述べる俺に
「おぉっ!!その人が兄貴に競り勝った猛者ですかい!?」
見知らぬ男性が反応を示した。
その人物はルイスさんの事を『兄貴』と呼んでいる。
……兄弟?いや、それにしては似てないな。
てか、違う。アレがある時点で絶対違う。
俺が声をあげた人物を見て即座に断定したのには理由がある。
その人物は黒髪の短髪でシルバーグレーの瞳に褐色肌。ガタイが良く、快活そうな見た目をしたイケメン。
身長は180cmくらい。
だが、何よりも特徴的なのは頭部から伸びている『二本の捻れた黒い角』だ。もう少し正確に言うならば、軽く螺旋を描いている。
「あの……どちら様ですか?」
なんとなく検討はついているが、とりあえずその人物に問いかける。
「おっと、こりゃ失礼!申し遅れやした!あっしは【プーロ・パトリオット・ドラッヘ】。俗に言う龍ってやつでさぁ!
よろしくお願いしやす!」
すると、なんとも元気に自己紹介をしてくれるではないか。
「おぉ、という事は先日の黒龍の方で……?」
「その通りでさぁ!」
俺のさらなる問いに対する答えはYES。
キ……キ、キタァァァァァ!!!!
黒龍!!人の姿をした黒龍!!なにそれ最高かよ!?話せるぞ!?
龍と話せる!!しかも超好印象の人懐っこそうな龍だ!!
歓喜のあまりに内心で絶叫する。
その様子はさながら、大好きなアイドルに会えたファンのよう。
「プーロさん……」
「はい?なんでやすか?」
「あなたにっ!会いたかったっっ!!」
俺は脇目も振らず静かに歩み寄ってガッチリ手をとって言った。
「そいつは嬉しい!あっしもでさぁ!」
俺の唐突な行動にもかかわらず、プーロさんは笑って手を握り返しながらそう言ってくれた。
イケメンだ……この方も心までイケメンだ……
「プーロさん心が広いっ!いや、ほんと一度でいいから龍に会ってみたかったんです!
空を飛ぶあなたを見たときは興奮しましたよ!」
「おぉ?ほんとですかい?」
「えぇ!心から!」
「いやぁ!そいつは照れやすねぇ!ここまで感動されると、なんだかこっちまで嬉しいでさぁ!」
「嬉しいのはわたしの方です!
あ!申し遅れました!わたくし深淵の狩人と呼ばれております、タケシ・シミズと申します!
以後お見知り置きを!」
感動のあまりに名乗るのを忘れていたので、こちらも名乗り返した。それも、恥ずかしい通り名を自ら名乗るくらいにはテンションが高くなっている。
「シミズさんでやすね!」
「タケシで構いません!プーロさん!」
「なら、あっしの事はプーロでいいでやすよ!その代わり、タケシ君と呼ばせてもらいやす!」
「それは光栄ですがもっと砕けてくださって大丈夫です!それと、プーロさんを呼び捨てなんてとんでもない!」
「じゃあ……タケ坊はどうでやすか?
ていうか、そんなに遠慮しなくていいでやすよ!」
「それでお願いします!
誇り高い龍の方を呼び捨てなんて畏れ多いですって!」
これまでに類を見ないほどテンションが上がっている俺に
《女神を妻にしている者が龍を前に畏れ多いとは……奇妙な事です。》
シュティがもっともな事を呟いた。
しかし、テンション最高潮の俺には聞こえない。
「あんなに上機嫌なタケシは初めて見たわ……」
「おにーさんって、なんかちょっと残念なところあるよね。」
「我々に対しては不遜な態度を取るのに、龍種に対してはあそこまで違いますか。刺していいですか。」
そして、ローナとラウが微笑ましいモノを見る目で談笑しており、ベルは吐き捨てるように言った。
「まぁまぁ、ベルちゃんも落ち着いて。」
「あははっ、おにーさんの事だからね。仕方ないよ……わたしもちょっと悔しいから気持ちはわかるけど。」
ベルの言葉に苦笑を浮かべる二人。
さらに、ラウとベルが少し共感するという珍しい事態に。
そんな光景を目の当たりにしたルイスは
「ねぇ、僕ってそんなに嫌われてるのかな……プーロは初対面なのにシミズ君にあそこまで親しげに話しかけられてるよ……」
見事に凹んでいた。
「あらぁ〜、あなた何かしたの〜?」
「ちょっと模擬戦を……」
「原因それじゃないかしら〜?」
「お父様は自業自得ではないでしょうか。」
