泣き虫
作者「ちょっと時間掛かっちゃったテヘッ☆」
隊長「ギルティ」
作者「!?」
綺麗な土下座を披露する彼女に俺は説明を求める。
「えっと、話がよくわからないんだが説明してくれるか?あと、普通に席に座ってくれ。」
流石に女性を土下座の体制にしておくわけにはいかない。俺が椅子に座るように催促すると彼女は土下座の体制から立ち上がり席に着き、説明を始めた。
「はい、まず私が謝ったのは簡潔に説明すると、貴方を【人外】にしてしまったからです。」
・・・・・・・・・・・?
理解が追いつかない俺に彼女は続ける。
「この場合の【人外】とは魂そのものが人間とは全く別のモノになってしまった、という事になります。よって、貴方の魂は私の創った理を外れ、二度と人として生まれ変わる事が出来なくなりました。本当に申し訳御座いません。」
そう言って再び頭を下げる彼女だったのだが、そこには怯えた様な表情を貼りつけていた。
しかし、俺にそんな事を気にする余裕はなく、頭の中で必死に今の説明を噛み砕いて理解しようと努めていた。
えっと、つまりどういう事?
ニンゲンヤメチャッタ・・・・?
・・・・・人間やめちゃった!?
つまりあれか?魂が人としての範囲に収まらなくなってどうにも出来なくなったとか、そういう事?
「大体の解釈としてはそれで構いません。ただ、どうにも出来ない訳では無いのですが・・・」
人外の程度が曖昧ではっきりとわからないので俺は純粋な疑問から彼女の言葉を遮りもう少し説明を求める。
「えっと、ごめん。人外とか言われてもどの程度なのかがよくわからないんだけど。」
「どの程度か、と言われますと・・・そうですね、私と同等くらいでしょうか?」
「はい・・・・・・・・・・・?」
ローナと同等?という事は創造神と同等?
ソウゾウシントドウトウ・・・・・・?・・・・・イヤ、イミガワカラナイヨ?
「あの、えっと、だからですね?貴方という存在そのものが私と同じくらいになって・・・って、あぁ、もう!ですから!貴方を神様にしちゃったんですよ!しかも、私と同じくらいの力を持った!!」
あ〜 なーるほど。
一瞬で解決したわ。
つまりだ、実感はわかないものの、俺はなぜか魂が強化されその結果、創造神と同等程度の力を得た。
という事でOK?
「はい、そういう事です。」
「OK、何が起こったかは理解した。たがどうしてそうなったのかも説明してくれるか?あと、何で敬語に戻ってるんだ?なんか他人行儀で嫌なんだけど。」
さっきまでは理解が追いついていなかったので気にしていなかったが、少し冷静になると物凄い違和感を感じる。よく考えてみれば彼女は何かに怯えている様にも思える。
「え?いいんですか?」
おずおずとした様子で伺うように聞いてくる。
「良いも何も友人同士なら遠慮はいらないって言ったのローナの方だろ?それに、今は理由が聞きたいし。」
俺はそれに対して苦笑交じりに答える。
彼女は一瞬安堵した様に見えたが、緊張した面持ちで口を開いた。
「そ、そう、ならそうする。理由は3つ。
1つ目 私の莫大な量の力をそのまま注ぎ込んでしまった事。
2つ目 貴方がそれを全て受け入れてしまった事。
3つ目 貴方が受け入れた上で私と共に在りたいと望んでくれた事。
というのがあげられるの。」
うん、わからん。
理解力の乏しい俺には今の説明では察する事が出来ない。
「1つずつ詳しく説明するとね?
