思いがけない事ってあるよね!
皆さま!おはようございます!
久々にグラブってたら遅くなりました!すみません!
あと、人によってはご不快になられます場面が一部ございます。ご注意下さいませ。
ー翌朝ー
「ん……」
朝日に誘われて瞼を開く。
「朝、か………」
俺はぼんやりと天井を見つめながら呟いた。
《おはようございます、主様。》
「あぁ、おはようさん。シュティ。」
そして、いつものようにシュティと挨拶を交わす。
《む、なぜかご機嫌が良いご様子ですね。》
すると、シュティが俺にそう聞いてきた。
あぁ、なんだか良い夢を見ていた気がしてな。
なんとなく懐かしくて幸せな気分なんだ。
《…左様でございますか。》
おう。
………あ、そういえばシュティ、こういうのって出せる?
シュティの発言までに謎の間があったが、特に気にせず、ふと思い出したとある物を出してもらえないか聞いてみる。
《はい、可能です。ですが……身体に悪いです。》
まぁ……そうなんだけど……なんとか頼めない?
《……承知しました。念の為に後で解毒させて頂きますね。》
あ、うん、ありがとう。
しぶしぶ、といった声色でシュティは俺の要望を叶えてくれた。
そういえば、疑問なんだけど俺の身体って毒とか効くの?
ここでふと思った事を聞いてみた。
《魔力を媒介にした物は基本的に効きません。なので、この世界に存在する毒などは全て無効化されます。
ですが、主様の魔力で精密に構成された物質の場合は例外となります。》
……要するに自滅?
《一言で表現するならば、そうなります。》
じゃあ、俺だけが自分自身に有効な毒を生成できるということ?
《左様です。他の神の毒などはわたくしが無効化しますので。》
そして今回の場合はその有効な毒が俺の魔力で構成された煙草?
《有害物質を毒と定義するならば正しい認識です。》
なら、最初から無効化すればいいんじゃ……?
《……それだと全く別の新しいナニカになります。
理由として、その物質を構成している式を全て書き換える非常に面倒な事になります。》
うん、ごめん。それなら解毒の方が早いな。
《ご理解頂きありがとうございます。》
「うん、これだ。」
そして、シュティとの会話の後に手元に出現したのは、いわるゆ手巻きタバコのセット。
ペーハー、たばこの葉、ローラー、フィルターの合計四つ。
「♪」
なぜこのセットを出してもらったのかというと……まぁ、前の世界で荒れた時に吸ってたからだ。
なら、どうして手巻きなのかを説明すれば、最初は一般的に見られる箱に入っている既成品を吸っていたが、とりあえずコスパが悪かった。手巻きなら最終的には箱入りよりコスパが良かったんだ。
ま、要するにバカな学生の財布には痛手だったんだよ。
ん?そもそもどうして煙草を吸うようになったのかって?
それはクミさんが居なくなってから『自分が道を誤れば戻って来てくれるのではないか。』なんてくだらない考えを持った結果だ。
それに、生きる理由を失った俺にとっちゃ残りの人生なんてもはやどうでもよかった。『これで早く死ねるならそれでいい。』とすら思っていた。
まぁ、結果的には事故死したから関係なかったけど。
すると、シュティがこんな事を聞いてきた。
《……主様、なぜ今になって既成のソレではなくわざわざ巻く必要のあるものを?今は魔力交換ですから金銭面の問題はありませんが。
いえ、それよりもなぜ新しく生まれ変わったのにも関わらずソレを必要とするのですか?》
簡単に言うと箱入りはとにかく不味い。
あとは………俺自身わからん。ただ、なんとなく。
シュティからの質問に俺自身も釈然としていない。
言われてみれば確かになんで今になって吸いたいと思ったのだろうか?
《左様でございますか。》
あぁ、前に俺が我を忘れて怒り狂った時や、レヴィの食事を見ていた時は箱入りをなんとなく吸った。
そして、今は手巻きの方をなんとなく。
《………》
ん?急に黙り込んでどうした?
《いえ、なんでもありません。》
そうか。
「ん、出来た。」
巻き終えた煙草を手に窓辺へと歩みを進め、窓を開けて火をつける。
「ふぅ……うん、うまいな。」
《主様、前もそうだったのですが、これ意外と解毒するのが面倒です。よくこんなモノを体内に蓄積させる事ができますね。》
うん、ごめん。本当にごめん。
煙を吐き出して呟くと、珍しくシュティから文句が飛んできた。
《なら今すぐにやめてください。》
……それもごめん。
《はぁ……》
俺の言葉に呆れてため息を吐くシュティ。
……なんだこの絵面。普通じゃねぇな。
《主様が異常ですからね。》
はは、そうかもな。
《色んな意味で、ですが。》
うん、反論できない。
……前にも何回かこんなやり取りをした気がするんだけど気のせい?
