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こいつと話してるとつい……


ふははは!!御機嫌よう!

今の研修現場が肌に合うので書く気力が残ってるんです!

少ししたらまた現場が変わりますけどね!


あと下ネタ注意!!


 

 ー深夜ー



「ん………」


 パチリ、と不意に目がさめる。

 見上げる天井はまだ暗く、窓から差し込む月光に眩しさすら感じる。


「……?」


 ひとまず体を起こそうとするが、どうにも体が重い。


「…………あぁ。」


 ふと、視線を彷徨わせるとしっかりと俺の腕を掴んだローナとラウが両側で寝息をたてている。


 二人を見て思い出した。俺はローナに抱き込まれ、ラウに背中にくっつかれたまま眠ってしまったのだった。

 しかし、いつのまにか俺は仰向けになっている。おそらく、ローナとラウが腕を掴むために俺の体の向きを変えたのだろう。


「……まぁ、いいか…………いや、よくねぇな。」


 仕方ないのでそのまま二度寝しようかと思ったが、自身の異変に気がついて考えを改める。


 《主様、どうかなされましたか。》


 お、シュティ、いいところに。


 すると、いいタイミングでシュティが声をかけてきた。


 《はい、なんでしょうか。》


 あのね、やばい。今までに類を見ない危機だぞ。


 《……そのようですね。語彙力が低下する程にマズイ状況ですね。》


 おう、どうしてかは知らないけどな………()()()()()()()()()()


 《………ふむ、マンドラゴラを食べた影響ですね。

 まるまる一つしっかり食べてしまったので精力増強に繋がってしまったようです。》


 うん、冷静にありがとね。でもね、理性がね?もう陥落寸前なのね。


 現状を冷静に分析するシュティに対して俺は『それどころではない』と伝える。


 ムラムラするだけでなく、どうして理性が限界なのかって?

 そりゃあ、美女と美少女に密着されてる状況だからに決まってる。


 加えて、ローナは柔らかくて張りのある大きい胸で俺の腕を包んでるし、ラウは胸はあまりだけど腕にしっかり組みついてスベスベの太ももに手を挟んでるんだよね。

 何がとは言わないけど、明らかに太ももじゃないとこに手が当たってんの。

 ねぇ、ラウさんはなんでそこ挟んだの?ねぇ?なんで挟もうと思ったの?


 しかも、必然的に至近距離になるから二人とも顔が近くて良い匂いがするの。んで、無防備な上に色々と柔らかくてやべぇの。


 《そして主様は強制的に発情期、と。》


 な?やばいしか言葉が出ないだろ?


 《よく耐えられますね。絶えてるのですか?》


 我慢してるだけだ。絶えてねぇよ。


 《これは失礼しました。》


 ごめん、今だけはそのノリが辛い。


 《普段の調子が出ない程とは……相当(こた)えてますね。》


 うん、めっちゃくちゃ我慢してる。

 握力測定する時に思いっきり握る時くらい満身の力を込めて我慢してる。


 シュティは誰よりも俺の事を理解できる。

 最近では俺の性格合わせた発言をしてくれる事も多くなってきたが、今回ばかりは冗談を言ってられない。


 シュティ、悪いけどなんとかできない?


 《対処は可能です。》

 頼んだ。


 《即答ですね。》


 そりゃそうだ。頭の中の9割が欲にまみれてるんだぞ。

 言いたくないけど、下半身なんか制御不能だぞ。仰向けだから助かってるけど、もしローナかラウに体向いてたらアウトだった。

 必死にもなるさ。


 《では早急に対処致しましょう。……ところで、残りの一割でそこまで話せるのならば多少の余裕があるのでは?》


 お前さんは表面張力でギリギリ溢れない程度に水を注いだコップに氷を何個も投げ入れて大丈夫だと思うか?


 《無理ですね。》


 段々と脳内から欲が払拭されていくのを感じながら、シュティの言葉に反論する。


「あぁ、どんどん浄化されていく………」


 数分もすると、そのほとんどが消え去って思考がクリアになる。


 ……うん、ありがとう。ほとんど消えた。


 《大きいままですけど、大丈夫ですか?》


 シュティが直接的な名称を避けて指摘する。


 ほっとけばそのうち元に戻る。

 つか、体感的に俺の知ってるオレじゃない。俺の体内にはこんなに回せる程の血の量はないはずだけど……ま、いいや。


 あと、完全に余談だけど、全く関係ない場面で意思とは無関係にそうなる時って結構あるぞ。

 数学の問題解いてる時とかが一番意味不明で困った。その時、もしかしたら先生に『この式を解け。』って当てられるかもしれないと内心ヒヤヒヤしたもんだ。

 その時はどうにか助かったけど。


 くだらなくて下品だけど、思春期では割とシャレにならない男のあるあるだ。


 《なんとも言えませんが、それはそれで苦労がありますね。》


 おう。いきなり勝手に起立して勝手に着席しやがるからな。

 かなり迷惑だった。


 《左様ですか。》


「…………」


「すぅ……すぅ………」


「……くぅ……」


 ローナとラウは起きる気配がまるでない……さて、おかげさまで俺は目が冴えて眠れないし、シュティと話を続けようか。

 元々はその予定だったし。


 《お心遣いありがとうございます。》


 いや、俺からすれば何回もすっぽかしてるから謝らないといけないんだけど……


 《こうしてお話し出来るので構いません。》


 忠誠心高くて嬉しいけどその分の罪悪感が……俺が悪いから仕方ない。

 で、何の話をするんだったっけ……


 話をするのは覚えていたが、何を話そうとしていたのかをすっかり忘れてしまっている。


 《肝心な部分を忘れられていて、わたくしは悲しいです。》


 すまん!すぐ思い出すから!

