庭に香る
こんにちは!
前回の前書きと後書きは完全に深夜テンションでした……ちょっとノリで書いたらあんな事に……すみません。
それでは!どうぞ!
「お兄様お兄様、こちらに座りましょう。」
「おう、そうするか。」
辺りを暖かな風が優しくおおう中、リーシアに手を引かれて来たのは庭園に生えている木の下。
そこに2人で座り込む。
「ん……あれはサロン用の部屋か?」
座ってから何気なく周囲に視線を彷徨わせると、庭の端に設置された平屋が見えたので、リーシアに聞いてみた。
「いえ、あちらはお母様が趣味で育てている植物の菜園ですわ。」
すると、彼女から意外な答えが返ってくる。
ビニールハウスみたいなもんか……ていうか、貴族でも家庭菜園とかするんだな。
「へぇ……リーシアのお母さんは家庭菜園をしてるのか。でも、なんでまたあんな隔離するみたいに端っこに建ててるんだ?移動するの面倒なんじゃないか?」
ただ、一つ気になったのは何故かその平屋が館から距離をとるように建てられている事だ。
「それはですね……お母様は……その、なんといいますか………少々特殊、といいますか……」
すると、彼女は歯切れの悪い言葉でお茶を濁そうとした。
「あ、すまん。触れちゃいけない話題だったか?」
なので、話題を変えようとすると
「いえ!そのような事はありません!
……ですが、あちらの中ではヒドラ茸などの危険な物を育てていますので……お母様の心象が悪くなってしまうのは心苦しくて……」
彼女は少し目を伏せてそう言った。
えっと、ヒドラ茸っていうと………なんだっけ?
《国指定危険毒物の一つに指定されているキノコの事です。主様も森の中で見たことがございます。》
あぁ、鑑定の試運転ついでに確認したグロいアレか……まぁ、別に趣味は人それぞれだし、会ってもいない人だからぶっちゃけどうでもいい。
《主様らしいですね。》
前向きに受け取るよ。
「それなら大丈夫だ。俺は何も気にしないぞ?趣味は人それぞれだからな。」
俺が笑いながらそう言うと
「…はい、そう言って頂けると幸いです。」
リーシアはほんの少し、わずかに違和感のある笑みを浮かべた。そこには、どことなく哀愁を漂わせている。
「?………まぁ、それにしても、今日は暖かくて気持ちいいな。風もほどよくてつい長居してしまいそうだ。」
さっきのリーシアの表情はどこか引っかかるものがあったが、特に気にする事もなく話題を振る。
「うふふ、それなら嬉しいです。お兄様ならここに住まわれても大丈夫ですよ?」
すると、彼女はくすくす笑いながらいたずらっぽく言った。
「それはなんとも魅力的な提案だけど、俺にも家があるからな。他のみんなも居るし。」
だが、俺はあの森から出て行く気はないし、そもそも多くの人と関わるのも面倒だ。近所付き合いなどがその最たるものだ。
それにしても、流石貴族というべきか?
10代前半の少女にも関わらず、社交辞令を交えた会話をしてくるとは……貴族って怖い。
「それは残念ですわ。………それと、突然ですがお兄様、いくつかお聞きしたい事があります。」
表情に出さないように貴族の恐ろしさを痛感していると、リーシアは唐突に真面目な表情で言った。
「……だろうな。」
彼女の言葉を受けて、空を見上げて呟くように返事をする。
俺の中では、質問してくる内容の予想はできている。
きっとローナ達のことだろう。
「お兄様は……その……あのお二方とご婚約なされているのですよね……?」
横目で確認すると、彼女はそう言いながら両手の指を胸の前で合わせたり、離したりしている。
「まぁ……そんな感じ、かな。どちらかといえば事実上の結婚とでもいえばいいか。」
「そう、ですか……」
「あぁ。」
再び視線を空に戻してから俺が放った言葉に、リーシアは少し落ち込んだ声で詰まるように言った。
え、なにこれ?なんでリーシアがちょっと落ち込んでんの?それになんか、気まずくない?