「リアだけじゃなくてリーシアまで……」
その上、見当違いな勘違いが発生している。
主人公の対応は単純に敬意を払っているのと、ルイスのリーシアに対する扱いに少しの不信感を抱いた結果なのだ。
しかし、そんな事は主人公本人にしか知り得ない。
リーシアの言った『自業自得』という部分では当てはまっているが、それはあくまでも主人公の個人的な考えに過ぎず、それを知らないルイスは困惑するばかり。
ルイスの純然たる親としての気持ち故の行動は、主人公からはズレたモノに映る。
これは両者間の認識の食い違いが招いた結果である。ひどく単純だが、それ故に解決には程遠い。
そんな周りの変化に気がつかないままに俺はプーロさんとまだ言い争っていた。
「ですから!わたしの事は呼び捨てでも構いませんけど、プーロさんを呼び捨てなんて出来ませんよ!」
「あっしの兄貴分に勝ったタケ坊ならもう認めるでやす!呼び捨てでかまわねぇ!」
「戦ってもないのにそんなこと言われても無理ですから!」
そうこうしていると
「そこまで仰るのであれば領主様の時と同じように一戦交えられてはいかがですかな?」
いつのまにかと姿を現していたセル爺さんが俺たちに向かって言った。
「それです!龍の勇ましい姿は是非とも見たいです!」
「あぁ!そりゃあいい!あっしも久々に楽しめそうでやす!運動不足ですし、丁度いい!」
セル爺さんの言葉に俺とプーロさんは同時に食いついた。
「では、本日の昼食後はいかがでしょうか。
シミズ様は午前中にリーシアお嬢様とお料理のご予定ですので、昼食後ならば時間もございますし、食後の運動にも最適かと。
その場合は街の外での模擬戦となりますが、それなりに離れて行えば遠慮なく力を発揮して頂けるかと。
午前中に街への周知活動も行なっておきますので戦闘の音が聞こえてもパニックに陥る恐れもありません。」
するとまぁ見事に仲介をしてくれるセル爺さん。
もう、この人ほんと優秀すぎて怖い。
「わたしはそれで構いませんが……プーロさんはどうですか?」
「あっしも異論はありやせん!」
俺の質問にプーロさんは二つ返事で了承した。
かくして、俺とプーロさんの模擬戦の予定が決まった。
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まぁ、これが俺の機嫌がいい理由だ。
正直なところ、模擬戦を行う流れになってしまった事に関しては反省してる。勢いで言いすぎた。
でも、黒龍を間近で見るチャンスだぜ?
もしかしたら、咆哮とか聞けるかもしれないし、口から火焔を吐く姿も見られるかもしれない。
この機会を俺が逃すはずがない。今回の模擬戦に関しては俺にも十分なメリットがある。
そんな朝の出来事を思い出しながらも、リーシアに卵焼きの作り方を教えていく。
「お兄様、混ぜ終わりました。」
泡立て器を手にした彼女が混ぜ終わったボウルを俺に差し出して言う。
「よし、ならここから専用のフライパンで焼いていくぞ。」
「はい!」
それを受け取った俺は説明しながら四角いフライパンに卵を入れていく。
「混ぜている間に温めておいたフライパン、そこに卵を少し入れます。一枚のシートを作るイメージでやりましょう。」
「?、どうして油をひかないのですか?なぜ卵は一度に全て入れないのですか?」
「あぁ、それは油がなくてもこのフライパンなら大丈夫だからだ。
他のフライパンで焼くなら油は多めにした方がいいぞ。焦げ付き防止には必須だ。
全部入れないのは、少しずつ焼いていって巻くのが玉子焼きの作り方だからな。」
リーシアの質問には丁寧に答えていく。
ちなみに今使っているフライパンは卵焼き用の四角いヤツで、その上テフロン加工を施している。
テフロン加工を施していると、油がなくても焦げつかないから楽なんだ。後、油の節約になって摂取カロリーも減るし、後始末の手間も削減出来る。
これはシュティに特注で作ってもらった卵焼き器だが、おそらく前居た世界でも売ってるはずだ。
「ふ、不思議です……完成した時にどの様な見た目をしているのでしょうか。」
「期待してくれてるところ悪いけど見た目はそのまんまだぞ?
