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ルイスさん……苦労してるんだな………


お待たせしました!!


……いやね?言い訳させていただきますとね?

友人二人に執筆をめちゃくちゃ妨害されたんです。


 

 どうも、皆さん、こんにちは。

 俺です。今からダイニングルームでお昼ご飯です。


「皆様、お揃いですね。」


 ルイスさんがダイニングルームに揃った俺たちを見て、柔らかに微笑みながらそう言って席につく。


「あまり堅苦しく作法にうるさいのも無粋かと思いましたので今回は軽い物にしてみました。」


 ルイスさんが続けて言った後、使用人の人たちが俺たちの前にオードブルを出す。


「ありがとうございます。

 助かります、わたしは礼儀作法には疎いものでして。」


 俺に料理を出してくれた使用人の方に俺を言ってから、ルイスさんにもお礼を口にする。


 ……ていうかさ、これ完全にフルコースのソレだよね?軽い物って……その定義はどこに?


 ただ、目の前に出された皿を見て疑問を抱く。


 《一品目がオードブル、つまりは前菜ですので、主様の世界基準でいえばフランス料理の一般的なコース形式かと。

 予想通りであれば品数はオードブル、スープ、ポワソン、ソルベ、アントレ、デザート、カフェ・ブティフールの全七品となります。

 ちなみに、この形式ではあと二段階ほど上がございます。》


 ……うん、ルイスさん、本当にありがとう。一般的な高校生じゃまず知らないわ。


 シュティの説明に冷や汗をかき、ルイスさんの気遣いに心の底から感謝していると


「あはは、そんなに謙遜しなくてもいいよ?充分に礼儀を弁えてくれているじゃないか。

 それに、僕は冒険者上がりだから、僕自身も堅苦しい礼儀作法なんて気にしなくてね。」


 ルイスさんが笑顔でまさかの事実を暴露した。


「ありがとうございます。

 それと、冒険者上がりって本当ですか?」


 俺はてっきり何代も続く名家だと思ってたんだけど……


「うん、僕は平民出身の元冒険者でね。だから、この家も僕が初代なんだ。」


 俺の質問に対してルイスさんは笑顔で答えた。


「そうだったんですね……意外です。ルイスさんはすごく風格があるので、ずっと昔からある家だと思ってました。」


「そう言ってくれると嬉しいよ。」


 俺の感想にルイスさんはにこにこしながらそう言った。


「さ、話もそこそこに……家の料理もどうぞ。」


「あ、すみません。頂きます。」


 ルイスさんにやんわりと催促されてから料理に手をつけていない事を思い出した。


 ふと、周りを見渡すとラウやローナは静かに食事をとっていた。

 ちなみに、ベルは『あくまでも、わたくしは使用人の立場としての役割を担っておりますので。』と言って、食事には参加せず、ローナの後ろで控えている。

 内心、『悪魔なだけに?』と思ったのは内緒。


 フェルとサティに関しては、流石にこの場にまで連れてくるのはマズイかと思ったので、お昼ご飯を先にあげてから部屋で待機してもらっている。


「……美味しいですね。」


 俺が呟くと


「それなら良かった。奥様方はいかがですか?舌に合いますでしょうか?」


 ルイスさんがそう反応し、ローナたちにも確認をとる。


「えぇ、美味しいです。」


「美味しいです。」


 ローナとラウは少し微笑みながら言った。


「それは重畳です。」


 ルイスさんはローナたちの言葉を受けて、胸をなでおろすように言った。


 あれ、完全に社交辞令だな。いつもならもっとにこやかに笑ってるし、美味しいの手前に『とても』とかつけなかったし。ちょっと優越感。

 ………それにしても、この国の王様は結構いい施政者なのか?平民出身でも貴族になれて、領地も貰えるみたいだし……


 前菜を食べながらそんな事を考えていると


 《逆に言いますと、それ相応の功績を挙げた、という事になりますが。》


 シュティがそう補足を入れてくれた。


 確かにそうか。貴族になるなら何かしらの形で功績を残さないとダメだな。

 ……何をしたんだろうか?元冒険者というくらいだから相当強い魔獣を駆除したとか?