《さぁ?》
スキルに呆れられる人物、という奇妙な状況に笑っていると
「くわぁ…………くぅ?」
後ろの方であくびが聞こえた。
「あ、フェル、おはようさん。」
「がう………」
振り向いてフェルにいつも通りの挨拶をなげかけると、フェルは前脚で顔をぐしぐしとこすっている。
「………?………!」
すると、フェルが不思議そうに辺りの匂いを嗅ぎ始め、やがてこちらに視線を向けた。
「グルル……ガウッ!ガァ!」
「……え?」
そして、突然目を細めたかと思えば、俺に向かって吠えだした。
「グラァッ!ガウッ!」
「えっ、ちょ!?フェル!?」
さらに唸った上、今度は親の仇を見るような目で俺を睨みつける。
うそだろ……すげぇ悲しいんだけど。
「えぇ、なんで……って!冷た!?なんか指先が冷たい!!」
急にフェルに吠えられた事に傷ついていると、指先が異常に冷たい事に気がいた。
俺が驚きながら視線を指先に向けると
「あ!?よく見たら煙草凍ってる!?もしかして吠えてた原因これか!?煙草が原因か!?」
そこには全体を氷に包まれた煙草があった。
《恐らくはそのようですね。先程に見せた匂いを嗅ぐ仕草から考えればそれが妥当かと。》
マジか。やっぱ煙草の臭いってキツイか。
《フェンリルなどは特に嗅覚が鋭いですからね。個体によっては煙草などを毛嫌いするでしょう。
それと、ローナ様や自然の化身たるアルラウネも恐らくはこの臭いを嫌うかと。》
そして、シュティが冷静に現在の状況を解説する。
……シュティ。
《はい。》
部屋を消臭して換気をお願いできるか?
あと、フェルの解毒と鼻先についたであろう臭いの消臭も。
《承知しました。》
ありがとう、助かるよ。
《いえ、この程度ならばお礼を言われる程の事ではありません。それに、これで主様が煙草をやめて下されば幸いです。》
………うん、やめるわ。
《賢明なご決断かと。わたくしもサポートしますのでご安心くださいませ。》
……本当にシュティには頭が上がらない。
こうして、俺は唐突に禁煙する事になった。
いや、当然といえば当然なんだが。
「フェル、ごめんな。嫌な臭いだったな。」
そして、俺がフェルに謝りながら近づくと
「スンスン……ガウ。」
「えっ………」
フェルは俺の匂いを嗅いでからそっぽを向き、部屋の出口から出ていってしまった。
そんかフェルの瞳は『なんか臭い』と言いたげで、そこはかとなく哀愁と嫌悪が入り混じっていた。
《……なんといいますか、その……すみません。主様の消臭を忘れていました。》
………うん、そうか。
原因はすぐに判明した。
《申し訳ありません!今すぐ消臭しますので!》
おう………いや、やっぱローナ達の反応も見たいからこのままでいい。
しかし、俺は逆に感謝した。先も言った通り、ローナ達の反応も見ることができるからだ。
《……よろしいのですか?》
うん、とりあえず反応だけ見たらすぐ消臭をお願いしていいか?
《承知しました。》
手間をかけさせて悪いな。
《その様な事はありません。》
おう、ありがとう。
《………わたくしにも責はございます故。》
いや、シュティにはないよ。
《申し訳ありません、独り言です。》
そ、そうか。珍しいな。
シュティの独り言に妙な引っかかりがあるのを覚えつつも、俺はリビングへ向かった。
「ローナ、ラウ、サティにベル、おはようさん。」
「おはよう、タケシ。」
「おはよー、おにーさん。」
「……グル。」
「おはようございます。」
リビングのドアを開けると、既に全員が揃っていた。
……みんな朝起きるの早くない?
《サーベルティーガーは基本的にリビングで寝ていますし、他の皆様は曲がりなりにも神ですから睡眠は必要ありませんので。》
うん、それもう何回も聞いたな。
「挨拶も済ませましたので、一つ言わせて頂きます。
わたくしの優先順位が魔獣より下というのは不服なのですが。」
シュティと少しやりとりをしていると、ベルが冷たい表情で口を開いた。
「ん?あぁ、悪いな。コウモリみたいなもんだと思ってたから最後になったわ。」
俺が笑いながらそう返すと
「そうですか、では、モーニングにナイフをどうぞ。」
–––ヒュヒュン!!