まず、1つ目。
私は普段は力を制限してるの。理由は、あまりにも力が強くて量が多すぎるから。
でも、今回は途中からその制限が取れちゃって素のままの状態に戻っちゃったの。どうして制限が取れたかっていうと、その・・・私、初めて泣いちゃったから・・・・感情に振り回されちゃって・・・・気付かない内に制限を外しちゃってたみたいなの。それで、私の1番近くに居た貴方に大量の余った力が流れ込んじゃったの。」
ああ、そういうことね・・・って、あれ?泣かしたの俺じゃね?別に、ローナ悪くないよね?今まで、泣いた事無かったなら仕方ないんじゃないか?
でも、さっきから言ってる【力】ってのがよくわからんな。
「なぁ、1ついいか?」
「ッ!・・・どうしたの?」
俺が疑問に思った事を聞こうとすると何故か肩をビクつかせる彼女。俺はそれに少々気を取られながらも彼女に問う。
「さっきから、言ってる【力】って何なんだ?」
「え・・・あぁ、それはね。貴方達の世界でいえば魔力かな。」
『厳密には魔力の素となるモノなんだけど。』と、彼女は付け加える。
何だかしっくりきた俺は納得する。
「おっけ、わかった。続けてくれ。」
今だに怯えた様子で彼女は続ける。
「うん。
2つ目はね?その、魔力を貴方が全て魂に取り込んじゃって、それが定着したの。
本来は、魂にその人物の人格や性格などが『上書き』されて、その人物が死ぬとその『上書き』された部分だけが消されて、新しい別の誰かとして生まれ変わるように出来てるの。
でも、貴方はソレから外れてしまった。貴方は魂に固定され、消えることが出来なくなった。
つまり、貴方という本来なら消えるべき存在が魂に刻み込まれて 《貴方=その魂そのもの》 になったの。」
「そんな事ってあるのか・・・・」
「ううん、普通は無理。でも、貴方はそれが出来てしまった。」
首を横に振り彼女は悲しげに否定する。
「普通はって事は今回は特別なのか?」
「うん、そこで3つ目の理由が出てくるの。魂には、容量と強度があるって話覚えてる?」
「ああ、確かこの場所で人の姿をとるときに魔力を流し込むけど、魂によってはそれが出来ないってやつか。」
「うん、それなんだけどね。普通なら私が制限を外した時点で貴方が弾け飛んでもおかしくないの。」
ま、まじか・・・・いきなり明かされた衝撃の事実。彼女が魂の模造品を見せてくれた時に弾けていたのを思い出す。
でも何で俺は弾けなかったんだ?
「そこに、3つ目の理由があるの。
私が泣き始めた時に貴方は私を受け止めてくれたよね?その時になにかなかった?」
・・・・何かあっただろうか?あ、そういば彼女を受け止めた時に背中から地面に落ちた筈なのに痛くなかったな。それか?
「多分、その時から制限が外れてたと思うんだけど、それと同時にちょっと望みが出てきちゃって・・・・・」
望み?望みとは何だろうか?
しかし、彼女は少し恥ずかしそうにはにかみながら
「えへへ、内緒。それでね、私がそれを望んだ時に貴方は私を【友達】として扱ってくれた。私と一緒に居ても良いと思ってくれていた。私自身を見て、【私】という個人を受け入れてくれた。だから、貴方の魂が『変化』したの。私と一緒に居られるように。私と同じくらいの存在になれるようにって。」
「・・・・・・・・・・・・・」
沈黙する俺に彼女は表情を暗くする。
しかし、考え込んでいる俺は周りの事など見えていない。
そうか、俺が無意識の内に彼女の事を深く受け入れていたのか。確かに神様って感じじゃないしなぁ?
もはや、弄りがいのある可愛い友達だし・・・・一緒にいて愉しいからなぁ・・・
間違えた『楽しい』な?