途切れた会話の空気感に居心地の悪さを感じていると、リーシアが口を開く。
「一緒に住まわれているのは……いつから、なのでしょうか?」
「ちょうどここに来た日の夕方かな。ローナとはもともと『一緒に住もうか。』って約束してたんだ。
それと、ラウの方は……まぁ、細かくらそのうち話すけど、大雑把に言えば成り行きだ。」
彼女の質問に対する答えが適切なのかはわからない。
だが、下手に嘘をつくのは後々めんどくさいことに発展する恐れがある。
「っ……そうですか。
………そういえば、ローナさんとラウさんには様々な違いがございますが、お兄様にとってはどちらもお好みの女性なのですか?」
すると、彼女はローナとラウの事を聞いてくる。
「まぁ……好き、だな。
ローナもラウもそれぞれ魅力がある。」
自分でもちょっとだけ顔が熱くなるのがわかる。
「……お…お兄様は…その……身長や年齢、体型などはあまり……気にされないのですか?」
「基本的にはな。」
だって、ローナもラウも神だし。年齢とか気にしてたら負けだし。それに、ラウは多少小さくても合法だし。
………あれ、俺って最低とか通り越してクズ?
「で、では……あのお二方とは別にお兄様に……こ、ここ、好意を寄せる方が………いらっしゃった場合は……どう、なるのでしょうか?」
自身の最低さに呆れていると、リーシアがそんな事を口にした。
「うーん、あの2人以外にそんなもの好きがいるとは思えんが……」
大前提から既に破綻していそうな話だな、などと思いながらそう言うと
「例えば、の話ですわ。」
リーシアは冷静にそう言って俺に視線を送る。
「だとすると、そこはローナとラウがどう思うかだな。
俺は来るもの拒まずって感じの最低野郎だから、本当に心から相手が好いてくれているのなら受け入れるけど……問題はローナ達がそれを許してくれるかどうかだな。」
とまぁ、こんな感じで最低な発言をする俺。
今までもかなり最低だったが、今回は一際酷い。
うん、これマジで後ろから刺されても文句言えねぇ……ていうか、もうあの2人を嫁さんに貰う時点で充分すぎるんだよなぁ……
「そうなのですね。お兄様、ありがとうございます。」
すると、なぜかお礼を言われた。
「いやいや、今俺は思いっきり最低な発言したからな?お礼言われる事もしてないし。」
俺は視線をリーシアに向け、苦笑しながらそう言うと
「最低、ですか?別に殿方が複数の女性を愛するのは不思議な事ではありませんよ?お父様はなぜかお母様以外の女性を愛しませんが、それは稀な事ですわ、
それに、今はおわかり頂けずとも構いませんわ。うふふっ♪」
どういう訳なのか、彼女は上機嫌に笑っていた。
というか、この国って一夫多妻制かよ……
「そ、そうか……まぁ、機嫌が良さそうでなによりだ。」
「はい♪」
彼女は口元を手で隠し、くすくすと嬉しそうに青い瞳を細めている。木の下で可愛らしく笑う金髪の美少女か……写真に収めたくなるくらい絵になるな。
あ、そうそう、写真で思い出した。この子にあげたケータイはどうなっているんだろうか?
「そういえばリーシア。」
「はい、なんでしょうか?」
「前に渡したケータイはどうした?」
「それなら常に持ち歩いておりますわ。お兄様から頂いた大切な物ですから、一時たりとも離すことはありません。」
俺の質問にそう答えてから彼女はどこからともなくケータイを出した。
おい、ちょっと待て……今、どっからケータイ出現したんだ……?明らかにケータイなんぞが入るスペースなんてないよな……?
「うふふ、不思議そうなお顔をしていらっしゃいますね。お兄様がそのようなお顔をされるとは思いませんでしたわ。」
俺が戸惑っていると、リーシアはさらに楽しそうに、そして嬉しそうに笑う。
「魔法か?」
俺がそう聞くと
「いえ、わたくしは生まれつき魔法を全く使えませんの。ですので、お父様が特注の服をいくつか作ってくださっています。
そして、その服がこれですわ。これにはアイテムボックスの術式が組み込まれておりますから、服そのものが収納家具のようになっておりますの。他にもいくつか術式が組み込まれております。」
「……なるほど。」
リーシアが笑顔でさらっと重要な発言をした。
魔法が使えない……?こんなにも魔法にあふれた世界で?それってかなりマズイんじゃないか?
《主様のおっしゃる通り、死活問題です。
本来であれば魔法が使えないという事は、この世界において普遍的な生活は不可能です。》
………リーシア、笑顔でカミングアウトしたけど?
なんでもないような事みたいに言ったけど?