ほら、こんな風に半熟に焼けたら巻いていって……巻けたらまた卵を少し入れる。巻いた卵の下にもちゃんといきわたらせるんだ。
それから、空気が入って膨らんだ部分は潰す。潰さないと完成した時に空洞ができる原因になるからな。
あとはこれを繰り返すだけ。な?簡単だろ?」
興味津々といった面持ちで俺の手元を眺める彼女におもわず頬をほころばせ、卵を巻いていきながら話す。
「こんなに薄いものを、そんなにも細長い棒で巻くのですか……?」
すると、彼女がか細い悲鳴のような驚きの声をあげる。その声だけで『自分には無理だ』という意思が伝わってくる。
たったいま言われて気が付いたのだが、俺が調理に使用しているのは菜箸だった。そりゃあ、悲鳴の一つもあげたくなるだろう。
「ははは、流石にいきなりこれを使わせはしないよ。こっちのヘラを使うといい。それに、卵も巻いていくうちに太くなっていくぞ。」
「そ、そうだったんですね。」
自分にとっては当たり前だが、彼女にとっては新しい物だ。いい反応を見せてくれる。愉しい。
普段は誰かに料理を教えることはしないから、これはなんだか新鮮でいいな。ローナやラウも料理覚えようとしてくれ……ないか。
《断言しましたね。》
だって、最上位神と創造神のコンビだぜ?俺がいるし余計に覚える必要ないじゃん。
苦笑するシュティに言い返す。
《手料理が食べたい、そう言えば意外と作ってくれるかもしれませんよ?》
……人と神の思考回路の違いで変なもの出されたらどうしよう。
ローナは料理しなくてもすでに完成したモノもだせるし、ラウは明らかに植物系だろ……最悪、彼女たち自身の高純度魔力の結晶体とか出された暁には、どんな表情をしたらいいのかわからんぞ。
《いくら何でもそれは流石に……いえ、否定はしきれませんね。》
ローナなら屈託のない笑顔で差し出してきそうだから怖い。
《可能性はあります。独自性を追及した結果として『食材として自身の魔力を使用する。』という結論に至る可能性が。》
ローナが天然なのは別にいいけど、たまにサイコパスみたいな発想するんだよなぁ……無邪気に。
彼女の可愛くもあり、欠点でもある『天然』という部分に少し恐怖していると
「お兄様お兄様、また考え事をしておられますね?」
リーシアから不満そうな視線と声をもらった。
なぜバレた。
「む、すまん。癖みたいなものでな。」
「いいえ、別に考え事は構いません。ですが、そこでわたくし以外の誰かに対して想いふけられているのが面白くありません。」
反射的に謝るが、ムスッとした表情で不満をあらわにするリーシア。
なるほど、心を読めるとそんな事までわかるのか……すげぇな。悪用しないリーシアは偉いと思う。
うーん、それにしてもこの遊び相手をとられていじけてる子みたいな感じ……可愛いな。
《そうですね。心を読まれて平然としていられる主様のメンタルが流石です。》
ローナがその気になったら脳内で会話はもちろん思考の監視もできるし、そうでなくとも誰かさんが常に頭の中にいてプライバシーを剥奪してくれてるからな。
多少読まれた程度、なんのその。
プライバシー?なにそれおいしいの?
《ノーコメントで。》
うん、賢明な判断だと思うぞ。
心を読まれるだけならまだ可愛い方だと知っている分、心を読めるリーシアへの忌避感など一切ない。
なんなら、ローナは出会い頭から思考を読み取ってきやがったからな。
「?、どうして、わたくしに向けて温かな思いを?」
不思議そうだが、どこかそわそわと落ち着かない子で彼女は聞いてくる。
「かわいいな、と単純に思っただけだ。」
料理の手を止めずに思ったままのことを口にする。
「ス、ストレートですね……///」
顔を赤くして照れているリーシアを見ながら思う。
いや、本当に思考回路を完全に見透かされるより断然かわいい方だからな。
「うぅ……!、お兄様お兄様、卵が焼けています!」
リーシアは少し視線を彷徨わせた後に、なんとか話の軌道をそらそうと口を開いた。
彼女の言う通り、卵はちょうどいい具合になっている。
だが、残念!経験則で焼ける時間くらい理解しているのだ!簡単に話をそらせると思うなよ!
