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『風呂は修羅場になる』そう思っていた時期が俺にもありました


皆様こんばんは

一つ、今さらながらに留意して頂きたい事がありました。

この作品の作者は私ですが、私はこの作品の読者でもあります。

ですから、これを読んで下さる皆様は私の『小説執筆』という趣味に賛同して下さっている方々である、と私は認識しています。

これからもどうかよろしくお願いします。


 


「ローナさんのここ、すべすべでふかふかー♪」


「ふふっ、くすぐったいわラウちゃん。」


「そう言われてもこれはクセになるよ。」


「あら、嬉しい。」



 どうも、皆様こんにちは。俺です。

 俺は今、後ろから聞こえる楽しそうな二人の声を聞きながら乳白色に変化させた湯に浸かっています。



「じゃあ、今度はわたしが洗ってあげるわ。」


「うん、ありがと!」


「ラウちゃんの肌もすべすべでいい手触りね。確かにこれはクセになるかもしれないわ。」


「あははっ!ローナさんそこはダメッ……!くすぐったい……!あははっ!」


「ふふっ、お返しよ。」



 えぇ、あの二人が本当に楽しそうでなによりです。


 でもね?


 見えない分、逆に色々と考えちゃうです。ラウがローナのどこを触っていたのか、とか……ローナが今ラウのどこを触っているのか、とか……



「ラウちゃんの綺麗ね……羨ましいわ。」


「ローナさんの方がわたしのより綺麗だと思うけど……」


「そうかしら?……ううん、やっぱりラウちゃんの方が綺麗よ。」


「えぇー、そうかなー……?わたしはローナさんだと思うなー」



 あの二人はいったい何の話をしてるんでしょうか?

 非常に気になります。しかし、どれほど気になっても振り向けません。そんな勇気ないです。


「……無我の境地に至れり。」


 そして、俺は湯船に浸かって何をしてるのかって?

 愚問ですね。瞑想です。湯の中で座禅を組んで目を閉じてます。



「ラウちゃん、あんまりタケシを待たせちゃうと悪いから早くしましょ?」


「うん、そうだね。おにーさんが怒っちゃう。」



 いえ、怒りません。怒れるはずもありません。なぜならば、俺はとても穏やかな気分なのです。

 我、菩薩(ぼさつ)となりて悟りを開きたり。


 《はぁ……主様?先程から何をなされているのでしょうか?》


 俺が思考を迷走させながら瞑想していると、それを見かねたのかシュティが口を開いた。


 いや、なんか聞こえてくる会話一つ一つが俺を刺激するから……いっそ悟りでも開こうかな、と。


 《……その程度で悟りを開いてしまえるのならば何人(なんぴと)も苦労しません。》


 あ、はい。ごめんなさい。


 すると、俺の答えにシュティは明らかに温度の下がった口調で言った。


 《いえ、ご理解頂きありがとうございます。》


 うん。


 《おや、今日は普段よりもさらに素直ですね。》


 そして、俺がシュティの言葉に反論せず頷いていると、シュティは少し驚いたような声色で言った。


 まぁな。こうやって何かと気を紛らわせてくれるシュティには感謝してるよ。


 《不要の気遣いでしたでしょうか?》


 いやいや、そんな事ないさ。


 《身に余る光栄。》


 いつも大げさだなぁ……



 俺がシュティの反応に苦笑していると


「うん、これで大丈夫だね。」


「それじゃあ、入りましょうか。」


「うん。」


 後ろからそんな会話が聞こえてきた。


 どうやら俺がシュティと会話しているうちに二人が体を洗い終えたようだ………はぁ……やっぱこっち来るよなぁ……


 《当たり前でしょう。》



 二人が風呂場のタイルを歩く音が次第に近くなってくるのがはっきりとわかる。


「タケシ、お待たせ。」


「おまたせー、おにーさん。」


 やがて、こちらに到着した二人は俺を挟むように湯船に浸かった。


「ふぅ……気持ちいいわ。」


「やっぱりお風呂はいいね。」


「……」


 ……近い…………あぁぁぁ!!近い!近い!ていうか、なんでそんな微妙に距離おいたんだ!?

 それに!なんでタオルとった!?


 ここで少し説明しよう。

 乳白色の湯船に浸かった二人は俺の両サイドなのだが……少しでも動こうものなら肩が触れるくらいの至近距離に座ったのだ。


 しかも、何も身につけていない状態で。


 そして、俺が動かなければ二人の肌に接触する事はない。だが、密着するわけでもなく、かといって離れすぎるわけでもない………俺にどうしろと?


「?、おにーさん?どうかした?」


 すると、ラウが不思議そうに質問してきた。


「ん?あ、いや……思ったより早かったな、と。」


 早くなっていく鼓動を抑え、普段通りに振る舞いながら思ったことをそのまま口にすると


「そうかな?ちょっと時間かかっちゃったと思うけど……」


 ラウが少し申し訳なさそうに言った。


「いや、そんな事ないぞ。」


「そう?ならいっか。」


「あぁ、だから気にするな。」


 俺は笑いながらラウにそう返した。


「……」


「あれ……ローナ?どうか……した…か……?」


 そこでふと、何も話さなくなったローナに視線を向けると


「………///」


 顔が茹でタコの様に真っ赤になっていた。

 ……真っ赤になりたいのはこっちなんだが。


「あの……ローナ?なんでそんなに顔が真っ赤なんだ?」


 そんなローナの様子に俺は言いたいことを飲み込んで質問する。


「……しい。」


 すると、ローナは聞き取れないほど小さな声でうつむきながら何かを呟いた。


「え?ごめん、なんて言った?」


「––かしい。」


 もう一度聞き直すが、やはり小さな声で呟く彼女に


「ごめん、声が小さくて聞き取れない。」


 続けて質問すると……


「だからっ……!恥ずかしいのっ………!」


 うつむかせていた顔を バッ! と勢いよく上げ、叫ぶように言った。


「お、おう……」


 ローナに突然訪れた羞恥心、それに対して俺は驚くことしか出来ずにいた。


「あっ、ごめんなさい……///」


 そう言ってまたうつむくローナ。


 ……こう思っては失礼かもしれないが、入ってきたのはローナ達の方だぞ?