《この少女がその問題をどのように捉えているのかはわかりませんが、本来であればコンプレックスであり、トラウマの原因にもなります。》
俺、思いっきり地雷踏み抜いてるじゃん……やっちまった。
あまり触れて欲しくないであろう話題に話を移してしまった事を後悔していると
「お兄様、その様なお顔をされないでくださいませ。
確かに、わたくしは魔法が使えず、一般的とはいえません。ですが、お兄様のような優しい方が悲しんでくださいます。同情などではなく、自分の事の様に悲しんでくださる……そんな純粋な悲しみ。魔力を見ればわかります。
それでも、わたくしはそれこそがとても幸運なことなのだと思います。全くの他人であるにも関わらず、わたくしのためにそこまで悲しんでくださる方が居る。それこそが、わたくしの幸運なのです。
ですから、わたくしは自身が不幸などとは思えませんわ。
それに、わたくしは魔力が見えます。これもまた幸運な事です。」
「っ!!」
彼女は春に咲く花の様な愛らしい笑みを浮かべてそう言った。
今、俺の目の前で華やかに笑う少女には確かな気高さがあった。
謙虚でありながら強く、決して飾ってはいないその気高さ。
『あぁ……彼女は俺なんかよりもずっと強い。』
ただ、心からそう思った。俺には存在しないその精神的な強さが眩しく感じる。
未だ過去に囚われ、好きだと言ってくれる人たちに応えられない俺とはまるで真逆だ。
「リーシア、俺は君に敬意を表する。」
彼女の目を見て、真剣に、心からの言葉をおくる。
「いいえ、わたくしには敬意を表される資格などありませんわ。」
すると、彼女は瞳を閉じ、首を横に振りながら言った。
「……どうしてだ?リーシアのその強さは敬意を払うに値するはずだ。」
少し、悲しそうに笑う彼女の表情を見て、俺はフォローを入れながら励まそうとする。
「それは………」
そんな俺の言葉を受け、リーシアは視線を彷徨わせている。まるで、視線の先で言葉を探しているかのように。
「…………」
しばらくの沈黙の後、諦めたように視線を落とし、ゆっくりと口を開く。
「わたくしが見る魔力とは………その人の心の事なのです………わたくしが望む、望まず……その対象の人物が許す、許さず、に関わらず……わたくしは………人の心を……見てしまうからです。何もしなくても……見えてしまいます。
……今もなお、わたくしの目はお兄様の心を映しています。本当はもっとお兄様と仲良くなってからお話したかった……ですが、それは同時に何も知らないお兄様の心を黙って見ていることと変わりません。
………ですから、その……お兄様から見たわたくしは………き、気持ち悪く…ないでしょうか?軽蔑、されませんか……?
人の心を覗き見るような……こんなわたくしを………」
顔を上げ、俺を見つめながら嘆願するように言った彼女。その両手はドレスの端を握りしめていて、まるで叱られるのを待っているかのようだった。
なにより、俺が見たその青い瞳には『怯え』と『諦め』の色が入り混じっている。
……どうやら、今度こそ地雷を踏み抜いてしまったようだ。
これは俺の責任だな……どうにかしないとなぁ………けど、下手なフォローは彼女を余計に傷つけるだろうし……仕方ない、ここは本音でぶっちゃけるか………
と、こんな感じで俺は本音で話す事にした。
「リーシア。」
「っ!……はい。」
俺が彼女の名を呼ぶと、一度肩を跳ねさせてから返事をする。
「今から残酷な事を言うかもしれない。それでも君は聞くか?」
「………はい、覚悟はしております。」
俺の事前告知に、彼女はより深く表情に陰を落とす。
「そうか。じゃあ、いくつか言いたい事があるが……とりあえず、よく言ってくれたな。」
ひとまず、俺は笑いながらそう言って彼女の頭を撫でる。
「…………え?えっ?」
すると、状況がよく理解できないらしく、リーシアは目を点にして固まっている。
「君のいま起こした行動は勇気ある行動だ。怖かった だろ?でも、それを踏み越えて君は俺に話してくれた。
だから、よく言ってくれたな。」
「っ…………!」
「先に謝るけど、ごめん。ぶっちゃけるとな、そんな事はどうでもいいんだ。
俺にとっては、その程度の事は問題ではない。
ごめんな、せっかく勇気を出してくれたのに。」
俺は、はっきりと言葉に出してそう伝える。
「っっ……!」
俺のそんな言葉に彼女は瞳を大きくして じわり と目尻に涙をためる。
「ごめん。」
やはり、傷つけてしまっただろう。
彼女の勇気を踏みにじったのだ。当然の反応。
「お兄様……は………どうして、そのような事が言えるのですか………」
落胆したのだろうか?肩を落として目を伏せた彼女は静かに言った。
「俺がそういう人間だからだ。他人の事など気にもとめない、そんな最低の人間だからだ。」
これで、完全に嫌われたはずだ。
「違います……!そうではありませんっ……!」
だが、俺はどうやら認識を間違えているらしい。
リーシアは急に顔を上げて俺を見つめながら言った。
その瞳はまるで……悲しいなにかを見ているようだ。
「……なら、どういうことだ?」
今度は俺が彼女の言葉に耳を傾ける。
「なぜ、貴方はそこまでしてっ!誰かの為に優しくできるのですかっ……!?