–––ギギンッ!!
「こりゃどうも。」
「……チッ。」
朝から二本ほどナイフを投げられた。
「あら、タケシはわたし達から興味がなくなったの?」
「わたしもおにーさん斬りつけてみようかなー……」
すると、ローナとラウが見事に拗ねた。
どうやら、ベルとのやり取りがお気に召さないらしい。
ローナはむくれっ面で、ラウはジトーっとこちらを見据えている。
「なんでそうなる。さっきの会話の内容からしてローナとラウが優先順位が高いだろ。
あと、ラウの権能は冗談にならん。やめてくれ。」
俺はそんな彼女達に笑いかけながら歩みよる。
だが、ラウの権能は本当に笑えない事態に陥る。流石に万物を斬り裂く剣で斬りつけられるとかヤバすぎる。
「ふふっ、そう?そう言ってくれると嬉しいわ。」
「あはは、冗談だよ。おにーさん。」
すると、一転して笑顔を見せてくれる二人。
「それを聞いて安心したよ。ローナ達に嫌われたら生きる理由なくしちまうぜ?」
「それはすごく嬉しいわね。」
「そうだねー……ところで、おにーさんからなんか変な匂いするんだけど何か燃やした?」
「……ほんとね。言われてみれば……タケシからなんだか嫌な匂いがするわ。」
和やかに話していると、ラウから気にしていた事を指摘された。その言葉をキッカケに、ローナも俺の匂いに気がついて少し眉をひそめる。
「あ、やっぱこれ嫌か?」
「うん、そうだね。わたしはすごく嫌いだよ。正直なところあまり近づきたくないかな。」
「えぇ、わたしも苦手ね。」
二人に聞くと、シュティから言われた通りの反応が返ってきた。
「ちなみにベルはどう思う?」
ベルにも意見を求めてみると
「そうですね。端的に申しますと、臭いです。近寄らないでください。」
「だよなぁ……うん、ありがとう。」
「貴方はマゾヒストですか?」
「違う。」
と、いうわけで、サティを除く全員から否定的な意見をいただいたので消臭!
え?サティには聞かないのかって?そりゃあ、サティも魔獣だからフェルみたいな反応するだろ、って思ったから別にいい。
《ちなみに本音は?》
もうこれ以上聞きたくない。
《左様ですか。》
うん……
《それはさておき、主様もしっかりと消臭しておきましたので既に問題ありません。》
ありがとう。
《はい。》
「あ、おにーさんから変なにおいが消えた。」
すると、ラウが一番に反応を見せた。
「おう、いま消臭したからな。」
「スキルで?」
「おう。」
「………」
そして、久しぶりにラウの瞳から光が消えた。
懐かしき諦めの瞳だ。
「よし、じゃあ、昼前くらいには街に行くか。」
そんなラウを放置して俺はローナ達に伝える。
「わかったわ。でも、お昼の前でいいの?」
すると、ローナから当然の質問が飛んできた。
「あぁ、なんでも昼食をご馳走してくれるらしい。」
ちなみに、これは昨日の夜にリーシアからもう一度電話があって、その時に聞いた。
ただ、電話を繋げて開口一番に、なぜか俺の安否を執拗に尋ねられた。
「タケシの料理がいいのだけど……」
「んー……嬉しい言葉だが、それはルイスさんに悪いからダメだ。」
ローナの言葉に俺は説得の言葉をなげかける。
「……そうね。失言だったわ。気が緩んでいるのかしら。」
「まぁ、リラックスしてくれてるのは良いことだが、向こうではしっかりしてくれよ?」
苦笑しながら首をかしげるローナに、俺も苦笑しながらそう返した。
「さて、そろそろ朝食にしよう。」
「ふふ、楽しみね。」
「はーい。」
「承知しました。」
「……グル。」「ガウ。」
ー2時間ほど後ー
「ねぇ、おにーさん。」
「うん?どうしたラウ?」
すでに朝食も食べ終え、少しの自由時間と称した街への出発準備中にラウが話しかけてきた。
その表情はどこか硬く、声も少しトーンが低い。
「あのね……一つお願いがあるんだ。」
「なんだ?」
「街に行ったら出来るだけわたしを監視してほしいの。」
俺が聞き返すと、いつになく真剣な表情を浮かべているラウの口から思いもよらない言葉が発せられた。
「え?なんでだ?」
彼女の真意を汲み取れない俺はその訳を聞く。
「それは……その、もし人族がおにーさんに危害を加える事があったら、わたし自身どうなるかわからないからだよ。
わたしはもう大切な存在を失いたくない。
だから、『もしも』があった時にわたしは私を抑えられる自信がないんだ……でも、おにーさんは優しいからわたしも人族も助けようとするよね?」
すると、俺を見上げる彼女はわずかに微笑みながら言った。
「……ずいぶんと高く評価されてるみたいだが、それは買いかぶりだ。俺は俺に出来る範囲内でしか動かない。
シア、いいか?俺の中での優先順位はすでに決まっているんだ。」
だが、残念ながら俺はシアの思っているほど優しい人物ではない。
「………ねぇ、それって「もちろん、シアやローナ達が最優先だ。」
俺は不安げな表情で口を開いたシアの言葉を遮り、彼女の頭になでながら笑う。
「悪いな。正直に言うと、俺は自分の身内以外はどうでもいいんだ。敵視されようが友好的にされようが、別にどうだっていい。興味がない。
自分の大切なモノだけを大切にして何が悪い?
