閑話【出陣】
こんばんは!
短い閑話ですがどうぞ!
ーサンスクリード王国【首都】トラゴエディアー
王城謁見の間にて、大勢の人々が集っていた。
しかし、そのほとんどは貴族であり、この場において重要な人物は中央にいる五名の人物。
そのうち二人は代表族長であるツツジとクラフト。
残りの三名はS級冒険者の称号を持つ者たち。
一人は長い耳と長い青髪を有した秀麗な顔立ちの美男子。物静かな印象を受ける。
名はハルリック・アポストル。二つ名を【蒼穹の貴公子】
一人は薄気味悪い笑みを浮かべたこげ茶色の短髪の女性。魔法使い特有の長帽子をかぶっている。
名はユレン。二つ名を【嵐の魔女】
一人は白髪で後頭部から編んだ長髪、中華風の装いと手にした槍が特徴的な年老いた男性。
名はジン。二つ名を【絶槍】
集まった者たちを見た貴族たちが立ち話をする声が所々で聞こえる。
「皆の者ぉ!静まれぃ!!王の御言葉である!!!」
一人の白髪の男。
王の側近であるハンスが声を轟かせ、場に静寂が訪れる。
「王よ、御言葉を。」
「うむ。」
ハンスは王座に座していたケーニヒに話をうながす。
「皆、よくぞ集まってくれた。特に余の依頼を受けてここに集うた勇者たちには心より礼を言う。
さて、息もつかせぬようで悪いが本題に移らせてもらう。事態は急を要するのだ。」
ケーニヒはそう言った後に目線でハンスに合図を送る。
それに頷いたハンスが口を開いた。
「今回の依頼内容については周知の通りだ。
リンドブルム領地シュトルツにて大罪人の確保が目的となる。
また、対象となる人物の名前はタケシ・シミズ。
この人物は我らの手には余る実力の持ち主であると推測され、現にリンドブルム領地の領主であり剣聖の称号を持つルイス・リンドブルム辺境伯でさえ手に負えぬと最上位神様全柱からのお達しだ。
そこで、リンドブルム領地への救援としてそこにいる五人には向かってもらう事になる。
すでにパラディ魔公国からの斥候はシュトルツにて対象の監視を始めているとの報告を受けている。」
ルイスに関して言及した時はどうしても人々がどよめく。
だが、ハンスは話に区切りをつけ、一呼吸置いただけで淡々と続ける。
「この危険度の高さを承知で任を請け負った者たちには心からの賛辞を。そして、依頼達成の暁には莫大な報酬を約束しよう。
出発は2時間後だ。移動方法はリンドブルム領地北15km地点までは転送魔法を使用し、その後は徒歩での移動となる。対話が不可能であった場合は即座に戦闘へと発展する可能性が高い。
その特性上、戦闘は電撃戦となる。各自最終チェックを怠るな。
また、帰還の際には転送用の魔具を使用する。
魔具はツツジとクラフトの両名に渡しているが、一つは予備である。緊急的に帰還する必要が出た場合や片方が破損した場合など、必要に応じて使用することを許可する。
説明は以上だ。」
「ちょっといいかしら?」
ハンスの話が終わるやいなや、唐突にユレンが手を挙げる。
「なんだ、嵐の魔女。」
「もし、うっかり殺しちゃったらどうすればいいのかしら?相手が抵抗してきても私たちが手加減できないくらいに強いのでしょう?」
ニタニタと薄気味悪い笑みを浮かべて問うユレンの真意は誰が見ても明らかだった。
「我らが拝した命はあくまでもここに罪人を連行してくることである。まだ話が通じぬと決まったわけでもない。」
「そう…わかったわ。」
ハンスの回答に対してユレンはただ一言そう返しただけであった。
「カッカッカッ!威勢が良いのう……小娘。」
「わたしとしましては何事もないのが一番なのですがね。」
その様子を見たジンが愉快そうに笑いながら、ハルリックが澄ました表情でそれぞれの感想を口にする。
「そんな事言って……貴方たちだって目的は報酬なんかじゃないのよねぇ?ただ強い相手と、まだ見ぬ技を持ったバケモノと戦いたいだけでしょ?」
二人の言葉を受けてユレンは流し目で他の参加者を見渡しながら言った。
「カッカッ!言わずとも知れた事を……金など要らぬ!闘争の果て、その極地に至るまでただ求めるのみよ!」
「……否定はしませんが、肯定もしかねますね。」
「拙者もまた然り。しかして義務も全うする。」
「オ、オラは族長どしで皆を守るだめだぁ。」
王国議会で懸念されていた部分を盛大にひっくり返す脳筋な考えをほぼ全員が示した。
「その心意気、誠にありがたく思う。出来ることなら余も共に赴きたいものだがな。」
「なりません。」
「このように石頭めが許さん。これではどちらが王かわからぬな。」
王が肩をすくめながら放った言葉に場がドッと盛り上がり
「カッカッカッ!王もまだまだヤンチャよな!」