先ほどの言葉は確かにお兄様の本心です……それはわたくしが一番わかります……見えて、いますから……ですがっ……ですがっ……!
どうしてお兄様はそんなにも『自分を殺してまで人を傷つけない道を選ぶ』のですか!
なぜ、貴方には……人を思いやる優しい心『しかない』のですか!?」
涙ながらに訴えるリーシア。
なんか、やたらと褒められてる………のか?
「……俺は本心を言ったに過ぎない。思いやり、というのは買いかぶりじゃないか?」
だが、俺はそんな良い人ではないし、好かれるような人間でもない。
「その言葉もです……お兄様は意図的にではなく、優しさを無意識的に発揮しています。……人が良い、というにはあまりにも……異常です。
まるで、なにかに『取り憑かれた』かのように貴方はそうしています!
わたくしが先ほど申した事に対しても、貴方はわたくしに対して一切、負の感情を抱いておりませんでした……それは本当に嬉しく思います。
……ですが、お兄様の心にはそれしかありません。」
「リーシア、なにを言っているんだ……?」
俺には彼女の言葉の意味がわからない。
けれど、次にリーシアの放った言葉が俺に突き刺さる。
「わたくしから見たお兄様は、ご自身の事への損得を一切考えられておりません。
その優しさがご自身へ向けられる事がありません。
それはまるで、『自身を見限っているかのよう』で……わたくしにはそうとしか思えません。」
「…………」
本当に悲しそうに表情を歪めて話すリーシアに、俺は何も言えなくなる。
だが、彼女に話していないかつての後悔は自分の生み出した結果であり、自業自得。
そして、二度とそうならない為に俺は行動している。
クミさんのように突然の別れにならないように。
自分の想いを大切にした結果、自分の心を殺してしまったあの時とは違う結末の為に。
だから、俺の行動は必然的だ。
なにより、それは俺の為でもある。
「また、です………お兄様はそうして何度もご自身の心を殺します。」
すると、ポツリとリーシアが呟いた。
なぜか悲しそうな表情のままで。
「………」
俺が黙っていると、彼女はこう言葉を続ける。
「わたくしの知るお兄様は優しい方です。
ですが、それはお兄様の持たれる一面に過ぎないでしょう。
ですから、わたくしはお兄様の事をより深く知る事が出来るようにこうしてお話しています。
お兄様がどのようなお考えをお持ちなのか、何がお好きで、何がお嫌いであるのか、他愛のない事でも構いません。
そして、今一つだけわかった事があります。
それは、お兄様が『ご自身の事を嫌っている事』です。
わたくしはそれが悲しいのです。」
ここで、やっと彼女がなぜ悲しそうにしているのかが判明した。
「リーシアは優しいな。こんな俺の為にそんなに悲しそうにしてくれる。ありがとう。」
俺は彼女に笑いながら礼を言う。
「っ……お兄様、話を逸らさないでくださいませ。
わたくしはお兄様がご自身の事を大切にされていない事が悲しいと申しているのです。」
しかし、彼女は真剣な表情で俺を真っ直ぐに見つめながらそう言った。
「そんなつもりは……」
「つもりも何も、お兄様は今もこうして話を変えようとされます。」
「………これは参ったな。」
リーシアは『一歩も引かない』と態度に示しながら、会話から俺を逃さない。
「お兄様はどうしてそこまでご自身を嫌われるのですか?」
「………どうして、ねぇ。」
リーシアの質問に対する答えが見つからない。
おそらく、俺の過去は彼女にとって荷が重い話となるだろう。明らかに13歳の少女に話すような内容ではない。
はてさて、どうしたものか……
頭の中で考えがまとまらず、思案したままでいると
「……すみませんでした、お兄様。
わたくしも無理に聞き出すようなことはしたくありません。」
「………」
先ほどとは一転し、彼女はすぐに身を引いた。
そして、18歳の青年が13歳の少女にめちゃくちゃ気を遣われてしまった。かなり恥ずかしいぞ。
「ですが、やがてはお兄様の心に寄り添えるほど近くに参ります。
ですので、覚悟してくださいませ♪」