まぁ、人付き合いが悪いとか、薄情だとか、失礼なやつだとか言われるだろうけどさ、人間らしいだろ?
そりゃそうさ、俺は馬鹿げた魔力やらスキルやらを持ってはいるが、心は人間のままだ。 人間らしさを俺は失ってない。
ましてや、俺は聖人でもなんでもない。」
「……」
黙ったまま俺を見つめてくるシアに俺は続けてこう言った。
「だから、俺は人間らしく他人に対して勝手に優先順位をつけて、勝手に大切にさせてもらうさ。
それに、俺が簡単に死ぬと思うか?」
すると、シアは困ったように笑いながら
「ねぇ、おにーさんってさ、不器用だって言われない?」
なぜかそう聞いてきた。
「……さぁな。」
顔をそらして濁したが、シュティに『不器用』と言われた事があるので何も言えない。
「あはは、あるんだね。」
俺の行動から読み取ったのかシアはクスクスと笑いながらそう言った。
どうして今のでわかるのだろうか?
「おにーさんって意外とわかりやすいよ?
確かに最初は何考えてるかわかりにくいけど、それでも一緒にいるとすぐにわかるようになるからね。」
「まじですか。」
「うん。」
すると、シアは俺が疑問に思っていた事に対して素早く答えた。わぁ、怖い。
「だから、おにーさんがさっき言ったことは信じられる。
それに、おにーさんは『自分の都合で決める』なんて言い訳をしながら関係ない人まで助けようとするから。」
「………」
微笑みながら放ったシアの言葉に俺は背中がかゆくなるが
「一言で言うと、おにーさんはカッコつけすぎ。」
続けてシアがいたずらっぽく笑って言った。
「……見栄張りで悪かったな。」
そんなラウに対して俺は顔をそむけたまま頭を雑に撫でた。
「あっ!わしゃわしゃしないで!髪の毛崩れる!」
「知ってる。」
なんかこう……うん、なんとも言えない気分だ。
別に嫌な気分ではない……ただ、言葉にはしずらい。
「まぁ、とりあえずシアの要望はわかった。」
「うん、ありがとう。おにーさん。」
それはさておき、シアの要望に応える旨を伝え、彼女は笑いながらお礼を口にした。
「おう、気にするな。街では出来るだけシアの側に居るようにするさ。」
そして、俺がそう言うと
「あはは……面と向かって言われるとなんだか照れるね。」
シアは少し顔を赤くしてはにかんで言った。
「……」
彼女の言葉に俺も気恥ずかしくなって黙っていると
「お話は済みましたか?わたくしと白き主は準備が整っておりますが。」
「おわっ!?……って、なんだ、ベルか。」
いつの間にか俺たちの側にいたベルに話しかけられた。
本当にびっくりした……不意打ちって怖い。
「わたくしがわざわざご報告に参ったにも関わらず、『なんだ』とはなんですか。」
「びっくりしただけだ。でも、確かに言葉選びは間違えた。すまん。」
「いえ、理解して頂けたならそれで結構です。猿に謝られても困ります。」
ベルの苦言に俺が謝ると、すかさず手のひらを返してきやがった。これもう一発ぐらい殴ってもいいよね?