「あ、あの・・「なら、別に良いか。俺が望んだ事みたいだしな。」
彼女の言葉を遮り俺は言い切った。
「え?怒らないの?」
信じられないといった表情でこちらを見る彼女。
「は?なんで、怒る必要があるんだ?」
俺は思わず聞き返す。
「いや、だってほら!人間じゃなくなったんだよ!?他でもない私のせいで人外にされちゃったんだよ!?化け物だよ!?どうしてそんなに落ち着いてるの?ある意味で化け物だよ!」
酷い言われようである。
しかし、お嬢さん?貴方もその化け物と同類ですよ?
ていうか化け物にした張本人ですよ?
「だ、だってぇぇぇ・・・私のせいなのに・・・私のせいなのにぃぃぃ・・・・・」
へなへなと床に座りこむ彼女に
「いや、別にローナは悪くないぞ?」
またもやビクッ、と体を跳ねさせて彼女は顔をあげる。
「ほ、ほんとう?」
そう聞き返してくる彼女に
「そんなに怖がらなくてもいいだろ。だって、そうだろ?そもそもは泣かしたのは俺だし、それに受け入れたのだって俺だ。見方を変えれば俺は望んで化け物になったと言ってもいいくらいだぞ?」
やや強引かもしれないが、嘘ではないのでそう説得する。
「じゃ、じゃあ、怒ってない?」
「怒ってない、怒ってない。」
「じゃあじゃあ!私のこと嫌いにならない?」
「ならねぇよ阿呆。んな当たり前の事聞くんじゃねぇ。」
やや乱暴な言葉使いに彼女は驚いた表情をしている。
なるほど、さっきから怯えた様子なのはこれが原因か。
初めて仲良くなったと思った相手を知らずの内に化け物にしてしまい、嫌われたのではないかと不安になってた訳か。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あっっほだなぁぁぁ!?いや、可愛いけども!すでに死んでる俺がいちいちそんな事気にするわけねぇよ!?
俺は彼女の側にいき、目線を合わせられる様にしゃがみ込む。
黄金色の美しい双眸が俺の顔を映し込んで不安げに揺れている。
その愛らしい様子に俺はたまらず頭に手を伸ばし、ゆったりと撫で始めた。
俺が手を伸ばした瞬間、彼女の体が硬直し、叩かれるとでも思ったのか目をギュッと閉じたが、次第に撫でられているとわかったのかゆっくりとその瞳を開く。
その瞳は潤んでいて彼女の整った容姿に更なる魅力を与えている。
そんな彼女に俺は微笑みながら
「大丈夫だ。嫌いになんかならねぇよ。むしろお前と同じ存在になれて嬉しいくらいだ。それならずっと一緒に居られるだろ?」
『な?』と安心させる様に優しく語りかける俺に彼女は破顔する。
「そ、そんなのってないよ・・・・ずるい、ずるすぎるよ・・・・・私が勝手に貴方を化け物にしたのに、もしかしたら存在を吹き飛ばしてたかもしれないのに、そんなに優しくされたら・・・・・・」
そう言って彼女は俺に頭を預け、また泣き始めた。
そんな泣き虫で子どもの様な、全然神様らしくない女神を優しく撫でながら俺は
(また泣いちゃったな・・・・これからどうしよう・・・・・・)
と、思案していた。
主人公 清水 猛士
彼はここぞという場面には強く衝動的な行動が多いが、こういった場面には耐性が無く、冷静になってから困惑するのだった。
いわゆる若干のチキンである。
早くもデジャブを感じる展開ですね!
いや、ほんとごめんなさい
次回、話を進める予定です
隊長「さっさとするんだな」
作者「隊長!あなた今までどこに!?」
隊長「いや、森に生えてたキノコを食ってな・・・・やはり、蛙が安定だ」
作者「何言ってんだこいつ・・・」
すみません 加筆修正しました(2017/9/23 9時53分)
脱字を確認した為に修正しました。(2017/9/26 21時30分)
コメントにて御指摘頂きました読点に関する修正を行いました。(2017/12/8 23:23)
一部修正を行いました。
(2017/12/19 19:50)
一部修正を行いました。
(2017/12/28 9:53)