《妙なところで意地悪さを発動しないでください。》
俺は無差別主義者でね。誰であれ、平等に扱うよ。
《今の部分だけを切り取れば平和的で優しい言葉のはずなんですが……》
これが日本語の難しいところだな。
「………」
「うお!?」
シュティと歓談しているとリーシアに指で脇腹をつつかれた。
「ふふ、えいえい。」
俺が変な声を出したことで彼女はクスクス笑いながらつつき続ける。
「ちょ、ごめん!ほんとごめん!危ないから!フライパンひっくり返る!?」
流石にフライパンをひっくり返してリーシアに火傷を負わせるのはマズイので必死に謝る。
「意地悪なお兄様がいけないのです。」
ふふん、と勝ち誇った表情で言うリーシア。
「よし、リーシアは後でくすぐりの刑な。後で笑いの地獄におとしてあげよう。」
卵焼きを皿に移し、負けじと軽口を叩くが
「そ、そんなにわたくしの身体に触れたいのですか……?」
「うーん、前言撤回!」
変態扱いされるのでやめた。
リーシアが後ずさりしたのには少しショックを受けたが、常識的に考えて当たり前の反応だった。
5歳も年上の男、ひいては赤の他人である俺に体をまさぐられるなど思春期の女の子にとってはトラウマ級の地獄だ。
そんな事を考えながら反省していると
「……お、お兄様ならかまいませんよ?お兄様が望まれるなら……その、大丈夫ですから……///」
リーシアが恥ずかしそうにうつむきつつも、若干の期待が灯った瞳でチラチラとこちらに向けて言った。
……どうやら、地雷原を全力で駆け抜けてしまったらしい。
「すまん、他意はなかった。それから、またベルに串刺しにされそうになるからやめておくよ。」
ひとまず弁明しながら撤回するが
「いつまでもお待ちしておりますわ。あまり遅いとわたくしから近くまで参りますけれど。」
彼女は簡単に離してはくれない。
昨日からやけに大胆な発言をしてくるようになったな……リーシアがもうちょっと育ってたら危なかったぞ。
「ははは、リーシアも冗談が好きだな。ほら、リーシアも焼いてみよう。」
「はい、ぜひ。」
話の方向を変えてリーシアにも卵焼きを作るように勧めると、彼女は嬉しそうに笑いながら頷いた。
「えっと……まず薄くひいて……こうですね。」
「おう、丁度いいくらいだ。」
作り始めた彼女にアドバイスしようかと側で見ているが
「膨らんだ部分は修正して……ある程度火が通ったら巻く……あとは繰り返すだけ……」
「破れてない……だと……」
空気が入った部分は確実に潰して、薄い卵を破ることなく綺麗に巻いていく。
「……出来ました!」
そして、焼きあがったのだが
「か、完璧……!?マジかよ!?」
リーシアは一度も卵を破る事なく、その上綺麗に巻ききった。
「切り分けて中を見てもいいか?」
「はい!お願いします!」
切り分けて中に空洞がないかを調べるが
「中身もしっかり詰まってる……」
空洞はなかった。
卵焼きを作るのは初めてのはずなのに、出来た品には文句のつけようがない。
「す、すげぇ!すごいぞリーシア!一度見ただけでここまで出来るとは!」
俺は彼女の凄さを実感して絶賛する。
「えへへ、褒めていただきました……なんだか、恥ずかしいですけど、それ以上に嬉しいです。」
すると、彼女はまた頰を紅く染めてはにかむ。
本人は隠そうとしてるようだが、口角が微妙にあがっているのがバレバレだ。
「よし、これなら他のも教えられそうだ。食材ならあるからどんどんいこう!」
「はい!」
それから俺はリーシアに料理を教える事に夢中になった。
幸いにも調理に必要な物は魔力で交換できた。
ー二時間後ー
「お兄様、出来ました!」
汁物、煮物、和え物、揚げ物、色々と教えたが、リーシアはその全てを完成させた。
「流石!教えた全部が完成したどころか、全てベストな出来上がりだ!」
「えへへ……///」
そして、いつのまにか俺は褒める以外にやることがなくなっていた。
まるでスポンジが水を吸い込むようにして、いとも簡単に覚えるリーシア。
おかげで教えるのが面白くてつい作り過ぎてしまった。
「あ、あの、お兄様?」
「ん?どうした?」
完成した料理を眺めていると、リーシアから声をかけられた。
「えっと……その、褒めていただけるなら……その……」
しどろもどろに話す彼女は少しためらう様な表情を見せている。
「なんでも言ってくれ。」
そんな彼女にむけて笑みを浮かべ、言葉を待つ。
「そ、その……まを……」
リーシアはエプロンで顔を隠しながら何か言っている。
「ごめん、聞こえなかったからもう一回言ってくれ。」
俺は目線を合わせて言葉をかける。
「ぁ……あ、あたまを….撫でて、欲し、い…です……///」
すると、彼女は目線を合わせたり外したりしながら、熟れたトマトのように顔を真っ赤にして言った。
「お安い御用!