 《ここは聞いてみるのが一番かと。》


 そうだな。


 そういう訳で、ルイスさんの功績に興味を持った俺はどんな事をしたのか聞いてみる事にした。


「ルイスさん、差し支えなければ質問してもいいですか?」


「うん、いいよ。答えられる範囲ならどんな事でも聞いてほしいな。」


 俺の唐突な申し出にも関わらず、ルイスさんは笑顔で承諾してくれた。


「ありがとうございます。では、質問ですが、ルイスさんは何をなされて貴族に?」


「うん?そんな事に興味があるのかい?」


「はい。」


 俺が質問すると、ルイスさんは意外そうな表情を浮かべて言った。


「それは嬉しいけど……リーシアの事じゃなくていいのかい?」


 少しいたずらっぽく言ったルイスさんに


「えぇ、それはまた別の機会に。」


 笑顔で対応する。


「この心意気、確かに受け取ったよ。」


 すると、ルイスさんがそんな事を言った。


 あ、やべ、何気なく言ったけど絶対なんか勘違いされてるやつだ。


「そうだね、僕が何をしたかと言えば………うん、せっかくだしシミズ君が考えてみなよ。シミズ君からの僕の評価も気になる事だしね。」


 自身の軽率な発言に少し後悔していると、ルイスさんからそう提案された。


 正直、めんどくせぇ。

 けど、必要経費か。


「そうですね……うーん、なんでしょうか。難しいですね。」


 俺はこの世界の魔獣とか全くと言ってもいいくらい知らないし……多分、『知ってる動物は?』って聞かれて『犬とか猫』って答えるレベルだろ。


「うん、流石にヒントなしは辛いね。だから、一つ大ヒントをあげようか。

 ヒントは僕の家紋だよ。」


 真剣に悩んでいると、ルイスさんが笑いながら言った。


「家紋、ですか……」


 ルイスさんの家紋といえば……確か、ベビみたいな龍が剣をくわえたヤツだったな……あ、まさか……


 呟きながら思案を巡らせていると、ある答えが浮かんできた。


「まさか、龍の討伐……なんて。」


 恐る恐る、その答えを口に出すと


「あはは、半分は当たりだね。……それにしても、やっぱり実力者は考えが違うね。」


 ルイスさんは愉快そうに笑いながらそう言い、感慨深そうに付け加えた。


「えっと……?」


 俺が返す言葉に詰まっていると


「あぁ、僕がしたのは龍の撃退さ。それから、その龍と少し盟約をね。」


 ルイスさんが答えを示した。


 ……わぁーお、そっちかぁ……いや、待てよ?龍を撃退して盟約……?

 なにそれ!?超かっこいい!!特に盟約って響きが素晴らしい!


 俺の中でルイスさんの評価が何段階も上がった瞬間だ。


 《……安いですね。》


 いやいやいやいや!龍だぞ!?ドラゴンじゃなくて龍!龍!


 《あ、そうでしたね。主様はそういったものがお好きでしたね。》


 あぁ!大好きだ!