「お、おう……?」
その後、パァっと笑顔を見せ、俺の手を取りながらそう言ったリーシアに、俺は頷きながら一言返事をするのが精一杯だった。
……切り替え早くてお兄様はびっくりだよ。
「という訳ですので、お兄様の事をもっと知りたいのです。わたくしからいくつか質問させて頂きますね。」
今度は楽しそうに笑いながらそう言ったリーシア。
「あぁ、うん、いいぞ。」
とりあえず頷いて了承することしかできない。
いや、うん、ほんとに切り替えがすごいね……
リーシアの切り替えの早さに関心していると
「お兄様はお料理などはされますか?」
彼女からそんな質問が飛んできた。
「まぁ、それなりには。人並み程度にはできると思うぞ。」
「まぁ、それは嬉しい事を聞きましたわ。」
俺が答えると、彼女はより一層明るい笑顔で手を合わせる。なんだか、期待しているように目を輝かせているのが気がかりだ。
「えっと、流石に貴族専属の料理人には勝てないぞ?」
まさか『料理人と対決してくれ』なんて無茶を言われるんじゃないかと不安になったので、先に断っておく。
「あ、いえ、実はわたくしも少しお料理を作ったりしますの。ですが、最近始めたばかりなのです。
そこで、可能であればお兄様とご一緒にお料理ができれば、と思ったのですが……ダメ、でしょうか?」
すると、彼女は意外な事を口にした。
もしかして、母親が家庭菜園する家庭的な人だから、リーシアも家庭的なのか?
え?なにそれ?ただでさえ金髪碧眼美少女属性持ってるのに、加えて家庭的とか最強じゃないか?
「俺でなんかよければ。」
そんな事を考えてながらも笑って承諾する。
というか……捨てられそうな子犬のような表情で言われると流石に断れない。しかも、金髪碧眼の美少女だし。属性特攻ってすごいね……表情の一つ一つがクリティカルヒットするんだから……
「本当ですか!ありがとうございます!お兄様!
わたくしとても嬉しいですわ!今からとても楽しみです!」
リーシアは本当に華やかな笑顔を見せてくれる。
純粋で素直で愛らしく、気品ある仕草。
あ、ローナにも気品はあるぞ?
え?ラウ?えっと………ラウは……親しみやすい女神。うん、ラウって可愛いよね。
《主様……》
いやまて、皆まで言うな。
《……はい。》
失礼だとはわかっていても、ラウのあの緩いイメージは払拭できない。
「お兄様、考え事もよろしいですが、今はわたくしを見てくださいませ。」
少しシュティとやりとりをしていると、リーシアが頰を膨らませてそう言った。
「あ、すまん。ちょっとした癖みたいなものだ。次から気をつける。」
彼女の言葉を受けて、目を見つめながら謝ると
「ご理解頂けただけで嬉しいですわ。……あのっ、そんなに見つめられると恥ずかしいですわ///」
顔を赤くし、両手で顔を隠した。
いや、どっちだよ。見てくれって言われたからそうしてるのに……
《主様は乙女心に疎いですね。》
うん、それは自覚してる。
「うぅ……ところで、お、お兄様?」
すると、リーシアは顔を隠している両手の指に隙間を作り、そこから瞳をのぞかせる。
「うん?どうした?」
その仕草を愛らしく思いながら彼女の言葉に耳を傾ける。
「お兄様はどのようなお料理が得意ですか?」
「俺の得意料理……?」
そういえば何が得意だったっけ……言われてみればこれといったモノが思い浮かばない。
「うーん……出汁巻、かな?」
なので、とりあえず一番手間のかからないモノをチョイス。
正直なところ、出汁はかつお節やら昆布から取らなくても市販のもので代用できる。
だから、慣れれば卵焼きと同じくらい楽。
「だしまき、ですか?聞いたことがありません……わたくしの知識不足ですわ。」
「俺の故郷の料理だしなぁ、仕方ないだろ。」
だって《故郷=異世界》だからな。
むしろ、知ってたら怖い。
「そうなのですね。お兄様の………ふふっ、また一つ知ることができました。」
彼女は嬉しそうに微笑みながらそう言い、こう言葉を続ける。
「よろしければ、それをわたくしにご教授くださいませんか?」
「別にいいけど……材料は俺の持ってるやつでいいか?」