《それなら主様はアルラウネに何度斬りつけられれば良いのでしょうか?》
ごめんなさい嘘です。
ほんの少しだけ頭によぎった考えをシュティがきり捨てる。
「よし、じゃあ、そろそろ時間だし行くか。
二人は先に外に出ていてくれ。ローナとサティ、フェルは俺が連れてくる」
そうこうしているうちに潮時だ。
「うん、わかった。」
「承知しました。」
「おけ、さんきゅ。」
二人が返事をしてリビングの出口へ向かうのを確認すると、俺はローナの方へと歩みよる。
「ローナ、そろそろ行こう。」
「えぇ、わかったわ。」
「じゃあ、ベルとラウが先に外に出てるからローナもそこで待っててくれ。俺はサティとフェルを連れて出る。」
「うん。」
こうして、ローナも出口へ向かう。
あとはサティとフェルの二頭となった。
「サティ、フェル、お待たせ。街に行こうか。」
「……グル。」
「ガウ!」
フローリングで寝そべっていた二頭に話しかけると、サティはのっそりと立ち上がり、フェルは飛び起きるように跳ねた。
「あ、それとサティ達にはこれを付けてもらうぞ。」
「……?」
「ガウ?」
俺が手にしている首輪を見て、頭に疑問符を浮かべる二頭。
「あぁ、これはな?サティやフェルが俺の魔獣だってわかるようにする為とどこにいるか把握出来るようにする為のものだ。」
「……グル。」
不思議そうなサティ達に説明すると、サティはゆっくりと近づいて『つけて。』と言わんばかりに一つ鳴いて首を差し出す。
ちかみに、この首輪はシュティにお願いして俺の能力のMAPと連動するようにしてある。これで居場所の把握が簡単にできるし、万が一はぐれることがあってもすぐに迎えに行ける。
街で魔獣が徘徊してるとか迷惑でしかないしな。ルイスさんに迷惑をかける訳にはいかない。
それと、首輪のカラーリングはどちらも白で、プレートにそれぞれの名前と俺の名前を刻んである。
「いい子だ……うん、これでよし。」
サティの頭を撫で、特製の首輪をつける。
「………グル。」
すると、サティは少し頭を動かしてから俺を見上げ、感謝するようにまた鳴く。
たぶん、頭を動かしたのはいままでつけなかった首輪の装着した感覚に違和感を覚えているのだろう。
「悪いけど必要だからな。街から帰ったら外すよ。」
「……」
サティにそう言いながらフェルにも首輪をつける。
「クゥ……?」
「フェル、ちょっと邪魔かもしれないけど帰ってくるまでの辛抱だ。少し我慢してくれ。」
「ガウッ!」
フェルにも首輪をつけて言うと、元気よく返事をする。
「いい子達だ……さて、じゃあ、行こうか。ローナ達が待ってる。いつも通りここから出てくれ。」
俺がリビングの大窓を開け放ってうながすと
「……グル。」
「ガウ。」
サティとフェルは素直に外へと出ていった。
「俺もここからでいいか。」
その後、俺も靴をインベントリから取り出して外に出る。
「よし、全員揃ってるな。」
わかってはいるが、一応確認のために周りを見渡して言葉をかける。
「えぇ。」
「うん。」
「はい。」
「……グル。」
「ガウっ!」
すると、全員が一言ずつ返事をした。
「よし、じゃあ、家はインベントリに格納して……」
それを聞いた俺は家をインベントリに格納する。
世界樹の側に建っていた家が一瞬で跡形もなく姿を消す。
「なるほど……その様な事も可能なのですね。」
その後ろではベルが感心したように呟いている。
《主様、インベントリへの格納は無事に完了しました。》
わかった、ありがとう。
《はい。》
「みんな、移動には転移を使うぞ。」
シュティの報告を受けた俺は振り向いて言った。
それに皆が頷く。
「数を3つ数えたら行くぞ。3、2、1、ほい。」
こうして、俺たちはそこそこの大所帯で街へと転移した。
「あ!お兄様!ご機嫌麗しゅうございます!」
「えっ!?リーシア!?えっ……なんで!?なんで俺が来るタイミングがわかったんだ!?」
「ずっと……ずっと待ち焦がれておりましたの。」
「お、おう?」
しかし、転移したその先では、俺たちを待ち構えるかのように、そして、さも当然であるかのように目の前に佇んでいたリーシアに驚かされた。
作者「最近、最終章の話ばっかり思いついて、その過程が思いつかない。投稿するの何年後になるかわかんないのに……」
隊長「バカだろ。」
作者「うるへぇ。……まぁ、趣味とはいえ、取り組むなら全力で取り組みたいですし、勝手に頑張りますけど。」
隊長「そうか。」
作者「あと、某有名神社にお参りしたい。」
隊長「作品の内容的に嫌われそうだな。」
作者「やめて!?嫌われてたらマジで体調悪くなるとかあるから!」