 《急に冷静になったのでしょう。》


 えぇ……あれだけしておいて今さら……?


「……」


 ……まぁ、いいや。それなら、俺が風呂から出れば済む話だ。


 シュティの指摘を受けてからローナの様子を見ていた俺はそう結論を出し


「それなら俺は上がるから……」


 立ち上がろうとした時だった。


「!、ま、待って!」


「ちょ!?危な!?」


 ローナが急に俺の腕を引き込んだ。


「お、お願い……このまま一緒に………」


 そして、俺の視界に飛び込んできたのは



 潤む黄金色の瞳に


 いつにも増して上気した白い頰


 乳白色の湯に浮かぶたわわな果実と

 それに挟まれた俺の手



 oh!my,GOD!


 《いつになく適切な表現ですね。》


 うるせぇ!


 《ぐすっ……主様がいけずです……》


 すまん。



 シュティを軽く受け流しながら俺は崩れ去りそうな理性を保って座り直して


「わ、わかった……オーケイ、ステイ、落ち着け、オーライ、大丈夫、どこにも行かない。だから……その、な?」


 目線でそれとなくローナに伝える。


「あっ///…………ありがとう。」


 すると、ローナは俺の腕を抱き込んでいたのに気が付いたらしく、腕を手離しながら美しい笑みを浮かべた。


「おう……」


「……」


 俺とローナの間に沈黙が生まれる。


「……ねぇ、おにーさん。わたしにもかまってよ。」


 だが、そこにラウが不機嫌そうな表情で俺の片腕に『くっついて』きた。


「っ!す、すまん……」


 しどろもどろに謝りながらも、抱きつかれた腕とは逆の手がラウの頭に自然と伸びた。


「今回はこれで満足しないよ。」


 ラウは可愛らしい笑みを浮かべてそう言い、しっかりと腕を抱き込んで離さない。


「あぁ、うん……好きにしてくれ……」


 俺が諦めてラウを撫でていた手を離すと


「じゃ、じゃあ、わたしも……」


 空いた片腕をローナに抱き込まれた。


 それが決定打になったのか、まるで麻酔を打たれたように思考がだんだんと麻痺していくのを感じる。



「………」


「………」


「………」



 そして、訪れた静寂


 けれど、それはギクシャクしているというよりは……どこか心地よい空間で


「………」


「………」


「………」


 何も考えず、何も感じないように、と理性を働かせなくても良いくらい温かで穏やかな気持ちになる……


「………」


「………」


「………」


 そんな不思議な空間。


 ………彼女たち、ローナとラウ……いや、ローナとシアはどんな風に思ってくれているのだろうか。


 痺れる頭にふと、そんな考えが浮かんだ。


「……」


「……」


 そこで、ローナに視線を移すと彼女は『何も言わなくていい』そんな風に笑った。


「……」


「……」


 続けてシアに視線を向けると、彼女もまたローナと同じように表情を崩す。


 あぁ、そっか………そうなんだな……………


 そんな二人からの無言の答えに俺は安堵の想いを抱く。


 二人の肌から伝わってくる、お湯ではない温かさ。

 それは久しく忘れていた純粋な安らぎ。



 ……シュティ、空を天井に投影してくれ。


 《承知しました。》



 俺の突拍子もない思いつきによって、天井がくり抜かれたかのように映し出されたのは美しい夕焼けとそれに照らされた世界樹。


「綺麗ね……」


「うん………」


「あぁ、そうだな……とても綺麗だ。」


 それを見て感嘆の息をもらした俺たちを夕陽の光が照らす。


 おそらく、ここで俺が何か気の利いた一言でも言えたなら良かったのだろう。

 けれど、ご生憎様、俺はそんな言葉の引き出しは持ち合わせていない。


 《……不器用な方。》


 ぼそり、とシュティが呟いたが、俺の頭に直接伝わってくるのではっきりと聞こえている。


 でも、俺はあえて聞かなかったことにして、沈みゆく太陽をローナとシアの二人と共に肩を並べて見つめていた。






作者「短くてすみません。定期的に気分が落ち込む期間に突入してしまいました。

本当はもっとこの話を広げたかったのですが、こればっかりはどうにもなりません。

普段から歌を口ずさんだりして誤魔化しているのですが、定期的にこういった事があります。」


隊長「あぁ、マンティコア虐殺回やら主人公の過去回がその期間だったな。」


作者「えぇ、別に鬱とかではないのですが……自分自身でも信じられないくらい心が冷たくなります。というか、頭がおかしくなります。」


隊長「心配してほしいのか?」


作者「そんな訳ないでしょう。

ただ、ごく稀にこの作品の性質にそぐわないようなエゲツない話が出てくるのでご注意を、と。」


隊長「本当に今さらだな。マンティコアの回は一年近く前だぞ。」


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