 シュティが呆れ気味に言っていたが、俺はそんな事お構いなし。



「それはすごいですね。しかし、どうしてまた龍と相対する事に?」


 俺が若干食い気味に質問すると


「あぁ、それなんだけどね。僕がまだ冒険者で王都にいた時にその龍がちょっと襲撃しにきてね。」


 ルイスさんが苦笑しなら答えた。


「…っ……………」


 チラリ、とラウの様子を確認すると、彼女はほんの一瞬だけ眉をしかめた。それと、フォークを持つ手に力が入っていたのが確認できた。


「……龍が直接襲撃に?」


 ラウの様子をうかがいながら慎重に質問をする。


「うん。そこで他の冒険者を含めて防衛戦を展開したんだけど、僕がその撃退の要になっちゃってね。

 それが終わったと思ったら、あれよあれよとこのザマさ。まったく……あの戦友は有能だけど、まさかこんな事になるとはね。」


 やれやれ、といった様子でルイスさんは懐かしむように笑って言った。


 ていうか、戦友って響きがまたカッコいいな……一回でいいから言ってみたい。


「す、すごいですね。」


「まぁ、色々と複雑な事情があってね。襲撃してきたあの子も見方を変えれば被害者みたいなものだから。」


 俺の言葉にルイスさんはその龍をかばうような発言をした。


 どうやら、一方的に悪と決めつけたりするつもりはないようだ。


「…………」


 念の為にラウの様子を確認すると、少し不機嫌なご様子。

 ま、そりゃ楽しくはないだろうな。


 前菜も食べ終え、俺がラウの心情を推し量っていると


「さて、次はスープなんだけど……ちょっと特別でね。」


 ルイスさんが少し不安そうな、困ったような笑顔で言った。


「そうなんですか?」


「うん、別に材料がどうこうという訳じゃないんだけどね。とにかく、飲んでもらえたら嬉しいよ。」


「えぇ、楽しみです。」


 そんなやり取りの後、スープが出てくる。

 見た感じでは普通のコンソメタイプの透き通ったスープだな……何か変な物が入っているわけでもない。


「頂きます。」


「うん。」


 とりあえず、一口頂いてみる。


「!………え?めちゃくちゃ美味い……」


「あら、本当ね。」


「あ、すごく美味しい。」


 俺やローナ、ラウが思わず口を開いた。


 このスープ、野菜の甘みがまず最初に華を咲かせたかと思えば、次の瞬間には凝縮された肉の旨みが弾ける。

 コクが深くて味に奥行きがあるのに、後味はすっきりとしていて、とても飲みやすい。


 素材の味が活きていて、本当に美味しいの一言に尽きる。


「あぁ、それはよかったよ。ね?リーシア?」


 絶句していると、ルイスさんが本当に嬉しそうに頰を綻ばせ、なぜかリーシアに同意を求めた。


「はい!」


 リーシアの方を見ると、彼女もまた嬉しそうに笑って元気に返事をした。


「?」


 その不思議な光景に疑問符を浮かべていると


「実はこのスープだけはリーシアが作った物でね。とても美味しいから是非とも飲んで欲しかったんだ。」


 ルイスさんの口から想像していなかった言葉が出てくる。


「………」


「………」


 その言葉にローナとラウは時が止まったかの様に硬直し


「……え?リーシアがコレ作ったの?マジで?俺より上手だぞ?教えられる事とかなんにもないぞ?むしろ俺が教えてほしいくらいだぞ?」


 俺はリーシアの料理スキルが想像の遥か上のレベルにあった事に驚きを隠せず、つい色々と口走る。


 ていうか、13歳でこんな美味いスープ作れるのなら『天才』以外に言い表す言葉がないぞ。


「いえ、わたくしもまだまだ経験が浅く、お料理のレパートリーも少ないですので、ぜひお兄様から学びたいのです。それに、お兄様とお料理する事に大きな意味がございます。


 あぁ、お兄様に褒めていただけました……///