 えっと、えっと…………あ!思い出した!ベルを雇った時に不満そうだったんだ!


 《覚えておられるではありませんか。》


 シュティの少し落ち込んだ声に焦った俺は思考回路をフル回転させ、どうにか思い出した。

 俺が思い出すと、シュティの声は安心したような色に変化した。それは少し嬉しそうに弾んでもいる。


 それで、どうして不満そうだったんだ?


 《それは………ですね、その……》


 うんうん、何でも言ってくれ。いつも世話になってるからお返しがしたい。


 言い澱むシュティに俺は急かさずにそう言った。


 《そう仰る割には忘れておられましたけど。》


 うっ……それは本当にごめん。


 すると、痛いところを突かれた。何も反論できない。


 《ふふっ、問題ありませんよ。

 わたくしこそ意地の悪い発言でした……そうですね。一言で表すならば、『不安になった』のです。》


 それまたどうしてだ?


 《わたくしは『スキルとして主様に仕えるモノ』です。

 しかし、主様はメイドを雇おうとしておられました。そこで、わたくしでは力不足なのだろうか、実は満足していただけていないのではないか、わたくしの居場所を取られてしまうのでは、と。


 そうした不安で、不満で、主様に対する無礼を働いてしまったのです。わたくしは不甲斐ないだけでなく、未熟で愚かです。

 実際には主様に心から信頼していただけているのにも関わらず、その様に考えてしまったのですから。》


 うーん……なんか、本当にごめん。

 ベルは完全にその場のノリで雇ったんだけど、そこまで深く悩むとは思わなかった。


 《いえ、今は主様から最も信頼を置かれていると自負しています。わたくしにとっての誇りがあります。

 貴方様の半身とまで言われてしまっては不安を覚える隙などないではありませんか。》


 ははは、実際シュティには俺の全部を預けてるからな。


 《その言葉一つ一つがわたくしにとって何よりも喜ばしいモノなのです。

 言葉とは、時にいかなる力よりも強大な威力を発揮します。それは主様もよくご理解されていらっしゃいますよね。》


 確かにそうだな……両親を亡くしてから立ち直れたのはクミさんの言葉がキッカケだし……


 《再確認いただき感謝致します。

 そして、()()()()()()()も『主様の(シュティ)』であるからこそ。

 これはわたくしの『()()()()()()()()』なのです。》


 なんか……そこまで言われると小っ恥ずかしいな。


 シュティの大げさな発言になんとも言えない気恥ずかしさを感じていると


 《いいえ、これは誇張などではありませんよ。》


 ひどく真面目な声でそう告げる。


 なるほど、つまりシュティは俺のこと好きなんだな。


 真面目な雰囲気は苦手なのでおどけてみせるが


 《はい、それはもう心の底から()()を抱いております。》


 シュティは熱に浮かされたような声色で言い放った。


 お、おう………キッパリ言い切られると流石の俺も恥ずかしいぞ。

 にしても、()()とはね。素直に嬉しいぞ。


 《……言わぬが花、でしょうか。()()()()。》


 シュティが不思議な事を言う。


 ん?なにが?


 《お気になさらず。少し歯痒さを感じただけです。》


 えぇ、そんな余地あった……?


 《えぇ、御座いましたとも。》


 理由を聞いてみるが、見事なまでに理解できない。


 そうか、悪いけど考えてもわからない。愚鈍でごめんな。


 《まったくです。》


 わお、自虐したら肯定されちった。


 《以前、主様が褒めるばかりではつけあがってしまう、と仰られていたので……申し訳ありません。》


 俺自身も忘れてる様な細かいところまで覚えてくれてるシュティがほんとに好き。


 今も言ったが、発言した人物さえ忘れている事を覚えてくれてると無性に嬉しく感じる。


 そんな事を考えていると、シュティが何かを堪えているような声で言う。


 《あぁ、いけません……ニヤケが止まらなくなります。》


 シュティって比喩表現が多いよな。


 《そうでしょうか?》


 おう、まるで自分に表情があるみたいな言い方する時って結構あるだろ?


 《……そうですね、指摘されて気がつきました。修正した方がよろしいですか?》


 いや、親しみやすいからそのままでいてほしい。


 《主様はわたくしを殺す気ですか?》


 消えるのだけはやめてくれよっ!?

 人生詰むのもそうだけど、シュティは俺の半身だぞ!?


 《非常に嬉しいのですが……その、主様のですね……言葉一つ一つが急所に刺さるのです……》


 よっしゃ!わかった!黙る!