「ケーニヒ王らしい。」「しかし、それでこそ王ですな。」「この国は安泰だ。」「あのお方が王ならば今は安心して領地を治められる。」
貴族たちも微笑ましげに言葉を交わす。
例えこの国の内情を知らぬ者がこの光景を目の当たりにしたとしても、その場に居る誰もが王に心からの信頼を寄せていると理解出来るだろう。
それ程までに和やかな雰囲気が場を包んでいる。
「さて、あまり時間を取らせるのも悪い。これにて解散とする。
予定時刻になれば我が転移魔法で送り届けよう。故、この場にまた集まるようにな。」
ひとしきりの談笑の後、ケーニヒはそう言い残して立ち去った。
「ならば儂は槍の手入れをしておこう。」
「拙者も刀の手入れを。」
「わたしは弓ですね。」
「わたしは杖とポーションかしら。」
「オ、オラは……オラは………やる事ねぇだ。」
各々が自身の得物を整備しようとする中、クラフトだけがおどおどしながら周りを見渡して肩を落とす。
「クラフト殿は拳が武器であるが故。致し方なし。」
「体調を崩さんようにな。」
それを見かねたのかツツジとジンが肩に手をおき、一言ずつ声をかけた。
「ん、んだぁ。」
体格に見合わぬ態度のクラフトは緊張気味にそう答えただけだった。
ー2時間ー
ケーニヒとハンスの前には出発準備を終えた五人が居た。
「よし、時刻通りだな。では、送るぞ。」
全員が時間通りに集まっていることに満足気な表情を見せてたケーニヒがそう言って魔法陣を展開する。
「ふふふっ!あぁ!楽しみだわ!」
「魔女よ、少しは落ち着かんか。戦いがあると決まった訳ではないぞ。」
「………ですね。」
「殿、我らが役目は必ずや果たしましょうぞ。」
「んだんだ!」
魔法陣の上にいる五人は思い思いに言葉を交わす。
「うむ、皆の武運を祈る。」
「わたしも改めて感謝する。」
ツツジとクラフトの言葉にケーニヒが応え、ハンスが一言だけ言葉を添える。
その刹那、魔法陣は輝きを増して五人を瞬間的に移動させた。
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ーリンドブルム領地より北に15kmー
–––シュン!
領地から少し離れた地点に姿を現した五人組。
「ほぉ、やはり馬車や徒歩とは違って楽よな。」
「当たり前でしょう。わたしも適性があれば習得出来たのに……ま、そんな事はどうでもいいわ。」
ジンが感心した様子で呟くと、ユレンがすかさず口を開く。
「皆の衆、参ろうぞ。」
「んだな。」
そんな二人の様子を見てツツジが声をかけ、クラフトが頷く。
「!……皆さん、お待ちを。注目していただきたい場所が。」
しかし、何かに気がついたハルリックがそこに待ったをかける。
「わかっとるわい。」
すると、ジンが槍を手に領地の方角へと睨みをきかせる。
「……なんと。」
「……あぁ、いいわね、最っっ高……」
ジンの言葉をキッカケにクラフト以外の全員が納得した様子で口々に言葉を放ち、視線を同じ方角へと向ける。
「?、何が……うわぁ!?」
疑問符を浮かべたクラフトが後ろを振り向くと、驚きの声をあげる。
皆が一様に見つめる先には
–––ゴガァァァァ!!!
数km先で一頭の黒龍が『ナニカ』と戦闘を繰り広げている光景。
「あれはルイス殿の友である黒龍!!」
驚きのまじった声色でツツジが叫ぶ。
「話し合いもクソもないわね!!いい!いいわぁ!」
ユレンが恍惚とした表情で反応し
「この距離でも伝わるこの気迫!驚異的な魔力!血がたぎる!儂の槍がどこまで通じるか試したくなるわ!」
ジンが獲物を見つけた猛獣のような笑みを浮かべ
「はぁ……仕方ありませんね。」
ハルリックがため息と共に呟き
「う、うそだぁ!もう戦わねぇどいけねぇだ!?……うぅ!げどぉ、やるじがねぇ!やるじがねぇだな!!」
クラフトが上ずった声で叫ぶ。
「皆の衆!合戦用意!!鬨をあげよ!!我らの名にかけて勝利を!!」
ツツジの言葉を機に五人は各々の武器を手に、戦闘領域へと突撃するのだった。
隊長「おい貴様、時系列的にこの閑話の投稿はおかしくないか?」
作者「あのね、言い訳するとね?土曜日出勤だったの。現場も変わったの。s級冒険者の設定も作ってたの。頭がこんがらがってたの。
で、気がついたら本編じゃなくて閑話しか書いてなかったの。てか、書けなかったの。」
隊長「で?」
作者「でもどうせ書いたし、投稿したかったから投稿した。本編に繋がるまでもう少しだけ時間かかるけど、予定では二話くらいだからいいかなって。」
隊長「本音は?」
作者「強くて渋い爺さんが書きたかっただけ!!ジンさんとかセル爺みたいな爺様キャラ大好き!」
隊長「考えなしにも程がある!」