すごいぞ、こんなにたくさんの料理を一度に全部覚えたんだ。誇るべき才能だ。」
要望を受けた俺は笑って彼女の頭を撫でる。
褒めるのも忘れない。
「あ、ありがとうございます……///」
照れる彼女を見て和む。
もし、仲のいい妹が居たならこんな風に過ごせるのだろうか?
「そういえば、一つだけリーシアに言っておく事があった。」
「な、なんでしょうか……?」
リーシアの愛らしさに頰を緩めていると、一つだけアドバイスが思い浮かんだ。
「それはな……料理に絶対的な正解はない、って事だ。
確かに正しい手順はあるし、正しい味付けもある。けどな、それが絶対的な正解かと聞かれれば俺は違うと思ってる。」
「は、はい……」
俺の言葉を受け、彼女は真剣な眼差しでこちらを見つめて息をのむ。
ごめん。緊張してくれてるけど、そんなに重大な発表でもないんだ。アドバイスだから。
そんなことを考えつつも、リーシアにアドバイスをする。
「理由は簡単だ。あくまでもそれらは基本なんだ。
基本を頼りに様々な方向へ伸ばす事が出来る。応用する事が出来る。自分なりに考える事が出来る。
料理は俺からすると一つの絵のようなものだ。
食材で風景が変わる。
調味料で味の色彩が変わる。
調理法で食材の構図が変わる。
ざっくりと分けたけど、この三つを工夫したり、組み合わせたりするだけでも飽きないくらい追い求められる。
まぁ、要するに自分だけの物を作れるんだ。
自分にしか作れない、自分だけの料理だ。
リーシアにはぜひリーシアだけの料理を見つけてほしい。
これだけは誰にも負けない、そんな料理を君には作れるようになってほしい。」
「!…は、はいっ!わたくし、頑張ります!」
簡単なアドバイスのつもりだったが、リーシアは目を輝かせて返事をしてくれた。
「うん、いい返事だ。可愛いぞ。」
「あぅ……///」
笑いながら頭を撫でると、借りてきた猫のように大人しくなるリーシア。
……どうか、料理が彼女の魔法を使えないというハンデに絶望しない心の支えになってくれる事を祈る。
そんなささやかな思いを巡らせていると
「……お兄様、ありがとうございます。」
彼女は儚く気品のある笑みを浮かべて言った。
しまった。心を読まれちった……ま、いっか。
個人的に女の子は笑ってる方が素敵だからな。
「……お兄様は誰よりも素敵です。」
ぼそり、と彼女が何かを呟いたのには気がついたが、聞き取れなかった。
「さて、みんなが首を長くして待ってるだろうし、昼食にしよう。」
「はい!」
だが、俺は気がつかなかったフリをして笑いかけるのだった。
ちなみに、作り過ぎたと思っていた料理のことだが……
「うまっ!?コレなんですかい!?え?うまっ!?魔獣丸呑みするよりこっちのがいいでやす!」
「美味しいというのは素晴らしいね……」
主にプーロさんとルイスさんの二人がものすごい勢いで食べてくれたので問題なかった。
あと、ルイスさんの感慨深そうな声には俺も少し同情した。
「これならリーシアちゃんをいつでも送り出せるわね〜」
「リーシアちゃんの作ってくれた料理とっても美味しいわ。それと、タケシの料理はなんだか安心するわ。」
「おにーさんのも美味しいけど、リーシアちゃんのも美味しいね。」
アリシアさん、ローナとラウにも好評だった。
ただ、なぜかアリシアさんが俺に視線を向けていたのは気になったが。
「お兄様もわたくしの作ったお料理を食べてください。」
「おう……うん、美味い。」
「よ、よかった……」
「心配しなくても見ただけで美味い料理だってわかるさ。」
「うふふ、ありがとうございます。お兄様。」
最後に、リーシアは彼女自身が作った料理を俺が食べる光景を嬉しそうに眺めていた。
ちょっと食べにくかったが、自分の作った料理が好評で嬉しい気持ちは痛いほど理解出来るので何も言わないことにした。
作者「個人的にリーシアちゃんお気に入りです。めっちゃ甘やかしたい。」
隊長「お前……」
作者「ぶっちゃけ否定出来ないよね。」
※以外、若干のネタバレ注意
作者「あと、話変わるけどヒロインの人数多くてヤバい。ローナとラウ以外で確定してるだけでも最低8人はいる。でも、本当はもっと居ると思う。
てか、増える。」
隊長「扱いきれるのか?」
作者「わかんねぇ……でも、書きたいからやる。」