 これ以上ないほどに嬉しいですわ。……あぁ、いけません……表情が緩んでしまいます。」


 俺の言葉に対してリーシアは恐ろしいくらいの向上心を示し、顔を赤くしながら照れる。

 それと、表情を崩さないように努力しているが、そのせいでニマニマとした表情になっていて、余計嬉しそうに見える。ただし、その姿さえもめちゃくちゃ可愛い。


「……ねぇ、ラウちゃん。これってわたし達かなりピンチよね?」


「……うん、わたし達は料理しないし、出来ないから。その分アドバンテージはあの子にあるね。」


「どうしよう……わたし達も料理を勉強した方がいいのかしら?」


「……素人でも一朝一夕でこの出来栄えにするのは無理ってわかるくらいだよ?」


「……そうね。でも、あまりタケシばかりに頼ってたら嫌われちゃうかもしれないわ……」


「おにーさんに限ってそんな事はないと思うけど……確かにおにーさんばかりに負担をかけのはよくないね。」


「えぇ、そうね。そうと決まれば、わたし達もこっそり練習しましょう。」


「うん。」


 俺がリーシアに関心を寄せていると、ローナとラウがなにやら話していた。

 まったく聞き耳をたてていなかったので、何を話していたのかはわからない。


 ……ま、別にいいか。ローナ達が変な気を起こすわけないだろうし。


 《主様は何も危惧されないのですか?》


 そこは信用してるからな。まぁ、何かしら問題を起こしてもご飯抜きとかのお仕置きするし。


 《まるで教育者のようですね。》


 いや、いくら教育でも飯抜きは虐待とかその辺の問題に引っかかるからな?でも、ローナ達は神様だから飯食わなくても問題ないってだけで。


 《精神的ダメージは大きいと思いますが。》


 神様を反省させようと思えば、それくらいしないと無理だろ。


 《……左様ですか。》


 うん。


 シュティと脳内で会話をしながらスープを飲んでいたが


「?……あぁ。」


 気がつくとスープを飲みきっていた。


「リーシア、ありがとう。美味しいかったよ。」


 ひとまず、作ってくれた人がすぐそこに居るのでお礼を言う。


 まぁ、これは実体験だが、作ったモノを美味しく食べてくれて、なおかつお礼を言われると本当に嬉しいものだ。


「それならば本当によかったですわ。わたくしのお料理でよろしければいつでもお作りいたします。」


「一緒に作る時にお願いするよ。他の物も食べてみたい。」


「えぇ、お任せくださいませ。」


 にこにこしながら嬉しそうに承諾するリーシア。

 俺自身、本当に思った事を言ったので、承諾してくれて嬉しい。


 ……というかさ、なんかアレだよね。幼妻感がすごいよね。


「こりゃあ、さぞかしモテるだろうなぁ……可愛い、素直、料理上手の三拍子が揃っているなんて滅多にいないぞ。」


「いけません、表情が………///」


 俺がリーシアを脳内で褒めちぎっていると、どうやら途中から言葉に出ていたらしく、彼女は顔を隠すようにうつむいた。


「……ねぇ、ラウちゃん。わたし達も料理が出来るようになったら褒めてもらえるかしら。」


「うん、きっと褒めてもらえるよ。そうじゃなかったら、わたしはスネる。」


「わたしは泣くわ。」


 ………ローナ達が何を話してるかは知らないが、ちょいと不機嫌なのはわかる。

 俺は子どもを褒めて伸ばそうとするタイプなんだよ……その辺はわかってくれ。つか、子ども相手にムキになるなよ……後で二人が料理出来ないのをネタにしておちょくれないじゃん。


 《流石は主様。鬼畜です。》


 それは褒め言葉だよ。シュティ君。


 《あぁ……()()もっと素直で可愛らしく、恋焦がれるいじらしいお方でしたのに……どうしてこの様な……》


 プライバシーって言葉は知ってる?あと、サラッとトラウマをえぐるのやめて?