「はい、わたくしからもお願いしますわ。」
「じゃあ、いつにする?」
という事で、リーシアに出汁巻を教えることになったので、時間を決めることにした。
「そうですね……本日のご昼食とお夕食はは準備しておりますので……あっ……」
「どうした?」
彼女は呟きながら思案していたが、急に動きを止める。
「ど、どうしましょう……本日の分はもうお料理ができません………お兄様が帰られてしまいます………」
そして、俺を見ながら残念そうに言った。
「えっと……ルイスさんに明日も滞在できるか聞いてみて、大丈夫そうなら明日とかは……?」
リーシアが枯れかけの花のように、あまりにも元気をなくすので、つい、いたたまれなくなって提案する。
「!、よ、よろしいのですか!?」
「えっ、あっ、うん。」
俺が提案した瞬間、リーシアが元気いっぱいに笑顔を咲かせる。
「それでは、お父様に確認をとりましょう!セル爺!いらっしゃいますか?」
「はい、ここに。」
「うお!?いつの間に!?」
「セル爺、お兄様方が明日も滞在されて問題ないか、お父様に確認をお願いします。」
「その事ですが、既に確認を取っております。問題ない、とのことです。」
「あら、流石ですわ。ありがとう、セル爺。」
「光栄の極みにございます。」
「さがってくださって構いませんわ。」
「承知しました。それでは、失礼します。」
「という事ですので、お兄様!明日、わたくしとお料理を致しましょう!」
「あ、うん。わかった。」
そして、あれよあれよという間に明日の滞在が決まった。
……あれ、これやられた?貴族マジックにハマった?
ていうか!セル爺さん優秀すぎない!?ベルと全然違うじゃん!!
俺が貴族の恐ろしさを目の当たりにして、戦慄していると
「明日はお兄様とお料理ですか……ふふっ、楽しみですわ。」
リーシアがにこにこしながらそう言った。
………ま、いいか。
初々しい彼女の様子を見て、どうでもよくなる。
「そこまで楽しみにされると俺としても嬉しいぞ。」
「うふふ、お兄様がそうおっしゃってくださると、わたくしも嬉しいですわ。」
「あぁ、もうそいうの反則だ。リーシアは本当に素直で可愛いな。」
俺はそう言いながら、ついクセで頭を撫でる。
「っ……///」
すると、ビクッと一度体を跳ねさせて目を見開く彼女。
「あ、すまん。クセでやっちまった。」
驚いたであろう彼女の反応を見て、撫でていた事に気がついて手を離す。
「あっ……いえ、大丈夫……ですわ。
……えっと、その……お兄様は……いつもこのような事をされるのですか……?」
視線を右往左往させながら、リーシアが質問してきた。
「あぁ、うん。よくラウがねだってくるもんでな。あと、フェル。」
俺がそう答えると
「…………すごく羨ましいです。」
リーシアが聞き取れないほど小さな声で何かを呟いた。
「え?なんて?」
そこで、何を言ったのか問いただそうとすると
「あっ、いえ!なんでもありませんわ!」
焦った様子で彼女は否定した。
「そうか?」
何か聞かれたくない事だろうか?などと、疑問に思っていると
「はい!それよりもお兄様!そろそろお昼のお時間ですわ!戻りましょう!」
リーシアがサッと立ち上がって俺の手を引いた。
視界の端にある時計で時刻を確認すると、11時50分手前くらいだった。
「あ、ほんとだ。よし、戻るか。」
「はい、そうしましょう。……///」
そうして、俺とリーシアは本館の方へと戻った。
しかし、その間はずっとリーシアの顔がほんのりと赤みがかっていた。
隊長「なぜ途中から少しシリアスなんだ?」
作者「……ちゃうねん……全編ゆるふわのうふふにしようと思っててん……けどな?気ぃついたらあぁなってん……」
隊長「読みづらいから標準語にしろ。」
作者「はい、すみません。
あと、昨日にはこれを投稿していたかった……おのれAC7め!許さん!
ですが、昨日には戻れないのでサッサと続きを書いてきます。」
隊長「言い訳もはなはだしい。やる気の問題だろうに。」
作者「……なんも言えねぇ。」