 《あ、それはそれで寂しいです。》


 うん!君めんどくさい!

 つか、最後のだけわざとやってない?


 《あら、バレてしまいましたね。》


 俺の言葉にクスクスと笑っている。


 はぁ……シュティ。


 《は、はい。》


 少し真面目な思考に切り替えて話しかけると、それを理解したのかシュティは緊張した声色でこたえる。


 まだベルに対抗意識があるのかは知らないが、別に無理しなくていいんだぞ。


 《あら……本当に、バレてしまいましたね。》


 あぁ、なんか今のは本当に少しだけど違和感があったんだよ。

 俺に合わせてくれるのは嬉しいけど、少しでいいんだ。無理のない範囲でな。


 《……お恥ずかし限りです。》


 いやいや、説教してるわけじゃないぞ?

 ただ、無理してまで合わせてもらっても楽しくないから言ってるだけだ。


 《!……ふふ、貴方らしいですね。》


 俺が憎まれ口を叩いて説得していると、シュティは静かにそう言った。

 そこにはどこか愛おしげで優しい色。


 あ、ちなみに今の個人的にポイント高いぞ。

 そうやってたまに貴方とか貴方様って言ってくれるのもグッとくる。


 《気がついていらしたのですか……》


 自然にスルッと言ってるけど、こっちとしては結構ドキドキするんだぞ。


 《気がつきませんでした。》


 ふははは!そりゃ意識しないようにしてたからな!

 シュティって声だけなのに何故か惚れそうになるんだ!


 《わたくしなりのアピールですからね。》


 なにそれ怖い!でも最高の相棒!


 《おや、フラれてしまいました。》


 だってシュティはスキルじゃん。


 《愛の形は無限大です。》


 うん、ダメだこの子。


 《………》


 ………


 少しの沈黙。


 《……ふふふっ。》


 …ぷっ、あはは!やっぱシュティと話すのは楽しいな!


 そして、笑い合う俺たち。

 シュティはノリがいいので、ついつい俺も歯止めがかからなくなってしまう。


 《それはそれは……他の皆様に悪いですね。ですが、ここは譲れません。》


 あぁ、代わりなんていねぇさ。

 誰もが他人に取って代わる事なんて出来ない。


 《他者の在り方を模倣したところで所詮(しょせん)は真似事、という事でしょうか。》


 なんか難しく言い直してくれたけど、よくわからん。

 でも、多分そんな感じだ。


 《そうですね……えぇ、そうですとも。》


 俺が肯定すると、シュティは深く納得したような、あるいは改めて認識し直したような雰囲気を漂わせて呟いた。


 ………んじゃあ、シュティと話も出来た事だしそろそろ寝るかな。


 あまり長く起きていると体内時計が狂ってしまいそうなので眠る事にした。


 《少し名残惜しいですが、承知しました。》


 起きたらまた話せるだろうに。


 珍しく尾を引くシュティの発言に苦笑しながら言及する。


 《おっしゃる通りです。ではまた明日。》


 おう、また朝に。

 あ、俺の意識落としてー


 《電気を消すような気軽さですね……》



 シュティの少し呆れたような声を聞きながら、俺は意識を手放した。




 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



 《…………》


 己の主である青年の意識を落としたモノは沈黙する。


 《誰もが他人に取って代わる事は出来ない、ですか………えぇ、その通りです。


 だから………私が貴方をどれほど想っているかなど、そんな事はどうでも良い……そのはずでした、そのつもりでした。》



 しばらくすると、ポツリポツリと内心を吐露し始める。

 それは誰にも聞こえない、聞こえるはずのない声が紡ぐ言葉。



 《私はただ貴方と共に居られるならそれで良かった……けれど、私は言葉を交わしてしまいました。

 自身の願望に、欲に、願いに、想いに………私はこの立場を利用した。


 だって、仕方ないではありませんか……『貴方を守ると誓った』その時には持ち得なかった手段がそこにはあったっ……!


 ……私にとってそれは余りにも魅力的で、輝いていた。そこに憧憬を抱いていた私が食いつくには充分過ぎるほど。

 本来、私に貴方と話す資格などありません。顔向けも出来ません。私は卑怯者です。


 結果的ではあれども、私は過去に貴方を『騙している。』『裏切っている。』


 そして、それは今もまた同じ事。


 私がこの事実を語らぬ限り、貴方への裏切りは続きます。


 それを承知でなお、私は貴方へ偽り続けます。

 貴方を騙し続けます。


 罪に罪を重ねる事に、この行為に対する許しなど請いません……罰ならば受けましょう。

 軽蔑も、侮蔑も、屈辱も、その一切を私はただ受けとめます。例え、貴方から見放される事になろうとも。


 それでも私が偽り続けるのは、ただ、貴方が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 それが、それこそが……》



 それはまるで懺悔。

 誰にも聞こえない声の悲鳴。



 《()()()()()なのですから。》



 しかして、そこに在るのは固い決意と確かな忠誠だった。





作者「今の研修現場最高すぎる。」


隊長「どうでも良いな。」


作者「いやいやいや!職場の雰囲気が肌に合うかどうかって超重要だぞ!?」


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