 シュティが俺の脳内から昔の記憶を読み取ったらしく、まるで母親の様な事を言った。





 ルイスさんやリーシア、ローナ達とそんなやり取りがありつつも、食事を終えてお茶を飲んでいると


「ルイス様、ご報告が。」


 唐突に姿を現したセル爺さんがルイスさんの側に来た。


「今じゃないとダメかい?」


可及的(かきゅうてき)速やかに報告しなければならない事案でございます。」


「セル爺がそう言うくらいだから、相当だね。

 うん、何かな?」


「はい、実は––––––。」


 少しのやり取りの後、セル爺さんがルイスさんに耳打ちをする。


「え………?本当かい?」


「はい、残念ながら。」


 すると、セル爺さんからの報告にルイスさんが表情を変えた。

 そして、驚きを隠せないルイスさんに対して、セル爺さんは首を左右に振りながら答える。


「まずいね……本当にまずい。どうしようかな……」


「現状では打つ手がございません。」


「だよね……」


 深刻な表情をする二人に、俺は思わず声をかける。


「どうしたんですか?そんなに深刻な問題が?」


「ん?あぁ………うん、これは言っておくべきだろうね。」


 俺が質問すると、ルイスさんは困ったような笑みを浮かべてそう言った。

 そして、こう続ける。


「実はね………僕の妻、()()()()()()()()()()……それも、今日には着くみたい。」


「……えっと、それって悪い事ではないですよね?」


 暗い表情のルイスさんが言った内容に、俺は驚きながらそう聞く。


「うん、帰ってくること自体は別に問題じゃないんだ。ただね、『リアの作る料理が問題』なんだ……」


 俺の質問に対して、ルイスさんは頭を抱えて呟くように答えた。


「料理、ですか?」


「うん、リアは壊滅的に料理が下手でね……でも、本人はその自覚がないみたいで……善意で作ってくれるから余計に……」


「あぁ………なるほど。」


 死んだ魚のような目をしながら言ったルイスさんに、事情を察した俺は同情しながら頷く。


 つまり、ルイスさんの奥さんはクミさんと同じく飯マズ属性持ちだが、その上で自覚ナシの厄介さがあるという事だ。


「それで問題なのは……客人である君たちにその料理を振る舞おうとする可能性が高い、という事さ。

 さらに、シミズ君とリーシアが料理を一緒にするとなればなおさら……ね?」


「…….わぁお。」


 なんともいえない表情で話すルイスさんに、俺はかける言葉が見つからない。


「僕が食べるのなら問題はないけど、お客様にそれを出すのは問題しかない。」


 本当に問題視しているらしく、真剣な表情で話すルイスさんに


「……食べるのがわたしだけなら大丈夫ですが。」


 俺は意を決してそう提案する。


「自殺行為だよ……?」


 その提案にルイスさんは表情を変えないままで言った。


「そんなレベルですか……」


「うん、そういうレベルだよ。残念ながらね。」


 ドン引きする俺に、ルイスさんはまた困ったように笑いながら言う。


 ……なぁ、シュティさんや。最悪の場合なんだけど、『味覚遮断』って出来たりする?


 《可能です。》


 うん、ならいいや。希望があるなら頑張れそう。


 他人の家に来て、まさかこんな事になるとは露程も思ってもいなかったが……せっかくだから、一度食べてみて改善出来そうならしてみようと思う。


「……やはり大丈夫です。なんとかなりますから……いえ、なんとかしてみせます。」


 ちょっとしたお節介をしようと決め、ルイスさんに宣言する。


「………えっと、いいのかい?僕が言うのもおかしな話だけど……アレは本当に危険だよ?鍋が溶けるようなスープを作ったりするんだよ?下手したら死ぬよ?

 物理的に胃に穴があくよ?」


 すると、ルイスさんが珍しくまくし立てるように言った。様子を見るに、冗談ではないようだ。


「何を入れたらそうなるんですか……けど、なんとか乗り切ります。」


 しかし、男に二言はない。そうと決めたならやるしかないだろう。


「……うん、わかった。シミズ君がそこまで言ってくれたんだ。僕とシミズ君でリアの料理を食べよう。

 正直、とっても心強いよ。いつもなら僕一人で食べてるからね。」


 後半、ちょっと嬉しそうなルイスさんに俺はつい言葉をもらす。


「心中お察しします。」


「うん………」


 それに頷くルイスさんが、俺にはうなだれる人形のように見えた。




 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



 リンドブルム領地・シュトルツから北東に200kmほど離れた地点。

 その場所には大きな影があった。


 その影の正体は、上空を飛ぶ一頭の()()であった。

 全長およそ50mは優に超えるであろう巨体に一対の巨翼を広げて飛翔する。


 しかし、その頭部をよく観察すると、小さなナニカが乗っていることが確認できる。


「あら〜、やっぱりプーちゃんに乗ってると風が気持ちいいわね〜」


 龍の頭に乗るナニカ、それは人である。

 それも、おっとりとした口調の美女。

 風になびく金髪に、空をそのままはめ込んだような瞳をした女性は優しげに龍を見つめながら撫でる。


「そりゃ良かったですぜ。(あね)さん。」


 女性の言葉に黒龍は嬉しそうに口を開く。


「でも〜、やっぱりこつごつしてて座り心地はイマイチね〜」


 そんな中、女性は黒龍の外殻を撫で、ほんの少しだけ不満そうに言った。


「なははは!姉さん、それは言わぬが花ってもんでしょうや。あっしは龍族ですぜ?人族を乗せるようにはできちゃいやせん。」


 すると、龍は快活に笑いながら言い返した。


「それもそうね〜……でも、馬車みたいに揺れないからのんびりできるわ〜」


 龍の言葉に対して女性はそんな事を言った。

 フォローのつもりなのだろうか?全くもって意味を成していない。


「なはははは!あっしが馬車と大して変わらない扱いなんざ龍族の誇りもへったくれもありませんや!」


 しかし、龍はそれすらも快活に笑い飛ばす。


「あら〜、わたしったらつい〜、ごめんなさいね〜」


「いやいや、姉さん。元よりあっしは龍族から抜け出したようなもんですから、気にするこたぁねぇですぜ。」


「うふふ〜、ありがと〜」


 やわらかな雰囲気で会話していた両者だったが


「それより姉さん。やばいです。」


 龍が唐突に真剣な口調で話しかけた。


「あら〜?どうかしたの〜?ルイの領地で何かあったのかしら〜?」


 その言葉に女性も少々真剣に反応すると


「昨日の晩に食った【キング・ナ・コング】がユニバースしそうです。」


 龍は心底気持ち悪そうにそう言った。


「あらあら〜?それは大変ね〜……でも〜、家まであともう少しよ〜?耐えられそうにないかしら〜?」


 女性は困り顔で龍に問いかける。


「いや、マジでやばいです。急ぎで飛んでるせいで、あっしの胃の中でキング・ナ・コングがバラバラのくせにユニゾンしてやす。

 今すぐユニバースしてもいいですかね?ユニバっちゃっていいですよね?」


 その問いかけに龍は意味不明な答えを返した。


「流石にダメよ〜、空の上でそんな事したら地上が大惨事になるわ〜」


 意外と冷静な女性は困った表情のままで龍の提案を却下する。


「いや、でも…うっぷ………あ、マジでやばい。」


 だが、反論する暇すらない程に龍はピンチである。


 あと少しで大惨事を引き起こしかねない龍を見かねたのか、女性が腰につけたポーチを探りながらこう言った。


「仕方ないわね〜……じゃあ〜、()()()()()()()()()()()()をあげるわ〜」

「あ!すいやせん!たった今、治りやした!やっぱ、大丈夫でさぁ!」


 だが、その刹那、龍は異常なまでに焦りながら強がりを言った。


「あら〜?本当〜?それは良かったわ〜」


 ホッとした表情を浮かべて頰に片手を添える女性。


「うっす!さぁ、姉さん!ここから一気に飛ばしやすぜ!」


 そして、龍は何かから逃れるかのように一気に加速し、目的地を目指す。


「あら〜、元気ねぇ〜

 これならお昼過ぎくらいには着きそうだわ〜」


 女性は微笑みながらおっとりとした口調で言う。



 帰ったその先では、夫が化け物と友人関係を築きあげた挙句、娘がその化け物を兄と慕っているなどとは知らずに……





作者「ちなみに、キング・ナ・コングは妨害してきた友人の一人の提案です。」


隊長「あぁ、どうでもいいな。」


作者「うん、それ以下は後書きに書く事も特にないかな。」


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